18 船旅
「やあ、旦那ギリギリ間に合いましたな。」
「ああ、ホッとしたよ。もう一人乗せて欲しい人がいるけど、船賃は?」
「いや、良いですよ。大した金額じゃないし。それより、旦那の魔術で助けてくれりゃあそっちの方が助かりやす。」
サルトの顔を見て安心するとは。
この時期は海の魔獣が出るそうだ。若しかして烏賊やタコの魔物かな?
乗組員は全部で40人くらいいるが、総て獣人族だ。フラン達の他には乗客はいない。
フランはレーリオを船室に連れて行き休ませた。
レーリオの着ている服はボロボロだった。港町で仕入れる時間も無かった。
13の島に着いてから服を買うしか無いのだが、あそこの獣人の体格では、レーリオには合わないだろう。さて困った。まさか出土品のドレスを着せるわけにも行かない。
仕方がないので、フランの予備を着せておく。
自分の船室へ入って、魔法鞄の整理をする。魔法鞄は3つ。1つに纏めたいが、容量が心配だ。
余りの多さに、途中で諦めた。今は急いで甲板へ行って海の魔獣の監視をしなければならない。
「魔獣はいないみたいだが。海は荒れてきたな。」
「この時期にしては珍しい。航路を少し変えるしかないな。」
船は嵐を避けるように進路を変え、ゆっくり進んで行く。まだまだ一ヶ月は船の上にいなければならない。
「旦那は土の大陸で、嫁を見付けてきたのかい?てっきり探索者でもしに行ったのかと思っていたがねぇ。」
「探索者はやってみたよ。面白かった。少しお金も稼いだし。」
「そうかい。良かったですね。おいらも、一度やったことがあったが、あそこは他所もんには冷たくていけねえ。」
「確かに。でも、親切な人に会って助けて貰った。」
「そりゃ良かった。遺跡には魔獣がいたが、余り強くは無くてやりやすかった記憶はあったが。旦那はどんな魔獣を遣っ付けたんで?」
あ、そう言えば、時間が無くて大鷲を買って貰うのを忘れて居た。
「大鷲と言ってたな。」
「なんだって!そりゃ剛毅だ。守り神を狩ってきやがるとは。凄いお金になったでしょう。」
ここでも有名なのだろうか。
「まだ、魔法袋に入ったままだ。欲しかったら君に売ってやっても良いけど。」
彼等は殆ど商人だ。取引してくれそうだ。
「あの羽根は高値で取引できやす。是非売って下せぇ。」
「ああそうだ、卵はいるかい?」
「卵!大鷲の巣を見付けたんですかい。」
「ああ」
これ以上は言わないで置こう。色々聞かれても答えられない。
大鷲をサルトに売って大金を稼いだ。なんだか急に大金が転がり込んでくるようになった。
これから一生働かなくても良さそうだ。探索者とは、一攫千金が出来る仕事だな。
なんだかんだあったが、この大陸でも面白いことが沢山あった。この次は、何処へ行ってみようか。
サルトは、「内緒だ」と言って、彼等の使っている地図を見せてくれた。
世界の地図。初めて知った。
この世界には6つの大陸に分かれていたのだな。
南半球にも大陸が二つある。赤道域にもあった。
南極に近いところは人は住めないだろう。赤道は如何だろうか。
南半球の温帯域にも大陸がある。そこなら丁度良い季候だろう。
サルトに聞いて見ると、南半球の大陸とは交流はしていないそうだ。
では無理だな。獣人族の航海術が無ければとても行けそうに無い場所だ。
船に乗って20日、とうとう海の魔獣が出た。
乗組員皆で魔法を放って撃退した。フランの火魔法はかなり威力が上がっていてフラン自身驚くほどだった。フランはあの大陸でレベルがかなり上がったようだった。
魔獣を余り倒していないのに、何故だろうとフランは不思議に思った。
若しかしたら、これが最後の魔力の成長で、これでやっと、フランも大人になれるのでは無いだろうか。
密かに期待するフランであった。