16 引きこもり生活
お金も沢山貰えたし、もう探索者をして働く必要は無くなった。
暫くは、ユーナの家でやっかいになりながら、サルマルからもらった本を読んでみよう。
言語理解の魔方陣が作れたら、スキル持ちを探さなくても良くなる。
フランはそれから、3ヶ月もの間、机にかじりつき読書三昧の生活をした。
国へ帰るまでは、もう少し待たなければならない。
もうこの大陸では植生の違いは無いと分ったし、見るものは魔獣くらいだ。遺跡にも興味はあったが、出土したものをいちいち届け出なければならないのは、面倒な気がした。
「フランはずっと本ばかり読んでいて、飽きないかい?」
「ユーロは読書は嫌いか?」
「余り好きで無い。別に字を読めなくても、探索者は出来るし。」
「君は伯爵だろう?文字が読めないと困らないか?」
「文字を読める使用人を使えば良いだけさ。僕は魔法が使える。探索者をやって、金を稼いでくるよ。」
なんとも、まるで平民のような考え方だ。これが、この国の為政者の常識だったら、国の発展は無いな。
「文字が読めないわけでは無いんだろう?」
「少しは読めるけど。目が悪いんだ。長く読むと凄く疲れる。」
目が悪ければ、文字を読むのは辛いかもな。フランは彼に役立つ物は無いかと考えた。
彼の目が近視なら、遠目のスキルなら良いかもしれないが、遠視なら使えない。
「君の目は遠くが見えないの?」
「いやものがダブって見えるんだ。」
乱視か?これでは僕にはどうしようも無いな。眼鏡の専門知識も無いし、この世界の眼鏡は意外と雑なレンズだ。乱視のような、複雑な調整は無理だ。
これ以上は、フランでは役には立てない。
「ものがダブって見えて、狩りには支障は無いのか?」
「ああ、それは大丈夫だ。僕は念視が使えるから。」
念視。心で見えると言う事か?凄いスキルが有ったものだ。
きっと目が悪いから鍛えられたスキルかも知れない。
「ところでさ、フランは何歳?」
「え、僕?もう18歳かな。」
「じゃあ、経験あるだろ。僕を街まで連れて行ってくれないかな。」
ビックリだ。経験とは、あのことだろうか。フランはまだ経験はない。ユーロはまだ、未成年なはずだ。そんなことをしてユーナにバレたら大変ではないだろうか。
「ユーロ、僕には無理だ。誰か他の人に頼んでくれ。」
「ちぇっ、つまんねえの。」
そう言ってユーロは出て行った。
『僕の身体は、若しかしてずっとこのままなのだろうか。』
フランは、身体は大きく育ったのに、そっちの方は全然だった。
サルマルの本には言語理解の魔方陣が載っていた。
早速、魔石を加工して、魔方陣を魔石に描いてみる。魔石を綺麗に半分にして、切断面を平らに研磨して、そこに魔方陣を描く。モノクルのように片眼鏡タイプの翻訳機が出来上がった。
古代文字で書かれた本を見てみる。
この本は小説のようだ。他の本の題名を見ていく。
専門書は少ない。中の1つに建築関係の本があった。
それからの日々を専門書の解読で過ごすことになった。