15 遺跡の探索
遺跡が密集している場所に、入って行く。
道路であっただろう石畳は所々抜けて、気を抜くと足を取られる。
ココに乗って空から見て見たいが多分意味が無いだろう。
木々がうっそうと生い茂り遺跡を覆い隠してしまっていた。偶に木の上まで伸びる塔がある。
「昔はこんなに高い塔を作れる魔法使いがいたんだ。昔の魔法使いは凄い技術を持っていた。今これを作れる奴はいなくなってしまった。」ユーナは悔しそうに塔を見上げている。
フランに言わせれば、ビルディング街だ。正に壊れてしまった都会。
建築技術が進んでいたのだろう。基本となる技術が無ければ、いくら魔法が使えてもこのような高層ビルのような建物は作る事は出来ないだろう。
フランはユーナやユーロに自作のスクロールを持たせている。
万が一怪我をしたときの保険として作った治癒のスクロールだ。こちらの植生がまだ分らなくて薬が作れなかったからだが、植生は同じようだ。その内、タブレットやポーションを作っておこう。
「これはなんだい?」
「傷薬の代わりです。」
「へえ、この紙切れで治るって言うのか?」
二人とも半信半疑のようだが、怪我をしなければ効果が分らない。おまじない程度に持っていて欲しいと言った。こちらでも薬師のつくる薬もあるが、効果が薄い割に値段が高いそうだ。
二人も持っていたが、一応フランのスクロールも持っていて貰う。
この塔の上にはお宝がたんまりありそうだが、危なくて上へは行くことが出来ないそうだ。それならばとココに見てきて貰う。
「可愛いフクロウだが、こんなペットに何ができるんだい?」
「まあ見ていて下さい。」
ココは塔の中を飛び回ってフランに逐一知らせてくる。ココは念話で話せるタイプだ。
「ああ、上に上る階段が壊れていますね。12階まで上に行けば何かありそうです。」
フランは実況中継をする。
「階段が壊れて上へは行けないなら、諦めるしか無いな。」ユーロが言う。
「あの木を伝って行けば行けそうじゃ無いか?」ユーナがやる気を見せる。
一人、ユーロはここに残って貰いフランとユーナで木に登っていった。
塔に絡まるツタに掴まり、塔の内部を覗くと、そこには沢山の鳥がいた。フラン達に驚いて一斉に飛び立ち逃げて行く。
跡に残った鳥の巣には卵が残されていた。
巣を慎重に避けて、奥へ進んで行くと、壊れかけたドアがあり、ドアをこじ開けてみるとそこは書斎のような造りだった。
「結構良い状態で残っている。これはどうしたことだろうねえ。」
「状態保存の魔道具がどこかにあるはずです。探してみましょう。」
彼方此方の棚の扉を開けたり引き出しを開けたりと一時間ほど探して廻った。沢山の本や、魔道具、魔法鞄、変わった置物などを戦利品として、塔を出た。
「まだまだお宝があった。今度はお前が行ってくるかい?」
ユーロは首を横に振る。高いところが苦手のようだ。
めぼしいものは殆ど持ってきた。もう帰っても良いだろう。これから帰途につけば、日が落ちる前には街に着けるだろう。
役所へは明日届けることにして、持ってきたものを調べてみる。
本は文字が古代文字で書かれていて読むことが出来なかった。言語理解のスキル持ちに読んで貰うしか無さそうだ。確かサルマルからもらった無属性についての本に言語理解の魔方陣があったような気がする。
魔道具は状態保存の着いた照明器具、魔法鞄が3つ。ステッキタイプのものが大量にある。
「凄い稼ぎになりそうだ。フランのお陰だ。明日私が届け出るよ。魔法鞄はどうする?」
「僕は自分で作れますからいりません。それより本が欲しいですね。」
「分った。本は高値が付かないから、丁度良い。このステッキは何に使うものか分らないね。調べるには時間が掛かりそうだ。」
フランは予想が付いていた。多分魔法のステッキだ。余り価値があるとは思えない。
本はなるべく早く受取りたい。状態保存をかけ直さなければ直ぐにボロボロになって仕舞う。
役所から帰ってきたユーナは、ニコニコ顔だ。
かなりの金額になったらしい。手には魔法のステッキを五本持っていた。本は魔法鞄の中に入れてきたのだろう。
「フラン、あんたの分け前だよ。」
といって大判の金貨を一二枚よこした。そして鞄の中から本を取り出し床に置く。全部持ってきてくれたみたいだ。
「本を貰った上にお金までこんなに。良いんですか?」
「ああ金は三等分にさせて貰った。本は買い取りしていないんだとさ。」
フランにしてみれば本こそが価値がある。本を必要としないから、技術が途絶えたのでは無いか?