14 リザードベア
「フラン。元気でやっているか?」
エステバルから通信が入った。すっかり忘れて居たフランだった。
「うん、元気だ。カルチャーショックがあって、かなり戸惑ったけどね。エステバルは?」
「ああ・・ちょっと妙な事になってな。その・・。」
「なんだよ。ハッキリしないな。ワチキと上手くいったんだろ。」
「何故!分った?」
全く。面倒くさい。分らないはずがあるか。あれほど意識しまくっていたくせに。
「まあ、何となく?」
「あの、その、ワチキとは結婚しても構わないそうだから、そうなると思う。」
ふーん。やっぱりな。精霊樹の計算通りになったか。でも、エステバルにとっては良い結果だな。
「おめでとう。僕が帰る頃はもう、結婚式は終わってそうだな。」
「いつ頃帰れる?」
「多分、順調にいけば1年はかからないと思う。」
「そうか、無事に帰ってくることを祈っている。無理だけはするなよ。じゃあな。」
『あっちは上手くいってそうだな、でも僕は、何時思春期が終わるのだろう?』
次の日、ユーナと、息子のユーロが遺跡探索に連れて行ってくれた。
ユーロは、フランと変わらないくらい身長が高かった。身体が細くてひょろひょろしている。
「フランは魔法使いなんだって?」
「うん、まあこちらではそう言うみたいだね。僕の国では魔術師って言うんだ。その中でも僕は、錬金術師だ。魔道具の研究をしている。」
「凄いや!魔道具をつくれるほどの魔法使いなんて。」
まるで、雲の上の人物のように見られて、恥ずかしくなってしまった。
「君は何か魔法を使えるのユーロ?」
「僕は土属性の魔法さ。皆と同じ。ママもそうさ。でも平民は魔法が使える人はいないんだ。貴族は多いけどね。」
そうか。貴族は魔法が使える人が多いと言う事か。それとも、魔法が使えるから貴族になれたのか。
どちらにしてもこの国は魔法が使えると有利なようだ。
魔獣は出てきたが、獣人族の魔獣に比べると強くは無かった。
フランの国と変わらない。だが魔獣の種類は独特だった。蛇に似ている顔の、熊のような魔獣。熊の身体に鱗がビッシリ被っていて、堅そうな革だ。これは、剣の刃が通りにくそうだ。
光の魔法で光の槍を作って目を突き刺すと、其の侭絶命してしまった。
「なんとか倒す事が出来たな。」
「凄い魔法だな。これは光の魔法の変形か?」
「そうだけど、こちらでは使わないのかい?」
「光の魔法自体が希少だ。私達が使えるのは、せいぜい土の槍くらいだが、リザードベアには効かない。直ぐに折れてしまう。リザードベアには目を狙えば良いんだが、なかなか当たらないしな。」
まあ、光魔法はレーザー光線のような使い方が出来るから、狭い場所を狙いやすい魔法だが、ここの住人は土属性が多く光属性は少ないからな。
このリザードベアは、闇属性だ。これで魔法袋を作ってみたいが革が堅そうだ。袋には出来ないな。
「この革を加工してくれるところはあるか?」
「ああ、任せときな。家の使用人にこの加工が出来る奴がいる。鞄か箱にするのが良いだろう。」
こちらの魔獣の革が堅いせいで、箱にするのか。袋に出来るくらいの柔らかい革の魔獣は、僕の国にいる魔獣くらいかも知れない。とフランは思った。
植物はフランの国と余り変わらないようだ。
フランは不思議に感じた。普通こんなに離れた大陸では、かなり植生が変わっているはずなのに、魔獣はかなり独特な違いがあった割には、植物には変化が無かった。
「今日はこの辺に野営して、明日は遺跡内部までまで足を伸ばそう。」
フラン達は、石の遺跡の中で、一夜を明かすことになった。
半分崩れ落ちた屋根、しかし三方が囲われているので安心して眠ることが出来そうだ。交代で警戒しながらではあるが。
火は使えない。携帯食で済ませ早々に寝る。