13 魔術師と魔法使い
ユーナに宿を紹介してくれと言うと、宿は環境が悪いと言って、ユーナの家に連れてこられた。
ユーナの家は立派な二階建ての石造りのお屋敷だった。
使用人も沢山いた。ユーナは貴族だった。ご主人が伯爵で、この国の重鎮の魔法使いだったが、老齢のため4年前に亡くなったという。年齢差のある結婚だったのだろう。
子供は伯爵の称号がある。なのに何故、探索者をやっているのかと聞くと、この国は探索者は結構地位が高いのだという。一番地位が高いのは、魔法使いだという。魔法使いはごく少数の特権階級で、王族は総て魔法使いだとか。
「僕は魔術師だけど、魔法使いとはどのような違いが有るのか。」
と聞くと、魔術師というのは聞いたことが無い。何処の部族の呪術師か。と言われた。
言葉は通じても、社会が違うと常識が違い全く通じないという結果になった。
信じて貰うために魔法を何個か実演してみせると、驚いて、
「貴方は高名な魔法使いに違いない。是非お名前を明かしてはくれないか。」
等と言われ困って仕舞った。
言葉の違いもあるが、社会の造りも常識も違う。
円滑にここでの生活をするためには、どうしたら良いのだろう。あと、半年はここにいなければならない。
仕方なく自分は違う大陸から来た事を明かした。
「そうだったのか。もしや獣人の国からいらしたのだろうか。」
「いや、そのまた西の大陸からだ。」
「そうでしたか。伝説の国、闇の国からいらしたとは。」
何と言うことだ。ここには伝説が残っていた。しかし文明は壊れてしまった。
マナの噴出とはそれほどの災害っだったのだ。何も準備出来ないまま知識が途絶えて、未開の原人からの再スタートになって仕舞った。
フランのいた大陸では、近年まで魔獣が一所に閉じ込められていた。それが300年前から変わり、南と北の森に魔獣が集中するようになった。
何故か魔獣を閉じ込めていた石壁が無くなると、地力が全体に行き渡り、魔法が研究され今日のように発展し始めたようだ。
古代言語は、共通言語に変えられてから、魔法が爆発的に人々に広まった。
共通言語は獣人族が使っていた言語だ。
まだ獣人族が、世界と交流したときに広めたのでは無いだろうか。そうで無ければ、世界の言葉が共通などと言う不可解な理由に答えは見付からない。
獣人族は、世界に魔法と言葉を広げたが、今は技術を隠して、他国とは最低限の接触しかしなくなってしまった。
フランの大陸は、文明の歴史としてはとても浅い大陸なのだ。
今では魔獣は森の周辺にしか被害を及ぼさない。その為文明は壊されること無く今のように発展できた。むしろ人間同士の争いが文明の発達の妨げになっている。
獣人族のような発展は出来ていないが、なんとか文明を維持できている。
若しかしたら、精霊樹と、守り樹のあったお陰で、地力が吸収されたのだろうか?
だとしたら精霊樹が無くなった北の森は、今後、地力が溢れて危ないかも知れない。
フランは、魔法袋のことを聞いて見ることにした、
「この国は魔法袋は持っていれば取り上げられるのですか?」
「そんなことは無い。出土品にあれば高値で買い取るし、もし売りたくなければそれで何もしない。ただ報告はしなければ成らないが。魔法鞄を作れる魔法使いがこの国には2人しかいない。その為国では出土品から手に入れようとする貴族が大勢いる。それだけだ。」
良かったとフランは思った。これで普通に魔法袋を持って歩ける。
「ここの魔獣に闇属性はいますか?」
「ごく少数だがいる。だが、魔法使いに買われてしまうので一般には素材は出回らないだろう。」
魔法鞄を作るために買いあさっているためだろう。でも、いることが分ればそれでいい。
自分で狩れば良いだけだ。
「これから遺跡に行くときにはなるべく闇属性の魔獣がいるところにいきましょう。僕は魔法鞄が作れます。是非とも闇属性の素材をとってきたい。」
「分った。だが闇属性が有る魔獣は手強いぞ。」