12 王都と古代都市
この大陸でただ1つの国。ここはソイル王国。他にも数え切れないほどの、小部族があるが、国として存在しているのは、ここだけだ。
ソイル王国は、過去にテレビで見た、南アメリカや、エジプトにある遺跡のような建物が沢山あって、時代が数百年も後退しているような感じがした。
石造りで総てが出来上がり四角い印象がある。木々は周りに沢山生えているのだから、工夫すれば違った美しさが出るのではないかと思ってしまう。
フランの塔や石壁も似た様なものだが。ここの特徴なのだろう。
「ここの住人は、土属性が多いんで、こんな風な造りなんでさ。」
ここの人達の魔法で作った家だったのか。
案内人サルトに大体の街の案内をして貰い、これでいいというと、サルトは港町へ帰っていった。
宿は二階建ての中堅どころに泊まった。
余りボロボロだと崩れてきそうで怖かったし、高級そうな所は、貴族が多いと聞いたから、辞めにしたのだ。
部屋は八畳ほどで大きな石造りのベッドに藁で編んだ敷物に毛布が掛けてあった。
「身体が痛くなりそうだ。」
「クウ」
「ココは大丈夫だろ。どうせ僕の上に寝るんだから。」
机や椅子がないので、土魔法で作って置いた。出て行くときに壊せば良いだろう。
トイレや風呂はなかったので多分一階にあるんだろう。食事は部屋に運んできてくれたので、態々一介の食堂へ行かなくても良かった。夜になれば、一階の食堂は酒場になって仕舞い、夜中まで騒がしい音が二階まで響いてきた。
「この宿は早めに引き払おう。明日は地元の人に聞いてもう一度宿を探さなければ。」
次の日宿の主人にここいらの魔獣は誰が倒しているか聞いて見ると、
「探索者の組合が一杯あるから。そいつらが、遺跡を巡るついでに倒してくるのさ。」
といった。ここでは、探索者か。所変われば品変わるだな。
まずはその、探索者の組合に行ってみるか。
探索者組合は、確かにどれにするか、迷うほどあった。その中で比較的大きい建物を構えていた組合に入ってみる。
「すみません、探索者をしたいと思っているんですが。僕でも入れますか?」
受付で閑そうにしていた女の子に聞いて見た。
「ああ?あんた、資格持ってるの?」
「ええと、資格とは、何処で取れますか?」
「役所で申請してきな。証明書が出たらなれるよ。」
証明書を出しているとは。早速役所へ行ってみた。
証明書はお金を払えば直ぐ出せるというので、お金を払うと、小冊子を渡された。
小冊子には、遺跡で出たものは必ず役所に提出しなければ、罪になると書かれていた。
魔獣は関係ないようだ。
「遺跡?ここには古代遺跡があったのか?」
遺跡のような建物に住んでいる国の遺跡とは、余り期待出来なそうだな。フランはそんなことを考えながら、また探索者組合の受付に行った。
「はい。これでいいよ。で、何処に行く?」
何処に行くと言われても、全く土地勘がないので、困って仕舞った。
「おい、ちゃんと説明してやりなよ。意地悪しないでさ。」
後ろから、探索者であろう女の人が声を掛けてきた。彼女は浅黒い肌で背が高い。ここいらの人種の一般的な顔立ちだ。
装備がしっかりしていて中堅どころの冒険者のように見える。
「あんた、ここいらでは見ない顔だね。何処の部落から来たんだい?」
「えーと西?の方から来ました。」
「西?まあいいや、私が面倒見てやるよ。でもね、覚えときな。他所もんはいびられるんだ。」
「はい、ありがとうございます。よろしく。」
彼女は、ユーナという名前だった。ユーナは探索者を12歳からやっていて今34歳だと言うことだ。
22年のベテランだった。子供が一人14歳の男の子がいて、子供と二人で探索者をやっていた。
この遺跡は五カ所あり、この国の北側に集中している。この国の先祖が興した文明の遺跡で、とても栄えていたが、突然マナが噴出して、滅びてしまったそうだ。
数百年前のことだ。その古代文明の生き残りが各地に散らばって部落を作っているらしい。
マナが噴出すると、魔獣が活性化する。スタンピートが起こった。いまだにマナは濃くて、魔獣は遺跡の周りに徘徊している。
それを倒しながら遺跡に眠る、お宝を見つけ出すのが探索者の仕事だそうだ。
お宝は役所に納め、検査してから、見合ったお金が貰える。
国は遺跡から出た出土品から魔道具を買い取っているようだ。
魔道具で一番高値が付くのは魔法鞄だそうだ。
ここにもし闇属性の魔獣がいたら、フランは作ってみようかと思ったが、やめた。
万が一、遺跡の出土品と勘違いされてもこまる。それほど貴重なものなら、フランが持っている魔法袋も余り外では見せないようにしないとだめだ。
サルマルからもらった魔法鞄も仕舞っておこうと考えた。
代わりにユーナの背負っている様なリュックサックを買って暫くは魔法袋の無い環境で暮らさなければならないだろう。
闇リスの魔法袋に使わないものを総て入れ懐にしまっておく。これでいいだろう。
魔法袋の位置付けが分ってから出ないとこの国では安心できないと感じた。