11 次の大陸
「この国の東に行けば、大陸がある。そこへ行ってみないか?」
「そこは俺達の大陸の反対側にあるんだろう。凄く離れて居る。一旦国へ帰った方が良くないか?」
そうかな、とフランは考えた。いったん帰って、譲り受けた書籍の研究をするのも良いが、このまま違う国へ行った方が、時間的にも距離的にも効率は良いのだ。
エステバルは、残してきた孤児院のその後が気になってきたようだ。彼には彼の考えや希望がある。
「ワチキ。エステバルと一緒に国へ帰って。僕はココと先へ進む。」
「お前一人で行って、何かあったらどうする!」
「大丈夫。連絡はいつでも出来る。その為の通信システムだろう。それに、戦いに行くわけじゃない。違う国を見てくるだけだ。知識を増やしてきっと戻ってくる。」
「分った。俺は孤児院へ行って様子を見てきたいから、先に帰っている。」
と言う事になった。エステバルは後ろ髪を引かれるような思いで、国へ帰って行った。
これからはココと二人で、旅を続けよう。
少し心細いが、大丈夫だ。自分のやりたいことを精一杯やると決めていたではないか。
エステバルは彼のやりたい事をすれば良い。それに、精霊樹の所へ行って、ワチキとのことを聞くべきだ。
このままではエステバルは、一人で悩んで、苦しい思いをするだけだ。
ふと、フランは若しかして精霊樹は、態とワチキをエステバルに宛がったのではと、考えた。
精霊樹を助けたのはエステバルだ。きっと精霊樹は、エステバルに近くにいて貰いたいのではないか。
フランには何処にでも行きたい気持ちを尊重して、ココを宛がってくれたのではないか。
そんな風に考えていた。
エステバル達を見送って、フランは一の島からでている高速艇に乗った。
ここから一番東の島まで行って、そこから大陸に行こう。
この国の東の島は、一三の島だ。そこも猿人がいる島で、大陸と交流があるそうだ。
しかし、1年に1度しか行き来がない。船で1ヶ月掛かるらしい。
帰りはフランの国とは交流がないので、逆の行程を経て帰るしかないだろう。
船旅は順調に進んだ。途中嵐に遭い、航路を変更したが、それでもなんとか大陸の南端に辿り着いた。
「旦那、ここを立つのは6ヶ月後でさあ。遅れたらまた1年待ってもらいやすぜ。」
「分った。遅れないようにここに来るつもりだ。」
大きな湾にある船着き場に、船の碇を下ろし、船乗り達はそれぞれの目ざす所へ散って行く。
フランも案内に雇った船乗りと、港町をゆっくり歩いて行った。
この街は一三の島から来る大型船以外は小舟しかなかった。他の大陸との交流は、獣人族と以外はない様だ。獣人族は造船技術も外には出さないようにしているのだろう。
「旦那、なぜ船造りを他の国へ教えねえか、分りやすか?」
「いや、何故だ?」
「昔の創世記にこう載っていますぜ。神々は、この世界を争いのない世界にしたいとお考えになり、国々を互いから遠ざけてお創りになった。とね。」
ふーん。獣人は信心深い人種なのだな。
それを忠実に守って、技術を国から出さないようにしている訳か。争わない世界など聞いたこともない。
人間なんて何処の世界でも戦争が絶えない。
大陸を越えてまでは、今のところ戦争は出来ないが、大陸の中では戦争してばかりだ。
神様が考えたようには行かないものだな。
船乗りの案内人。サルトは、明日の朝の待ち合わせを確認して帰って行った。
港町は、小さくて宿も余り綺麗とは言えなかった。明日はここを発って王都へ行くことになった。そこまでを案内として頼んだいた。