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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と勇者

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続きじゃない

◇◇◇


 かつて数百年以上の長きに渡り神獣の森を守る様に存在していた白い靄は、俺の放ったハクアの剣の一撃により消し飛んでしまった。


 少しして慌てながらハクの両親とシアンがやってきて、今度はキラキラと輝く黄金の湖を見て目を丸くした。


 ハクの父も人化していて、まるで熊の様なずんぐりとした風貌で豊かな口ひげを生やしている。



「シロウくん!やりましたね~。でもまぁ私は別に心配してませんでしたけど?えへへ」


 唖然として湖畔をキョロキョロしているハクの両親とは対照的にシアンは元気に俺の元に駆け寄って来た。


「お、おう。何か元気そうだな、よかったよ」


 俺が湖に消えた時点でシアンを覆っていた風の障壁は消えていたそうだがシアンは元気そうだ。


 ……となると、森の神聖な気とやらが(もや)ごと吹き飛んでしまったと言う事だろうか?



 俺は引きつった笑いを浮かべ、ハクのご両親に謝罪をする。


「……えーっと、すいません。ちょっと敵襲があって、止むを得なかったんですけど……まずかった……っすよね?」


 ハクの母は湖のほとりにしゃがみ、湖に手を入れてキラキラと光る金色の水を光にかざしてみている。


「いえ、あの靄は森が生んでいるので、直ぐに元通りになりますから。気にしないでくださいね」


 お母さんは手のひらにすくった水をゴクリと飲む。


「……それよりも、このお水」


「え、そっちの方がまずいっすか……?」


 首を横に振り、ニコリと微笑む。


「いいえ。あなたの人柄がわかります。ハクちゃんに聞いていると思いますけど、湖の水は剣の所持者を現すの。キラキラと光り輝き、触れるもの全てを癒すような。ふふふ、あなたにならハクちゃんを安心して任せられるわ」


 あまりのべた褒めに気恥しくてむずむずする。


「光ってるのは単純に光属性だからじゃないっすかねぇ……。あ、ハクアって人の時はどうだったんですか?」


 と、話題を変えてみるとお父さんが腕を組みながら懐かしそうに教えてくれる。


「ハクアの時は、透明になったんだ」


「透明っすか」


「あぁ。文字通り一つの濁りも無く、湖の一番底まではっきりと見えるくらいにね」



 かつて、その命を賭して魔王を封じたと言う勇者ハクア。


 真っ白な剣を掲げて眺める。


 この剣で、勇者ハクアは魔王と戦い、封じた。


 不思議な事に、どれだけ剣を眺めてもそんなイメージは持てなかった。


 気が付くとグスグス音がして、シアンが目を擦っている。


「あれ?まだ体調悪いか?」


 シアンは犬の様に素早く首を横に振る。


「いえ。……懐かしいなって。今初めてシロウくんがあの人の生まれ変わりだって実感しました」


「あー、そうか。シアンは知ってるのか、ハクアって人」


 見た目のせいで勘違いしがちだが、400歳超えだっけか。魔王を知っていれば勇者も知ってる訳か。



 シアンは涙目でコクリと頷く。


「勿論です。あの2人は、ずっと私の憧れなんですから」


「憧れ?」


「ねぇ、シアン。憧れって……敵じゃないのかい?ハクアは」


 ハクの質問を受けて、口に手を当てて意味深に微笑む。


「うふふふふ、聞きたいの?蛇ちゃん」


「え、何だよその反応」


 いぶかし気な視線を送る俺達を他所に、何故か少し照れながら上機嫌にシアンは語り出した。


 ――300年以上昔の、指さえ触れない恋物語。



「……つーかさ、魔王様って女だったのな」


 話を聞いた感想。まずそこだった。


「はい!とっても凛々しくて、カッコ良くって、可愛い方でした!」


 少し涙目のハクが意地悪そうに呟く。


「ふーん、イズミより?」


 シアンはにこりと笑う。


「ふふふ、やきもちかな?」


「違うよ、ばーか」


「こらっ、ハクちゃん。口が悪いわよ」


 お母さんに怒られ、ムゥと口を噤む神獣さん。



「私もヴィクリムもずっと待ってたんです。300年以上。ハクアと魔王様の、恋の続きが始まる日を」


「シアン、悪い」


 話の腰を折って、興を削ぐ様で申し訳ないのだが、言わずには居られない。



「悪いけど続きじゃない。……俺とイズミの物語なんだよ」



 その言葉にシアンはハッと息を飲み、キラキラした瞳で俺を見る。


「えへへ、ですね!失礼しました。あっ、恋敵要ります!?ほら、ここにちょうどいいのが」


「うるっさいなぁ!止めろってば、バカ!押すな!」


 ハクは顔を赤くして本気で怒ったようで、ブンブン手を振り回すがシアンはひらりひらりと華麗にかわす。さすが魔王四天王と言うべきか。


 何度振り回しても一向に当たらず、ハァハァと息を切らせたハクは恨みがましくシアンを睨む。


「……あのね、何度も言うけどそう言うのじゃないんだってば」


 ハクの服がダボっとした袖口の広い服に変わっている。


 自信は無いが、前は違った気がしたので、恐らくお母さんの言ったように鱗を変化させたものなのだろう。


「ん、シロウ。鞘、ここにしたから」


 まだ怒りが冷めやらぬのかやや赤い顔でハクは俺に手を伸ばして広い袖口を向ける。


「お、了解」


 恐る恐る真っ白な剣を袖に入れると、ハクの腕より長い剣はスッと袖の中に消えた。



 何となく、そのまま掌を向けているとパンとハクは手のひらを打つ。


 シアンの昔話を聞いて思った事。


 勇者ハクアは、50年の長きに渡って魔王の城に通い続けたそうだ。


 封印されていない、権能全開の魔王の(もと)に、50年。


 


 根拠なんて何も無いけど、確信だけがあった。


 賢者達から言わせれば、そんな物はただの幻想で、愚かな勘違いなのかも知れないけれど、生憎俺は賢者なんかじゃない。


 ――勇者だ。


「イズミに会いに行こうぜ」


 きっと、俺はイズミの側にいても死なない。


 ラータからイズミを守る。その為の力も多分得た。


 なら、会いに行かない理由なんて無い。



◇◇◇


 かつて、魔王城があった辺境の地。


 無数の竜族の死骸の山に立ち、剣からは血を滴らせるジーオ。


 剣を持つ右手は、封印に似た拘束具が付いた義手だ。


 城自体は幾重にも厳重に封印がされているのだが、この辺りに生息する魔物の強さは他の地方の比では無い。


「君たちには」


 竜の死骸を調べながら、ラータは呟く。


「四天王を止めてもらわなければならない」


 ジーオは頷く。


「わかっている」


「できるかな?人のままで」


 薄笑いを浮かべ、ラータは答えを待つ。


「わかっている」


 語気を強め同じ言葉を呟き、天を仰ぎながら言葉を続ける。


「民を、世界を救う為なら」


 ラータも顔を上げ、ジーオの視線を追う。


 空に月は無かった。


「私達で、世界を救おう。英雄と呼ばれずとも。例え……人ならずとも」



  


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