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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と勇者

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生まれ変わりで幼馴染

◇◇◇


 ハクの案内で濃い(もや)の覆う森の奥へと進んでいく。


 神聖な森の空気は魔物であり魔族であるシアンにとってはすこぶる居心地の悪い物のようだが、風魔法で何層かの膜を作る事で大分ましになったようだが、いつもの元気は無い。


 森で呼んだ大きな熊の背に乗り、俺達の後を付いてくる。



 靄のせいで極端に視界も限られ、どの方角にどのくらいの時間歩いたのかもさっぱりわからない。


 超動物的な感覚を持つナシュアだったらわかるのかな?と思い出して目の辺りが熱くなる。



 そして、それはハクも同じだったようだ。


「ナシュアはさ、途中から先頭を歩いてたよ。普通に見える、って」


 懐かしそうに笑いながらクルリと俺を振り返る。


「あはは。本当変なやつだったよね。パパも言ってたよ、神獣の先導無しで辿り着くなんて前代未聞だって」


 そう言って笑うハクの目には少し涙が滲んでいた。



 あいつがここに居れば、いつもどおり豪快に笑って『当然だ』とでも言うんだろうな。


 きっと、あの自信に満ちた笑みにイズミもハクも少なからず支えられてきたんだと思った。




「なぁ、ハク」


 俺は親指を自分に向け、自信に満ちた笑みを浮かべる。



「俺なら目を瞑ったままでも辿り着けるぜ」



 何に対してかはよくわからないが、ハクは口を押さえてプッと噴き出す。


「あははっ、何言ってんの君。出来るわけないだろ」



「面白れぇ、光属性なめんなよ」


 ――と、目を瞑り3歩歩いた瞬間木に激突して尻餅をつく。


「ぎゃあっ」


 

 呆れ笑いでハクは俺に手を伸ばす。


「もう、なると思ったよ」


「あー、一応光属性さんの名誉の為に言っておくけど、光属性さんは関係無いからな」


「わかってるってば。別に無理してナシュアの真似なんてしなくていいと思うけど?」


 図星を突かれ、恥ずかしさに声も出ない。



「あれは本当に規格外の問題外の論外だからさ。真似しようとするだけ無駄だよ、うん」


 慰めるようにそう言うハクの言葉が、妙に胸にチクリチクリと刺さり、モヤモヤする。



 いや、確かにさ。言われなくてもわかってるんだよ。


 現状俺がナシュアに勝てるはずも無いし、代わりになるはずも無いし、真似が出来るはずもない。


 わかってるけどさぁ……。


 モヤモヤを飲み込み、きっと不貞腐れた顔をしている俺の少し先を歩くハクは振り返らずに口を開く。


「君は君のままでいいんじゃない?」


 ……当たり障りの無い使い古された言葉言いやがって、と一人心の中で毒づく。良い訳ねーだろ。強い方がいいに決まってるだろ、そんなもん。


 答えず無言でいると、ハクはピタリと立ち止まり心配そうな顔で振り返る。


「……何か怒ってない?」


 そう言われて怒っていると答える人いる?


「いえ、そんな滅相も無い」


 白々しく手を振り否定する俺を見て、ハクは呆れ顔でため息を吐く。


「真似とかじゃなくてさ、君にしかできない事もあるんじゃない?って意味だよ」



「はぁ。そうっすね。確かに、ごもっとも。先、急ぎましょうか」


 愛想笑いを浮かべて、手で先を示す。どっちが先かはわからないが。



 ハクはムッとした顔をしたかと思うと、すっと手を伸ばして両手で俺の頬に触れたかと思うと、力を入れてギュッと手で頬を押す。


 頬が寄り、俺の端整な顔はギュッと潰れる。


「いいかい?一度しか言わないからよく聞きなよ?」


 ハクはムッとした顔で俺を睨む。



「イズミでもナシュアでも無くさ、君が頑張ってるから僕も頑張ろうと思えるんだよ。今更誰かの真似なんてする必要ないだろ」



 余りに真剣な眼差しに、余計な軽口など叩けず固定された顔で小さくコクリと頷く事しか出来なかった。


 頬を押さえる手でそれを感じると、ハクは俺の顔から手を離して満足気に頷く。



「わかればいいよ。イズミだってその方が嬉しいはずだよ、うん」


「……いちゃついてるとイズミ様に報告だよ~、蛇ちゃん」


 後ろからシアンの声。


「別にいちゃついてなんて無いよ。変な事言わないでくれる!?」



◇◇◇


 どの位森を歩いたのかわからない。


 先頭を歩くハクが一言『着いたよ』、と呟く。


 そして、もう一歩足を踏み出すと、その途端にサァっと深い靄は晴れて、樹々に囲まれた森に真っ青な空が覗く。


「ただいま、パパ、ママ」


 ハクの視線の先には家を一周するほどの巨大な白蛇が2匹いた。


「おかえり」


「あらあら、もうハクちゃんもそんなお年頃なのね。もうっ」


「だから違うってば。そう言うのじゃないんだよ」


「別に照れなくてもいいじゃない。古来から神や神獣と人間の婚姻なんて山ほどあるんだし」


「違う!」


「ハク、パパは認めないからな!」


「違うっ!」



 何とも賑やかな感じに呆気に取られる俺とシアンを見て母蛇は自己紹介を催促する。


「ほらほら~、ハクちゃん。早くパパとママに紹介してよね」


「しようと思ったけどパパとママがうるさいんだよ、もうっ」


 ゴホンと咳払いをして、ハクは相互に紹介をする。


「えーっと、ゴホン。こちら、シロウとシアン。僕の友達。シロウ、シアン。こちらうちのパパとママ。見ての通り白蛇の神獣」


「えへへへ、友達ですってシロウくん。私友達なんて出来たの初めて~」


 ハクからの友達認定に満面の笑みを浮かべるシアン。


「あれ?イズミは?」


 俺の問いにきょとんと首を傾げる。


「え?イズミ様と私が友達だなんて……そんな恐れ多い事あるはずありませんよ」


「お前さ、それイズミに言うなよ?絶対悲しむから」


 言葉の意味が良くわからなかった様で、シアンは首を傾げたまま俺の次の言葉を待つ。



「あいつは絶対に友達って思ってるからだよ。実際に見た訳じゃねーけどさ。絶対」


 きょとんとしたシアンの瞳がキラキラと輝くのが分かる。


「そう……ですか。えへへへへ、そうですかねぇ?」


 あまりの嬉しさに口元の弛みも抑え切れない様子で、熊の背に乗ったまま両頬を手で触れて笑う。


「仮に、もし本当にそうだとしたら……、そんなに幸せな事はありませんねぇ」


 ニコニコと、本当に幸せそうにシアンは笑う。



「さて、ハクよ。本題に入ろうか。イズミさんの事は聞いているよ、ただ里帰りに来たと言う訳じゃないんだろう?」


 父蛇は真面目な顔でハクを見て、ハクも真面目な顔で父蛇をジッと見る。



「うん。新しい勇者を連れてきたんだ。魔王を救う……勇者様をね。だから、剣を抜かせて欲しい」


 父蛇は一度目を大きく見開くと、品定めをするかのように俺とシアンを一瞥する。


「女の子の方か?」


 ハクは首を横に振る。


「違う。シロウだよ」


 父蛇は眉を寄せ、険しい口調に変わる。


「馬鹿かお前は。死ぬぞ、その子じゃ。友達じゃないのか?」



 ハクは父を睨み返す。


「シロウは死ぬもんか。パパの目は節穴なんだね」


「何!?」



 険悪な空気が流れ、母蛇が二人を仲裁する。


「まぁまぁ。それじゃシロウくんに聞いてみましょうよ。ね、シロウくん。貴方くらいの魔力だと十中八九死んじゃうけどどうする?」


 ニコニコと物騒な事を言うお母さん。


「この400年位の間に何人が剣を抜きに来たかしら?結局剣を抜けたのはハクアくんとイズミちゃんだけだったけど」


 ハクアくん……てのは、もしかすると300年前の勇者の名前なのかな。


「他の人はどうなったの?」


 シアンが問うと、答えは想定内の物だった。


「勿論皆死んだわ。それでも良ければご案内しますよ~」



「あ、じゃあお願いします」


 と、二つ返事に答えると母蛇は少し驚いた顔をした。


「剣を抜いたのは、ハクアって人とイズミだけでしたよね?」


 母蛇はコクリと頷く。


「俺、生まれ変わりで、幼馴染なんで」

 

 にやりと得意げにそう言い放った後で、だから何だよと自答した。


 呆れたのか、諦めたのか、又はその両方か。母蛇は俺を森の奥へと案内した。


 きっと、何年か前にイズミもこの道を通ったのだろう――。





 








 




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