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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と勇者

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墓暴きへ

◇◇◇


 ――世の全ての文字の集うと言われる場所、『知恵の樹』。


 どの様に出来ていつから在るのかもわからないその空間への出入り口は、代々クアトリア王家にのみ語り継がれていた。


 知恵の樹の奥深くで、今日も何かが本を捲る。


 パラリパラリと、パラパラと、ペラペラと。手元の1冊を捲りながら空中にも無数に本を浮かべさせて何十何百もの本を同時に捲る少年。


「……あぁ、足りない」


 時折光の玉をスイスイと操作すると、ドサドサと本が現れる。


 それを見て嘆くように深くため息を吐く。


「足りない。時間も、手も、眼も、頭も、命も」



◇◇◇



「ジジイの墓を暴こうと思うんだが、異論のあるやつ~?」


 軽薄な笑顔を浮かべながら剣呑な単語を使い俺とハクに挙手を促すナシュア。


 確かに、『大賢者ゼルは死んでいないんじゃないか?』と提起したのは俺だし、となるとまず最初に確認すべき所はそこだと思う。


 ハクをチラリと見るとハクも俺を見ていた。


「異論は無いけどどうやって?」


 ハクが問うとナシュアは小ばかにしたように笑う。


「どうやってって……。墓石どけて土を掘るんだよ。他にどんな方法があるんだ?」


「……シロウ、訂正するよ。この男基本的には脳筋だ。知識と教養を持った脳筋だよ」


 なるほど、人はどれだけ道具を持っていたとしても、全て使うかと言うとそれは別問題と言う事か。知識と教養により他の人より選択肢は増えるだろうに最終的に脳筋的選択に落ち着くと言う事は、きっと彼は根源的に脳筋なのだろう。


 ハクが困った顔で俺を見るので、俺も腕を組んで頭をひねる。


「掘るのはわかってるんだよ。ハクが聞いてるのはその理由付けだろ?故郷の村に埋葬されてるって言うけど、そう簡単に暴かせてくれるわけないだろ?大賢者とまで呼ばれた男の墓だぞ?」


 ナシュアはきょとんとした顔で俺の言葉に同意して、続きを待つ。


「ん、あぁ。そうだな。それで?」


「……それで?じゃねぇよ。だからどうするのか?って話だろ」


「どうもしねぇよ。普通に夜中に掘る。許可なんかいらん」


「ま、言うと思ったよ。でもさ、大賢者ゼルが死んだのは4年前だぞ?墓を暴いた所で良くて骨が入ってるだけじゃないか?それをどうやってゼルの遺骨かどうか判別するんだ?」


 ナシュアは俺を見て大きくため息を吐く。


「……お前は本当に何も知らんのな。骨でも髪でも何か一つあれば、魔力の通った跡から識別できるんだよ。『導紋』つってな」


「うるせぇな、習ってねぇんだよ」


「ジジイの墓はメイって言う田舎町にある。田舎っつってもお前らの村程じゃねーけどな、ははは」


「一々無駄に(くさ)すんじゃねぇ」


 確かに地図で見るだけでもカカポ村の僻地っぷりはわかる。それこそ世界の最果てと言っていいレベルだと思う。だからナシュアの言う事も真実ではあるんだろうけれど、真実だからと言って何でも言っていい理由にはならない。


 

◇◇◇


「ジーオ達が同席しなかった理由は何かな?」


 弟子水入らずとか言っていたが、まず間違いなくただの口実だろう。


「まずその事自体が悪だくみの証左だろ」


 食事をとりながら会議は続く。


「確かに。武力的にもあの2人がいないなんて思わなかったよね。もしナシュアが暴れたらどうするつもりだったんだろ?」


 エビフライを頬張りながら首を傾げるハクをジロリと睨むナシュア。


「誰が小僧相手に暴れるなんて大人げねぇ事するか」


「え、大分大人げなく感じ悪かったけど」


「よーし、てめぇ帰りの魔導馬車自腹だからな」


「あはは、そう言うところが大人げないって言われてるんじゃないの?」


「はい、お前も自腹~」



 狭小なナシュアの言葉を物ともせず、ハクは3本目のエビフライにパクつきながら笑う。


「うん、じゃあ1人で帰れば?行きはありがとね」


「なっ……」


 予想外の反応だった様でナシュアは絶句する。


 ハクはこっそりとテーブルの下で俺の足にトンと足で触れる。


『ナシュアは意外に寂しがりだからね、こういう時は一度引くと効果的なんだよ』


「えっ」


 急に頭に声が聞こえてきたので驚いてハクを見ると、ハクは悪戯そうに笑う。


『あれ?やったこと無かったっけ?僕に触れてれば会話できるやつ』


 あー……、黒蛇のノワと会話をした時にやった様な。それの応用か。


『なるほど』


 頭の中でそう答えると、ハクは満足気に頷く。


「いいのか!?本当に1人で帰るぞ!?お前は本当にいいのか、小僧!?魔導馬車なんてもう一生乗れねーかも知れないんだぞ!?」


 オロオロと慌てながら説得の矛先を俺に変えてきた。


「そうだなぁ。別に急いで戻らなくても……。あっ、委託のポーション作らなきゃ。この辺にどこか採集できる森ねーかな?」


「はぁ!?草なんてどうだっていいだろうが。魔導馬車だぞ!?お前が一生草むしっても乗れねーぞ!?ほら、意地張って無いで乗ろうぜ?な?」


 嫌味な金持ちのボンボンの様な言葉に何故かハクがムッとして言い返す。



「そんなのわからないだろ?大きなお世話だっての。シロウ、食べ終わったらここのギルドに行って一日採集権買いに行こうか」


「ギルド!ははは、丁度ここのギルドにも顔が利くんだ。いい機会だからこの兄弟子様が本当の採集ってのを見せてやるよ!」


 ハクはジッと白い目でナシュアを見る。


「えー……、別にいいよ。君『草なんてどうだっていい』って言ってただろ?」


「そう言うなっての!おーい、お会計!俺の奢り!」


「まだ食べてるよ」


◇◇◇


 そして、食事を終えた後で腹ごなしも兼ねて手近な森で採集を行うことにする。勿論ギルドで採集権は購入済みだ、ナシュアの奢りで。


 いつもポーションに使っている薬草は、海を渡ったここミニル地方にも自生している。ナシュア曰く歴史的には遥か太古の昔二つの大陸は繋がっていた事の証拠らしい。


 真空二層式携帯魔導釜『ホムラ壱式』を起動して取り合えず一瓶分抽出してみる。


「何でそれっぽっち作ってんだ?」


 腕を組みナシュアは俺に問う。


「あぁ、同じ種類の草でもさ土が変われば味が変わるかもしれないだろ」


「細けぇ事言ってんなぁ」


 ハクは手頃な岩に座り訳知り顔でニコニコと笑う。


「イズミはうるさいからね、味の違い」



 ナシュアもそれを聞いてニヤニヤと笑う。


「あ、そう言う事ね」


 以前、『後味がいい』と言うイズミの為に隠し味の塩とミントをほんの少し多めに入れたら『なんか味が変わった』と即座にバレた。


 薬師として、常に新しいものにも挑戦する気持ちはあるが、イズミの為に変わらないものを作りたい気持ちとの板挟みだ。


 イズミがいなくなった後も変わらず特製ポーションの売れ行きは良い。


 もしかすると、今もどこかで買ってくれているのかもしれないから手は抜けない。



「つーかさ」


 思いついた様にナシュアは瓶を指差す。


「ラベル張って裏に何かメッセージ書けよ。イズミ宛てによ」


「え」



 思いがけない提案に固まるが、ハクはパンと手を叩き賛同する。


「あっ、いいねそれ。さすが脳筋ロマンチスト!」


「ははは、褒めすぎだろ」


 俺はポーションを詰める瓶を手に取る。


 特に商品名がある訳では無いが、識別用にラベルは張っている。表で無く、瓶に貼る側に何か書くのは……アリかも知れない。


 勿論、俺と特定されない範囲で。



「……なんて書こうか」


 気が付いたら瓶を眺め、何かを書く前提で呟いてしまう。


 それは、ハイエナ達への格好のエサだったようだ――。



「決まってんだろ!『愛してる』だ!」


「え~!?それは少し直球すぎやしないかい?もう少し情緒ってものがさぁ」


「いいからよ!ほら、貸せ!俺が書いてやる。特級筆記の資格も持ってるぞ、俺は!」


「君本当に色々持ってるねぇ」


 



 

 


 

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