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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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魔王の罪

◇◇◇


 獄殺卿ヴィクリムがふわりと両手を上げる間に、ジーオ達7人は武器を構えてヴィクリムへと飛び掛かる。


「……おや、お一人どこかで見た顔のような」



 そう呟きながら自らに襲い掛かる白刃を気にせずに、指揮者の様に上げた両手を下ろす。


 その瞬間ヴィクリムに襲い掛かる武器を持つ彼らの腕だけがその場所に固定された様に置き去りになり、困惑しながらも5人は次の武器を取る。


 身を屈めて武器を持たない5人を躱しながら自身の後方へと走り去る2人を振り返るヴィクリム。


「おっと、2人も逃がしちゃいましたか」



 8人で城に突入し、戦闘を歩いていた金等級のクウザは既にバラバラになっている。


 2人除くと残りは5人。


 ヴィクリムは片手を失いながらもなお襲い来る5人の攻撃をかわしながらトン、トン、と肩や足に軽く触れる。


 その度にその箇所がドサッとそのまま床に落ちる。


 手を失っても、足を失っても、頭を先に失っても5人は攻撃を止めなかったが何度かヴィクリムが彼らに触れ、その6人の五体が全て別々の部品となった後で漸く彼らの攻撃は止んだ。


 だが、それでも6人は死んでいない。


 血も流れずに、意識もしっかりとある。


「……馬鹿な」


 原理も何もわからずに、床に落ちた頭でヴィクリムを見上げる。


 ヴィクリムはバラバラになった彼らの身体をフッと一息吹いて廊下の端に寄せると、顎に手をやり首を傾げる。


「……まぁ、残りはシアンに任せましょうかねぇ」



◇◇◇


 ジーオと白銀等級の戦士ゲインの2人はヴィクリムを擦り抜けてイズミの元を目指す。


「……ジーオ、腕」


 黒蛇の神獣ノワが心配そうな顔でジーオの右腕を見るので、ジーオは安心させるようにニコリと微笑む。


 ジーオの右腕は肘から先が無くなっている。ヴィクリムと交差した際にやられたようだった。


「あぁ、心配ありがとう。大丈夫だよ、不思議な事に感覚は普通にあるんだ。痛みも無い」


 ジーオが攻撃をせずに最初からヴィクリムを回避するつもりだったのなら、恐らくは8人全員があの場で足止めを食らっただろう。腕を失う事を厭わない彼の全力の攻撃があったからこそ、ジーオとゲインはヴィクリムを越える事が出来たと言える。


 前に進む事の代償は利き腕と愛刀と、6人の冒険者達。


 その代わりになるかはわからないが、白銀等級の戦士ゲインは無傷だ。


 歳は30手前くらいで、赤茶色の髪をした長身細目の男だ。ジーオより背は高いが、ナシュア程は体格が良くは無い。背中に大きな盾を背負い、そこに何本か剣の柄が見える。


「一本要ります?」


 走りながらゲインはジーオに声を掛けると、ジーオはニコリと微笑む。


「ありがとう。あと、敬語は要らないよ。何よりこんな状況だ」


「了解、ボス」


 ゲインは背中に手を回して一本剣を抜き、ジーオに手渡す。



「ボスの愛刀程じゃないけど、まぁまぁいいやつなんで」


 急なボス呼びに苦笑いをしながら剣を受け取る。


 ジーオ達四極天の装備品は、各種新聞や雑誌で何度も取り上げられている為、国内外を問わず多くの人の知る所であり彼らの代名詞的な物になっている。


 例えば勇者イズミのハクアの剣。


 そして、ジーオ王子のアマツの異国刀。


 後はナシュアの持つ黒羽の異国刀。カルラは特にこれと言った代名詞的な装備は無い。強いて言えば黒いとんがり帽子と黒いローブだろうか。


「ありがとう。うん、良い剣だ」


 右手は無く、鞘も無いため剣を左手に持ったまま道を急ぐ。


 城には次第に火の手が広がり、非現実的な色の焔が城を焼き、夜明け前の城を怪しく照らす。



「俺、結婚するはずだったんですよ」


 唐突に白銀等級の戦士ゲインは呟く。


「……だった?」


「えぇ。去年(やまい)で死んじまったんで、そいつ」


 ジーオの反応を待たずに言葉を続ける。


「んで、女々しい俺は思うんすよ。……魔王がいなかったら、あいつまだ生きてたかな、って」



 二人は何かを察知して立ち止まる。


 目の前の空間がぐにゃりと歪んでシアンが出現する。



 ジーオの姿を視認すると不機嫌そうにため息を吐く。


「イズミ様はさ、友達だから殺さないでって」



 シアンは涙目でキッとジーオを睨む。


「イズミ様がお前達に何をした?」


 ジーオとゲインは武器を構えて戦闘態勢を取る。



「シャヤルの街で……沢山の人を殺した」


「それが無ければ平気だった?いつか真実が露見した時も?……絶対にそれは無いよ。イズミ様は同じように虐げられ、迫害され、殺されてるはず。だから私達はイズミ様をお救いしたんだから」


 


「黙れ!魔王は生きてるだけで人の命を吸うんだろ!?なら生きているだけで人の敵――」



 叫ぶゲインの言葉を遮りながらジーオが彼に飛びつくと、その一秒後にはゲインのいた場所の辺りは壁ごと抉り取られる様に無くなっていた。



「生きてるくらいいいでしょ!?こんな世界の端っこで一人寂しくしてるんだからさ!好きな人とも離れ離れになってまで!」


 今にも泣きそうな声で叫ぶシアン。


 ジーオは短刀をゲインにそっと渡し、視線で先に進むように促す。


「……図面は頭に入っているね?」


 さすがに魔王の元へはジーオが行くものと決めつけていたゲインは一瞬目を丸くする。


 確かに、仮にゲインが残ったとしてもきっと瞬時にシアンに殺されるだろう。それならば、ジーオが残って時間を稼いでいる間にもう一人が短刀を持って魔王の居室に向かう方が合理的と言える。


「それに……友達だから殺さないで、ってお願いされているようだからね。僕が残る方がいいだろ」


 そう言ってジーオは苦笑いをする。


 かつての戦友の優しさに付け込んで、命を奪いに行く。そんな姑息さへの自嘲も含まれているのかもしれない。

 

 ゲインはコクリと頷く。


「ご武運を」


「あぁ、君も。世界を救おう」


 そう言って二人は散る。


 ジーオはシアンに立ち向かい、ゲインは単身魔王の間を目指す。


「行かせるか!」


 ゲインを阻もうとするシアンをジーオの斬撃が襲う。


 左手一つでも、愛用の刀でなくとも、それでも『技の極致』と称されるジーオの神速の斬撃。



 シアンはギリっと歯ぎしりをして、ぐにゃりと空間を歪ませる。


 そしてその瞬間、シアンが開いた綻びからカルラの焔魔法が噴き出してくる。


「なっ……」


 焔はシアンの瞳をピンク色に染めた後、彼女を飲み込む。



◇◇◇


 白銀等級を得る事が出来る冒険者は数万に一人と言われている。


 それより上は虹等級しかなく、虹等級は実力や実績よりも政治的な思惑や宣伝の意味合いが強い為なろうとしてなれるものではない。そう言う意味では白銀等級が最上級の等級と言う見方もできる。


 その白銀等級を持つ戦士ゲインは国を代表する歴戦の勇士と言える。


 世界で魔王を討つ為に旅をしていたのは四極天だけでは無い。


 彼もまた、魔王を倒すべく力を付け、世界中旅をした。


 

 古びた城の最上階にある扉の前にたどり着く。


 まさか、かの四極天ジーオから魔王討伐を託されるとは思いもしなかった。


 だが、もとより覚悟はできている。


 扉の向こうには、且つて勇者と呼ばれた魔王イズミがいる。



 ちらりと後ろを見るが誰も来ない。


 ジーオが、皆が足止めをしてくれている。


 だが、時間がある訳では無い。



 ――俺が世界を救う。


 一年前に病で没した婚約者の姿が一瞬脳裏をよぎる。


 グッと口を結び勢い良く扉を開ける。


「魔王!覚悟!」



 扉を開けるとそこは王の間でも何でも無く、少し豪華な部屋だった。


 その部屋の主は室内にいたが、ゲインがそれを認識するのには少し時間が必要だった。


 魔王イズミはベッドに潜り、一人震えていた――。











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