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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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兄弟

◇◇◇


「ここ、ここ。この辺り」


 ナイルと呼ばれた少年は、黒い髪に金色の瞳をしていた。


 歳は12・3歳だろうか?イズミやシロウよりも明らかに年下であり、人化したハクと同じくらいに見える。


 少年はその丸い金色の瞳を大きく開いて、商業都市アルバの瓦礫の一点を凝視している。


 黒いローブととんがり帽子を被った魔道士カルラはナイルと同じ一点を目を細めて見つめている。



「あぁ、あんた目いいね。あるある、何か綻びみたいなの」


「ここは何があった場所だ?」


 瓦礫の中で探索をしていたジーオ達は、何かの綻びを見つけて街の人に問う。


「ここは……えーっと、酒場ですね。大衆食堂兼酒場って言うんでしょうか?」


「酒場、か」


 ジーオが質問をしている間にカルラとナイルは何かブツブツと言いながらそれぞれ地面と空中に何か落書きをして考え事をしている様子だ。


 魔法剣士として魔法の心得は人よりはあるが、基本的には専門外である為ジーオは口を挟まずに2人の思考の帰結を待ちながら自身も思案する。


 あくまでも可能性の一つの推測として――。


 ここに綻びとやらがあるとして、誰かが空間を捻じ曲げてギガンテラと言う巨大な魔物を呼び出したとして、その誰かが百獣姫シアンだとして、この綻びがシアンの居城に繋がるとして、その先に魔王もいるとして。


 自身に魔王イズミが倒せるだろうか?、と。


 ジーオが思案するのは情緒的な問題ではない。


 1年前の魔王顕現とされるあの日、只一瞬の魔力の暴走程度でカルラの障壁を薄氷の様に割り、ジーオもカルラも成す(すべ)無く吹き飛ばされた。


 気も手も抜いてなどいなかった。どの瞬間も即座に戦闘に移れるように、国民を守れるようにと全神経は集中していたにも関わらず、だ。


 あの暴走は彼女の実力を遥かに超えるごく一時的な物、と楽観的に力を見積もっても何にもならない。本来の魔王イズミはあれよりも更に強いはずだ。


 そして、残る四天王を倒せばその封印は更に弱まり魔王は更に力を増す。


 あの日、魔王の力の片鱗に触れたジーオとカルラには四天王を倒すと言う選択肢は既に無かった。


「ぷはぁ、ダメですね」


 まるで息をするのを忘れていたかのように息を吐きだし、ナイルは言う。


「カルラさんは?」


 チラリとカルラを見ると、大人げなく勝ち誇ったようにニヤリと笑う。


「うふふふふ、わかっちゃった~」


「ほ……本当ですか!?」


「あはは、嘘なんて吐くわけないじゃん!いえ~い私の勝ち~」


 煽るように喜ぶカルラを見て、呆れ顔でため息を吐くナイル。


「はいはい、負けましたよ。今は」


 カルラはにっこりとほほ笑みナイルの頭をポンポンと叩く。


「冗談だよ。そもそも最初に見つけたのはあんただし。噂通りの俊英ね、『最後の弟子』ナイルくん」


 2人の様子を微笑ましく見守りながらジーオが話に入る。


「それで?何が分かったんだ?」


「ん?ご期待通りこの綻びのこじ開け方。直接接合方式だったら、その向こうはこの惨事を起こしたやつの居場所だね」


 そう説明を終えた後で、真面目な顔でジーオを見て言葉を繋ぐ。


「でも、行ってどうする?弱気な事を言うわけじゃないけど、勝算は?そもそもイズミを……魔王を最初に倒さないとダメじゃない」


 今の力では魔王イズミに勝てないのは当然2人の共通認識だ。


 ジーオは腕を組み、ナイルを見る。


「ナイル君。言ったね?……手があると」


 ナイルはニコリと自信に満ちた笑みを浮かべる。


「はい。わが師より秘に伝えられています。魔王を封印する為の秘術を」


 ジーオも、カルラも自信に満ちたその言葉に息をのむ。


「勝算は?」


 予想外の問いだったようで、ナイルは少し首を傾げる。


「10回行えるなら……」



 その言葉に2人から微かに落胆の空気が出るのを待ってましたとばかりに少年ははっきりと言葉を放つ。


「10回成功します」


 そして、『勿論お2人の助力があってですが』、と年相応の照れ笑いをした。


「大賢者ゼルはこの状況を予見していました。魔王イズミの暴走、そして残された四極天の2人。そのお2人の力添えがあれば、魔王の封印……成せぬ道理はありません」


「よし……作戦を詰めよう」



◇◇◇


「知らねぇと思うが一応聞いてやるよ。お前ナイルって小僧知ってるか?」


「知らねぇと思ってるなら素直に教えればいいだろ。余計な前置きいるか?」


 出発前にトルイの森で薬草採りをする。


 今日のギャラリーは2人だ。


「ナシュアは君にちょっかい出したくてしょうがないんだよ。あはは、かわいい弟みたいなものだからね~」


 それを聞いてナシュアは大きくため息を吐く。


「はぁ……、かわいい弟ねぇ。どうせなら妹がよかったよなぁ。かわいい妹」


「イズミみたいな?」


「いや、もっとカワイイ系がいいな。あ、あとできれば胸も尻ももっとでかい方がいい。それから……」


 キリっと真面目な顔でしょうもない事を言うナシュア。俺の兄の様な存在。……本当?



「そんでそのナイルってのが何なんだよ?話途中だぞ」


「あぁ、悪い悪い。つい熱が入っちまったな。そうそう、ナイルってガキ。俺は特別面識無いんだが『ジジイの最後の弟子』って呼ばれてる天才くんでな」


「……ジジイの最後の弟子なんて呼んでるのは君だけだろ」


 ハクが茶々を入れるが、そのままナシュアは気にしない。


「そいつが今ジーオ達と一緒に居るらしい。確か今13歳だ」


「……爺ちゃんの最後の弟子?」


 その言葉に違和感を覚えると同時に何だか胸の奥がモヤっとする。


「カカポ村が滅んでから4年前に爺ちゃんが亡くなるまで、俺ずっと一緒に住んでたはずなんだけど」


 カカポ村が滅んだのが9年前、そこから爺ちゃんが亡くなるまでの5年間俺は一緒に住んでいた。王都に行くと言う爺ちゃんにお土産を頼んで、見送った日までずっと。


 その前だとすると、そのナイルって子は4歳?全く無くは無いんだろうけど……。



 俺の表情を見て楽しそうに笑うナシュア。


「てことは可能性は四つ。一、お前が嘘を吐いている」


「シロウが嘘ついてるはずないだろ、ばか」


 重ねてハクが茶々を入れるが変わらずナシュアは指折り数えながら可能性を提示する。


「二、ナイルが嘘を吐いている。三、真実。四、……ジジイが嘘を吐いている。さて、どれだろうなぁ」



 俺は立ち上がり、背伸びをしながら腰をトントンと叩く。


「どれでもいいよ。……どのみち会えばわかる」


 ジーオとカルラが帯同しているって事は少なからず根拠があるはずだ。


 俺は爺ちゃんに魔法も何も教えてもらっていない。


 もしかしなくてもきっと弟子なんかじゃないかもしれない。


 何だか少し悲しくて、少し悔しい。


「……もしかすると、そいつも何か知っているかもしれないよな。行こうぜ、アルバって所に」



「オーケー、なら急がねぇとな。ちんたら馬車や船で行ってる場合じゃねぇ、王侯貴族御用達の魔導馬車で行くとするか」


 魔導馬車――。馬車と名が付いているが、実際は魔力を動力として動く現状一般人が扱える最速の移動手段だ。陸路も高速だが、その真価は遮蔽物の無い海上移動にこそ現れる。多大な魔力を消費し、量産も難しいその魔導馬車の運賃は、距離にもよるが最低で豪邸一戸分と聞いたことがある。


 カルラの検査薬と言い、何で価格の単位が豪邸になっているのだろう?豪邸にもピンからキリまであるだろうに。


「……いやいや、そんな金ねぇってば」


「しょうがねぇな。今回は奢ってやるよ」


 予期せぬ答えに目が丸くなる。


「いやいや、あんた財産没収だか返上だかしたんでしょ?無一文じゃないの?」


 それを聞いてナシュアはニヤリと自信に溢れる笑みを見せる。


「バカ言うんじゃねぇよ。俺の財産は俺自身だ。金なんざいくらでも湧いて出るっつーの」




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