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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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アルバへ

◇◇◇


 古の超大型魔族ギガンテラにより蹂躙された商業都市アルバ。


 踏み潰され、破壊されたその街はまるで災害の後を思わせる光景だ。だが、経済活動はすでに始まっており人々は失った悲しみや、またいつ来るとも分からぬ恐怖に怯えながらも日々復興に向けて生活している。


「ようこそおいで下さいました、ジーオ・アズマギア・クアトリア様」


 アルバの街には各国から腕に覚えのある冒険者や、国に認められた勇者達が集まっている。ナシュアの言うようにクアトリア王国からはジーオ達が訪れた。


「今日は国賓や外交として来たわけでは無い。他の冒険者と同じ様に接してくれて構わないよ」


 ジーオはそう言うが、彼は一国の王子でありほぼ確実な次期国王であるので相手としても中々そうはいかない。


 戸惑う男を見てカルラは口を挟む。


「いやいや、無理だって。つーか、あんたもいい加減わかりなよ。イズミだったらこう言うよ?『……あなたのそう言うところが本当に嫌い』ってさ」


 懐かしむような呆れ顔で小さくため息を吐くジーオ。


「わかったよ。対応はそのままで構わない。状況は?」


「ハッ!」


 男はピシッと敬礼をして、説明を始める――。



 説明と言ってもわからない事ばかりではある。わかっているのは、ある日の夜、何の前触れも無く突如現れた超大型の魔物が、街を蹂躙して消え、97人の命が失われたと言う事だ。



 話を聞き、人払いをした後でジーオは腕を組んで眉を寄せる。


「突如現れ、突如消える、山ほどの大きな魔物に心当たりは?」


 用意された部屋の中にはジーオとカルラと、少年が一人。


 カルラも少年も首を横に振る。


「大きさだけなら古い伝記にも残る巨人ギガンテラがそれっぽいけどね。でもそんなのが簡単に出たり消えたりできるわけないじゃん」


「転送魔法陣とか、召喚術式とかその可能性は無いですか?」


 少年も顎に手を当てて首を捻る。


 歳はジーオやカルラよりも大分下に見えるが、その瞳には明らかな知性が宿っている。


「先入観になったら申し訳ないのだけど、以前百獣姫シアンと(まみ)えた時、彼女は何もないところから狼型の魔物を出して、その後自身もグニャリと空間を歪めて消えたよ」


 カルラは大きくため息を吐く。


「先入観も何もそれじゃん。思いっきり」


「例えば契約召喚の類でしょうか?契約をした使い魔を瞬時に喚び出せる……ような」


 カルラは呆れ顔で少年を見る。


「じゃあシアンってのはどうやって消えたの?」


 少年はニコリとカルラに微笑む。


「そこはお知恵を拝借出来たら、と。勿論単純な空間転移と言う可能性も否定できませんし」


「……そんな理不尽。どうすりゃいいのよ」


「ラータの昔から、魔法とは彼ら上位魔族の御業の後追いですからね。でも『知の極地』とまで称されるカルラさんならどうにかできるんじゃありませんか?」


「イヤミな子供~」

 

 眉を寄せて少年を見るカルラを(たしな)めるジーオ。


「とにかく、自然発生でないのなら何らかの意図があるはずだし、何か手がかりがあるかもしれない。協力して探索を進めよう」


「はーい」

「はいっ!」



 ジーオは元気に返事をする少年を見てニコリと笑う。


「期待してるよ、ナイルくんも」


「はいっ!頑張ります」


 ナイルと呼ばれた少年はピッと敬礼の真似事をする。




◇◇◇


「ふーむ、見たところ隠し部屋も何も無いみたいだな」


 イズミを救う方法。


 大賢者ゼルの足跡を求め、我が家の家捜し(やさがし)をして一息をつくナシュア。


「……ちゃんと片付けてくれんすよね?」


 部屋の真ん中に移動された本棚や、散らばる本。壁に立てかけられたベッドなどを眺めながらひきつった笑みを浮かべると、ナシュアは面倒くさそうな顔をした。


「あ?自分の家くらい自分で片づけろや。ガキじゃねぇんだから」


 何という理不尽。


「そりゃ俺が汚したなら自分で片づけるけどさ……」


 口を尖らせて理不尽を糾弾していると、横に座ったハクがケラケラと笑う。


「あはは、シロウ無駄無駄。彼に理屈を説くくらいならイノシシに説法した方がよっぽど有意義だよ」


 ナシュアはハクをきっと睨む。


「うるせぇ。色気付きやがってくそ蛇が」


「はぁー?意味わかんない」


 そう言えば最初ナシュアをイズミに紹介された時に『珍獣枠』って言ってたな、珍獣と神獣の言い争いか、と思い1人でクスリとすると2人から睨まれる。


「何笑ってんだよ」


「いや、別に」


 ナシュアは腕を組んで溜め息を吐く。


「王都にあるジジイの家も軒並み手掛かり無しなんだよな。ジジイが死んでから4年、合間を見て調べたが何の手掛かりもねぇ」


「知恵の樹で何か分からないかな?」


「何度か行ったが特に。そもそも四極天でも虹等級でも無い俺をあの機密の固まりの様な部屋に入れるとは思えんな」


「そっかぁ。地位も肩書きも無いナシュアなんて、どこぞの馬の骨だもんね」


「あぁ?」


 俺も首を捻る。


 相変わらずベッドは壁に立て掛けられていたので、首を真横に捻るとまるで普通に置かれているように見える。まぁ、どうでもいいか。


 と、思って少し閃く。


「理屈は知らないけど、知恵の樹って場所はあらゆる文字の集まる場所なんだろ?前にジーオが言ってた。『この国では本当の秘密は文字に残さない』……って」


 ハクはコクリと頷く。


「……うん。それが?」


「言葉で残している可能性は?……魔王を救うなんて目的だから、少し形を変えて、分かる人にしか分からないように。例えば……俺と、ナシュアにとか」


「もしかすると、それがお前が知らない事の『意図』、ってやつかもな」


 ナシュアはニヤリと笑う。


「もしかすると答えは俺とお前の中……となると、ここにも王都にも暫く用はねぇな。修行がてら旅に出るぞ」


「また急だね、君は」


「急で結構だろ。成長速度が速いなら、尚更何でもかんでもどんどん経験するべきなんだよ。分かってんのか?いつかジーオやカルラとも戦わなくちゃならん可能性もあるんだぞ?」


 言われて少し固まる。


 今まであまり考えなかったのか、考えないようにしていたのか。


 カルラはともかく、ジーオにとっての最優先は国であり国民だ。ナシュアが抜けると言って尚折れないと言うことは、ジーオはイズミを倒すつもりなのだ。


 何年間かともに冒険した仲間よりも国を選ぶ。一国の主としては当たり前の判断なのだろう。


「悪いがさすがの俺様もあの2人同時はちょっとキツい。誰かがどっちか相手してくれると助かるんだがなぁ~」


 わざとらしくニヤニヤしながら俺をチラ見するナシュア。


「……わかってる。任せろ!」


「おっ、言ったな?ハク、聞いたな?」


「うん、聞いた聞いた。四極天超えるってさ」


 嬉しそうにハクは笑う。


「それは言ってねぇ」


 ナシュアは笑いながら俺の背中をバシバシ叩く。


「同じ様なもんだろ。取りあえずいろんな国の猛者が集まってるらしいアルバに行こうと思うが、どっか寄りたいところあるば?」


 俺はハクと顔を見合わせる。


 何か語尾がおかしいが当然無視だ。


「ミニル地方ってとこの、シェリーの森って遠い?」


 イズミからの手紙にあった、小さい魔物の暮らす小さい村。


 何故かナシュアは眉を顰めて露骨に嫌な顔をする。


「てめぇ俺の事馬鹿にしてんな?これでも王立大主席だっつーの。この低学歴が。シェリーの森の最寄りがアルバだろうが」


「えっ、マジで?」


「あはは、ちょうどいいじゃん。じゃあそこ行こう!」


 ハクはピョンと椅子から降りると、楽しそうに笑う。


 イズミが手紙に書いてくれた村。


 きっとそれを想像して、笑う。


「楽しみだね、シロウ」


「おう、だな」


 


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