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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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緊急依頼・デストリギス討伐

◇◇◇


「無知と(そし)られるのを承知で聞くけどさ、デストリギスって強いの?」


 お土産に買ったエビ煎餅をサクサクと食べながらハクは頷く。


「まぁ、今の君よりは強いだろうね。村全体でなけなしの蓄えをかき集めて緊急依頼をするくらいには強いよ」


「まじか」


「でも結局の所個体差もあるからさ。人間だって君みたいなのからイズミやナシュアみたいなのまでいるだろ?」


 例えが少しむかついたが、なるほどと納得してしまう。


 依頼を受託する事で依頼書から詳細が浮き出てくる魔法か何かのようで、ダストロ村の地図やデストリギスって魔物の情報、そして村人からの嘆願書が追加された。

 

 それによると、デストリギスとは漆黒の鎧とも称される固い外骨格を持つ、サソリに似た大型の生物だそうだ。元来夜行性であり、基本的にはつがいで行動をするらしい。今までも夜に村から少し離れた沢での目撃情報はあったが年に一度あるか無いかと言う頻度の話だったそうだ。


 年に一度とは言え、それだけ大型の魔物が村の近くに生息しているとなるととっくの昔に討伐要請があってもおかしくは無い。それでも村人が脅威と思わなかったのは、その名と風貌にそぐわずデストリギスが好戦的な性格で無く、村に近づいてこないからだった。


 だが、デストリギスは村を襲った。


 ある昼下がり、一匹のデストリギスが――



 と、申し訳ないのだが長いのでそこで読むのをやめた。


「とりあえず、その大サソリモドキを倒せばいいんだよな?」


「うん。そーだね。まぁ、どうにかなるよ。あ、援軍頼む?ナシュア辺り暇してるんじゃない?」



 かつての四極天ナシュアは、イズミを魔王として討伐対象とする事を良しとせず地位や財産を蹴って四極天を降りたそうだ。


 二人欠けた四極天はそのうち改名するのか、それとも解散するのかと考えたが別に今考えなくてもいいことな事にすぐに気が付く。


「いや、いいや。……元はと言えば俺がカッとなって依頼書千切ったんだからさ。そのケツ拭くのに人頼ってたら格好悪くてイズミに笑われちまうよ」


「あれ?僕は?」


「お前は蛇だからノーカンだろ」


「あはは、何だそれ。別にいいけどさ。じゃあさっそくダストロに行こうか。別に追われていない事が分かったから普通に魔法で行こうか」


 そう言うと唐突にピョンと俺の背中に飛び乗ってくるハク。


「うおっ、何だよ急に」


「ん?あ、ごめん。蛇の姿の癖でさ」


 珍しく照れ笑いをするハク。



 あぁ、なるほど。蛇モードの時はいつも絡みついてるもんな。


 と、人型で想像するとなかなか背徳的な絵面だ。


 ほんの一瞬考えただけなのだが、それを見透かすようにニヤニヤとハクは俺を見る。


「あ、降りなかった方がいい?」


「うるせぇな。早く飛べよ」


「あちゃあ、図星か。イズミに言ってやろ」


「黙れ」


◇◇◇


 田舎町ダストロに着く。


 まさに、あっという間に。


「これ馬車とかいらねーよな……」


 着くなりエビ煎餅をサクサクと補給するハク。


「そうでも無いよ。割と疲れるんだよね、これ。少なく見積もってもエビフライ10本分はエネルギー使うね」


「そんなにか……」


 と、乗ってみたものの意外に安上がりでびっくりした。


 軽く村を見渡すと、田舎町とは言うが俺の記憶の中のカカポ村より遥かに広く綺麗だった。


「カカポ村ってやっぱり田舎だったんだなぁ」


「今更?僕の知る限りでも結構な僻地だよ、あそこ」


 村が滅ぶまでカカポ村から出た事は無かったし、爺ちゃんに拾われてからもグズーリの街から出たことはほとんどないから知らなかった。本当に知らない事ばかりだ。



「何笑ってんの?」


 言われるまで笑っている事に気付かずに口を覆う。


「いや、こんな状況であれなんだけどさ。……色んな所見られて楽しいなって」


 その言葉にハクは呆れ顔でくるりと一回りする。


「イズミがいたらもっと楽しいよ。ていうかさ、割とずっとイズミは君を誘ってただろ?君が一人卑屈にイズミから距離を取っていただけだよ」


「……わかってるっつの。だから頑張ってるんだよ、今更かもしんねーけど」


「努力に今更なんてない、と先人の言葉を伝えておくよ。さて、そろそろ依頼人の所行こうよ。さして名産の食べ物があるわけでもなさそうだし」


「失礼なやつだなぁ」



◇◇◇


 田舎町ダストロから少し離れた沢を越えた森の更に奥にオオサソリモドキことデストリギスの生息地がある。広大な森に点在して生息し、本来は人の気配を感じると彼らから距離を取る為人が遭遇することは殆ど無い。


 森の奥地、鬱蒼と茂る木々が日を遮り昼にもかかわらず薄暗いその場所に、本来は点在して生息しているはずのデストリギスが20……30匹と集まっていた。



 デストリギス達の視線は樹上の一点に注がれ、横に長く伸びた枝には百獣姫シアンが腰を掛けている。


「魔王様の言いつけ破った人~」


 シアンは自身の右手を挙げて、デストリギス達に挙手を促す。


 ギィギィと重厚な古びた扉が開くときのような音を立てて、デストリギス達は何かを告げるが、それがシアンの気に障ったようだった。


「理由があれば破っていい言いつけなんて無いよ」


 シアンの言葉にデストリギス達はシンと静まり返る。


「昼は人の世界、夜は魔物たちの世界。かつての魔王様は人の王とそう取り決めたんだ。知らない人、いないよね?」


 デストリギス達の反応を見て、満足気に頷くとにっこりと笑う。


「知ってるならいいの。要するに私が言いたいのは、報復するなら正々堂々夜に行けって言う事。川沿いに咲いた綺麗なお花を見に行っただけで殺されたって言うその子の仇、討ちたいんでしょ?」


 ギィギィとまた扉の様な音が何十も何重にも折り重なって響く。


「その意気やよし……ってやつだね!私は手を貸せないけど、応援してるね」


 と言って去ろうとして、顎に手を当てて考える。


「あっ、そうそう。挙手の続き。魔王様の言いつけ破った人~」


 ニコリと笑い再度挙手を促すと、群れの中の一匹がギィと小さく鳴く。


 次の瞬間その個体の内部から巨大な熊が現れると、黒く固い外骨格を爆散させる。


 辺りに体液が飛び散る。



「人間相手とは言え、魔王様が誓ったんだ。勝手な感情で泥を塗らないでくれる?」



 熊は手をペロリと舐めたかと思うと、ぐにゃりと歪んだ空間に消える。


シアンは空を指さしてまたにこにこと笑顔に戻る。


「二日後。次の新月にしようか。頑張って!」


 そう言うと、シアンはスッと消える。


 残された無数のデストリギス達はギィギィと昂った鳴き声を上げた――。

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