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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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光属性の無駄遣い

◇◇◇


「イズミの本当の属性は闇属性なんだ」



 降り立った草原から少し歩いた森の中で魔導式調合釜『ホムラ壱式』を展開しポーションを抽出していると、空き時間に神獣ハクはそう言った。


「へぇ。だから?」


 視線もやらずにポーション瓶を磨きながら答えると、ハクは不服そうな顔をする。



「へぇって。……興味無いのかい」


「興味ないっつーかさ。何?納得しろって?『なるほど、魔王だからやっぱり闇属性なのか』って?」


 後から思うと、その一言でハクは俺の言いたい事がわかっていたようなのだが、器の小さい俺は苛立ちをそのまま口に出してしまう。


「俺が『光属性』だから勇者で?イズミが『闇属性』だから魔王だって?誰が決めたんだよ。光属性の薬師とか、闇属性の勇者がいちゃいけないのかよ」


「……うー、ごめん。そう言うつもりじゃなかったんだよ。ごめん」


 珍しくしゅんとして口をつぐむハクを見て急に罪悪感が芽生える。


「悪い、わかってる」


 ハクが言うには、彼がイズミに常に纏わりついている事により彼女の主属性を偽装していたようだ。ハクの主属性が風なのだそうだ。


 なるほど、確かトルイの森薬草乱獲事件の時に『ハク、行ける?』とか聞いていた様な気がしないでもない。


「一応イズミの名誉の為に言っておくけど、極端に難しい魔法以外は大概使えるからね。……治癒は使えないけど」


「それはやっぱり闇属性だから?」


「そうなるね」


 ハクはコクリと頷く。


 ポーションを瓶に詰めながら疑問が浮かぶ。


「その偽装は、お前のアイディア?」


「まさか。そもそも僕その内なる魔力とかって概念自体知らなかったもん。君ら人間が定義付けたものだろ、それ?」


「……じゃあ誰が」


 と、言いかけてそんなの一人しかいない事に気が付き、そしてハクの答えもやはりそれと同じだった。


「ゼルだよ」


「爺ちゃんか……」



 爺ちゃんこと大賢者ゼルは、ナシュアによりカカポ村から救われた俺とイズミを引き取ってくれた。


 と言っても、イズミは割とすぐにナシュアと共に王都へと行く事になったのだが、その後3年前に亡くなる迄家族の様に俺を育ててくれた。


 3年前、王都に出かけると言って出掛けたまま、旅先で息を引き取った。


 特に外傷も、持病も無かったがかなりの高齢だった事もあり特に不審死と言う訳では無いと聞いている。


「……爺ちゃんは、イズミをどうかしようとしてくれていたのか?」


 魔王と知り、闇の魔力を隠蔽し、勇者として育て、……もしかしてその先があるのかも知れない。


 ハクも神妙な顔で俺を見ている。


「大賢者とも呼ばれた彼なら有り得るかも。僕らの世界にも名が通っている程の男だからね、彼は」


 キュッとポーション瓶の蓋を締めると同時に口元が弛んでいるのに気づく。


「……イズミを救えるかもしれないんだな」



「それも君の推論だけどね」


「ははは!それでも何にも無いより遥かに良いだろ。やる気出てきたぞ~」


「おっと、じゃあ丁度いいね。お客さんだよ」



 まるで他人事の様に言うハクの視線の先を見ると、グゲゲとうめき声をあげて土の様な色をした小型の亜人が4匹俺達の様子を窺っていた。


「身なりからするとヌーゴブリンだね。彼らが居るって事は、王都から南……ダンテロ地方か。あははは、我ながら結構飛んだねぇ」


 ケラケラと笑うハク。


 ゴブリンたちはお手製の鈍器を構えてじりじりと遠巻きに俺達を窺っている。


「手、貸そうかぁ?」


 イズミがいなくなって1年間、稽古や勉強をしてきたとは言えたったの1年間だ。


 歴戦の戦士の様に十年二十年研鑚を積んできているわけでは無い。正に付け焼刃とか生兵法と言う言葉がそのまま当てはまるだろう。ハクがニヤニヤと提案してくるのもそう言う事だ。


 この一年間の間で、ギルドの等級は『藍』から一つ上がって『青』になったが、別に戦功とか武勲とかでは無く、とっても便利な二層式真空釜『ホムラ壱式』の開発・登録に依るものである。


 ゴブリン達はジリジリと間合いを詰める。


 よく見ると後ろに後詰が4匹いる。合計8匹の大所帯だ。


 ニヤニヤと感じ悪く笑うハクにニヤリと笑みを返す。



「問題ない。俺には……とっておきがある。究極根源究極光魔法……ホムラ零式がな」


 上に向けた左掌の少し上に右掌をかざし、バチバチっと魔力を迸らせるとハクは『へぇ』と感心した様子で俺を見る。


 何となくノリで究極を二回言ってしまったので、次からは気を付けないといけない。


 ゴブリン達のにじり寄りがいったん止まる。


 ギギっと低い声で合図を出すと、樹上にもゴブリンは展開していた。


 ひーふーみーとこちらも4匹。


 合計12匹。


 地上部隊は扇状に距離を詰めていく。



 冷静に考えてみると、初めての戦闘だ。


 でも不思議と怖くは無い。


『ギギギッ』と大きく開いた口に涎の糸を引きながらリーダーと思われるゴブリンが叫ぶ。


 始まる。


「ハク!掴まってろ!」


「はいよ~」


 シュルっと俺に巻きつく神獣。


 声を上げて襲い掛かるゴブリンの群れ。


 俺の両手の間に迸る魔力。


「光魔法ってやつを見せてやるぜ!ホムラ……零式!」



 次の瞬間、まるで太陽が生まれ落ちたかのような眩い光が森を包んだ。



◇◇◇



「はぁはぁはぁ……、はは……ははは!成功、大成功だな!」


 猛ダッシュで森を抜け、息を切らせてまた座り込む俺をおなじみの白い目で見る白蛇のハクさん。



「……何あれ」


「はぁ……はぁ。あれ?言っただろ?光魔法。『ホムラ零式』」


「うん、言ったね。クソ眩しかったんだけど。何なのあれ」


「だから光魔法」


 要領を得ない会話に苛立ち始める神獣。


「だから効果は?」


 俺は得意満面で答える。


「超眩しい」


「……あっそ。少し期待した僕が馬鹿みたいだよ。もっと派手な魔法で殲滅するのかと思ったのに」


 ハクが残念そうにため息を吐く。


「別に殲滅するほどの事されてねーだろ。ただ囲まれただけなんだから。街でゴロツキに絡まれたからって殺さないだろ?それと一緒だよ」


「そう言うものかねぇ」


「平和に済むならそれが一番だろ。それにしても流石伝説の光属性だな、熱を伴わない光って結構重宝するんじゃないか?」


「……うーん。別にいいんだけどさぁ。もっと派手にわかりやすく凄い魔法にしなよ」



「別にお前を楽しませる為に戦うんじゃねーから」


「無駄使いだねぇ、光属性の。ゼルもさ、イズミだけでなくシロウの事もちゃんと検査しておけばよかったのにね。そうすればもっと色々教えて貰えてたんだから」


「流石にそれは望みすぎだろ。今でも十分すぎる程教えてもらってるよ」


 と、自分で言って違和感を覚える。


「……本当に、爺ちゃんは知らなかったのか?」


「どういう事?現に僕やイズミだってカルラの家で調べる迄知らなかったじゃないか。多分ナシュアだって」



「あー、だよなぁ。……うん」


 俺は腕を組んで頭を捻る。


 答えなんて出はしないのだが。





 




 






 



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