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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
魔王と薬売り

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新たな勇者の物語、終わり。

◇◇◇


翌日、城のバルコニーを望む城前広場は沢山の人で溢れていた。


「……おぉ、すげぇ人だな」


 バルコニーの袖から広場を覗き、感心する俺に白い目を向ける白蛇のハク。


「これからそのすげぇ人の前で演説するんだけどね、君が」


「言うなよ、ただでさえ人見知りであがり症なんだから」


 これから自分がやろうとする事を思うと、既に心臓はバクバクして、手汗はびっしょりで、足は震えている。 



「イズミだってそうだよ」


 呆れ顔のままハクは言った。


 確かに子供の頃からそうだった。


 大人と話すのも苦手で、人が多いのも苦手。同年代なんて村には俺しかいなかったし、こっちに来てからもキャーキャー言われるのを嫌がっていた。


 寧ろ俺はガキの頃平気だったんだよな。


 俺はニヤリと笑う。


「サンキュー。何とか行けそうだ」


「別になにもして無いじゃん。変なやつ」


 気のせいでなければ少し嬉しそうに見えた。



「思ったより平気そうだね」


 ビシッとしたフォーマルな格好でジーオが現れる。


「まぁ、なるようになれっす」


 引きつった笑いを見せると、ジーオは微笑みながら演説の草案を差し出した。


「これを元に話してくれればいいよ。僕もフォローするから」


「あざっす」


 高級そうな金の箔押しがされた紙を開く。


 ざっくり言うと、『運命のいたずらか同郷の友は魔王だった。友として、イズミの過ちは俺が止め、無辜の民の命を奪った罪は償わせなければならない。皆が安心して暮らせる未来のために、どうか力を貸して欲しい』……てな感じだ。


 読んでいて自然に眉が寄ってしまい、ハクに指摘される。


「シロー、眉。眉間」


 にっこりと笑ってみる。


「問題ない」


 そうこうするうちにバルコニーでお偉いさんの話が終わり、拍手と歓声が響く。


「さ、行こう」


 ジーオに促されてバルコニーに出る。


 目の前に広がる人、人、人。


 思わず小声で『うおぉ』と唸り声が出る。


 どういう宣伝をしているのか知らないが、集まった人々は俺の事を知っている様で時折俺の名前が聞こえる。


 ジーオはこういう場に慣れている様子で、涼し気な笑みを浮かべている。


 スッと短く息を吸い込むと、ジーオは声を上げる。


「ここに集まってくれた我が国民達よ。今日は新たな伝説の始まりとなるだろう。どうか、皆もその証人となって欲しい。魔王を倒す為に立ち上がった、光の勇者……シロウ・ホムラ。新たな勇者の物語の始まりだ!」


 ワッと地鳴りのような歓声が上がり、俺の名前のシュプレヒコールが起こる。


 少し間を置いて、コールの鎮静化を待った後口を開く。


「あ……、えー……、はっ……初めまして。只今ご紹介に預かりましたシロウ・ホムラです」


 風魔法を用いた音声増幅魔法が用意されている。


 用意された文章を持つ手が震えている。



「皆さんご存じかもしれないっすけど、俺はイズミの幼馴染です。ガキの頃から、ずっと……ずっと知ってます。そんなイズミが俺達を騙して魔王だったなんて……」


 言葉に詰まる。


 手と、口が震える。


 そんな俺を心配そうな目でジーオは見る。


 俺は一度グッと歯を食いしばる。


 わかってる。


 この震えは緊張じゃない。



 ――怒りだ。



「あんたら目が腐ってるんじゃねーのか?」



 ジーオはきょとんとした顔で俺を見る。


 広場に集まった聴衆はシンと静まり返る。


 俺は大きく息を吸い込んで畳みかける。


「イズミはなぁ。村が滅んだ8年前に自分が魔王の生まれ変わりだって知ったんだよ。自分のせいで村も滅んだって、きっとずっと気にしてたんだ。それなのに自分を勇者だなんだって祭り上げられてさ。そんなやつらの期待に応えようってさ、慣れもしない笑顔で頑張ってたんだよ!きっと!全部想像だけどさ!」


「シロウくん!君は一体何を……」


 俺を制止しようとしたジーオ時期国王の手はバチっと見えない障壁に阻まれる。


「貸しだよ、シロウ。一分くらいは持たせてあげるよ」


 白蛇のハクが楽しそうに笑う。どうやら彼が得意の風魔法で障壁を張ったようだ。


 粋な気遣いにニヤリとしてしまう。


「あいつが好きで魔王になったのか!?あいつが好き好んで殺したのか!?聞いたぞ?力が暴走して、街を壊した直後にさ、あいつ人を助けに行ったんだって!?本当にバカかよ、あんたら。どこの魔王がそんな事するんだよ!」


 自分で言っていてもう悔しくて、悔しくて、涙が溢れてきた。


 実際に見てはいないけど、その光景が目に浮かぶ。


 失意と絶望の中で、それでも人を助けなきゃとふらふら歩くイズミの後ろ姿。


 そして、それに投げつけられる石と罵声。



「そしてそのお人よしのバカな魔王に石を投げたやつもいるんだってな?ふざけんじゃねぇっつーんだよ!お前ら皆バカだ。バカバカバカバーカ」


 ジーオが裏から愛刀を持ってこさせるのが視界の隅に映る。


「あっ、やばそう。そろそろ〆て~」


 気の抜けたハクの声にコクリと頷く。


「そこのバカ王子も!クソ議会も!俺なんかを勇者なんて呼ぶんじゃねぇ!勇者って言うのはな……イズミみたいなやつの事を言うんだよ!」



 言い終えて大きく息を吐く。


 正直少しスッとした。


「以上、ご清聴ありがとうございました」


 流石にジーオも呆れ顔で頭を抱えている。


「さて、逃げようか」


 ハクがシュルっと俺に巻き付く。


「オッケー、頼む」


 俺はジーオを見てニヤリと笑う。


「そんじゃ、新たな勇者の物語とやらは終わりって事で」


 静まり返った聴衆から沸き起こる地鳴りのような心地よいブーイングに見送られ、俺とハクは風魔法でバルコニーから飛び去った。



◇◇◇


「あははははっ、バカだね~君は。せっかくいいお屋敷に住んでちやほやされるチャンスだったのにね」


 特に行く当ても無く飛び去った先で、白蛇のハクはケラケラと楽しそうに笑った。


 そして、小心者の俺は今更ながら不安になってきてしまう。


 どことも知らぬ平原のど真ん中、草っぱらの上に座りながら天を仰ぐ。



「な、なぁ。俺罪に問われたりするかな?しないよな?」


「バカ王子ってのはどうかなぁ。侮辱罪とか国家反逆罪とかあるかもね。あははは。あー、おかし」


「おかしくねぇよ。ジーオ次期国王陛下の器の大きさに期待するしかねぇな」



「あっ、シロウ。そのジーオが呼んでるよ」


「うげぇ、そうかその謎通信があるのか。無視しろ、無視無視」


「はいよ~」



 

 イズミがいなくなって一年が経ち、世界は魔王を倒す為に新たな勇者達を送り出す。


 全ての魔力を司り、この世界の全ての生き物の命を吸い、不死なる命を持つ古の魔王。



 俺の幼馴染。



 一年間、稽古をして、本を読んで、魔法の修業もした。


『たった』一年間。


 何が出来るだろうか?と考えて、手に触れる草の感触に気が付く。


「とりあえず、ポーションでも作るかなぁ」


 今出来る事から、一歩ずつ。


 イズミの元へと届くように。


 いつか、あいつを救えるように。

 

 

 

 


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