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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
勇者と薬売り

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魔王との再会

◇◇◇


「……驚かないって言えば、嘘になるけど。ま、今まで通りでしょ」


 イズミを含め四極天の三人が知っている以上カルラにだけ黙っている理由も無い為、行きの移動中カルラにも打ち明ける事になった。


『勇者イズミ・キリガミヤは、実は魔王の生まれ変わりである、と』


「逆に納得だよ。だからシロくんが……、あっイズミこれは言っていいやつ?」


 念の為イズミに確認を取るとイズミは嬉しそうに頷く。


「うん、勿論」


 まだ何かあるのかと不安そうな顔をするジーオにクスリとしながらカルラは言葉を続ける。


「シロくんの主属性『光』なのよ。光属性なんて勇者のおとぎ話にしか出てこないじゃない?つまり、本来は彼が勇者って事でしょう」


 得意げに自説を説くカルラを白い目で見るジーオ。


「……勇者はイズミだ」


「それは勿論わかってるってば」



◇◇◇


 カルラとイズミの風魔法を用いた超高速移動により、数時間で交易都市シャヤルに到着した。


 黒のとんがり帽子をかぶり直し、両手を天に上げ背伸びをするカルラ。


「んん~、つっかれた」


「お疲れ様、カルラ」


 申し訳なさそうな笑顔で自身を(ねぎら)うイズミの肩にわざとドンとぶつかるカルラ。


「気にすんな。友達でしょ?」


 イズミは目を丸くする。


「……う、うん!」


 

 念の為、街から少し離れたところに着陸して周囲の索敵を行う。


「……さすがに罠じゃあないよねぇ」


「罠をかけるならもっとうまくやると思うんだ。ナシュアはどう思う?」


「全員参加が条件じゃないんだろ?なら俺外から警戒しとくぜ」


「そうね。じゃ私は中から警戒と索敵にリソース割くようにする。話し合いとやらは二人に任せるわ」



 イズミは3人を眺めてニコニコと笑っている。


「……あ?何笑ってんだよてめぇ」


「あっ、ごめん。……みんな頼もしいな、って」


「はいはい、卑屈禁止。もうそのノリ終わり。一番頼りにしてんのはあんただっつーの」


 そう言ってまたわざと肩にドンとぶつかるが、イズミは微動だにせず両手で小さくガッツポーズをする。


「ん、がんばる」



 そして、一週間後。シアンの指定日が訪れる――。



◇◇◇


 広場の中央に作られたのは煌びやかに宝飾された石造りの巨大な円卓。そこには7脚の椅子がおかれており、そのうちの一つは冗談のように大きなサイズ――、ナギオウ用だろう。


 広場は憲兵や、街の富豪の私兵などが動線整理を行う程の凄まじい賑わいを見せているが、その巨大な椅子はそこに座る誰かを想像させて恐怖を想起させる。


「イズミ様~!」「ジーオ様!!」「カルラちゃ~ん」


 ナシュアを除く四極天が席へと案内されるが、対面はまだ空席だった。


 円卓の周りは50メートル程度柵で覆われていて、その向こうは野次馬たちが群がっている。これから魔王に次ぐ魔族の頂点である四天王が現れると知っているのに、怖いもの見たさか四極天への信頼か、彼らはその場を離れない。


 まるで、何かのショーが始まるのを待つように、円卓を見守る。


 よく見ると、野次馬たちが群がっているのではなく柵の外は綺麗に区画分けされて座席まで置かれている事に気が付く。


 近くの席程座っている人の身なりが綺麗なので、恐らく席料を取っているだろう事が窺える。


「……やれやれ、こんな場面でもお金を取るのか」


 呆れ顔のジーオと、ケラケラと笑うカルラ。


「ま、確かに面白い見世物だと思うけどね。お金を払ってまで見たいかは別として」


『カルラちゃーん』の声援にニッコリと微笑み手を振るカルラ。


 カルラのファンもイズミと同様にほぼ男女均等に多いようだ。ジーオは9割女性、ナシュアはほぼ男。


 三人は席に着かずに机の前で相手方の到着を待つ。チラリと近くの建物の屋根を見ると、そこにナシュアの姿。上方から広場全体の警戒をしており、何かあればいつでも介入できる様に身構えている。


 少しして、反対側の人混みがにわかに静まり返り、静寂は広場全体に伝播した。


 カツカツと踊るような靴音を鳴らしながら、一人の少女と付き人の様な男が現れた。


 靴音は一人分。男は足音がしない。


 引きずるような燕尾服のその男は少女に日傘をさしながら呆れ顔で進む。


「やれやれ、全く。いつまでこのような真似をさせるんでしょうねぇ」


「はいはい、居候が文句言わないの。あっ、ジーオ。元気~」


 ジーオを見つけるなり元気よく手を振るが、隣のイズミが視界に入るとピタリと動きが止まる。


「……ま」


 大きく開いた瞳をウルウルと潤ませて言葉に詰まるシアンにヴィクリムが何やら耳打ちをする。


「……わかってるって」


 シアンはペコリとお辞儀をする。


「お久しぶりです」


 暫くして、下げた頭をあげてニッコリと微笑む。


「勇者サマ」


「ウヒヒヒ、ではではどうぞおかけください。おいしいお茶も淹れますのでね」


 日傘を閉じてシアンの椅子を引く。


 すっかり使用人風の所作が板についてきた。


 イズミとジーオは席に着き、カルラは椅子を少し後ろに下げて二人の後方に座ると腕を組んで俯き目を閉じる。



 ヴィクリムがチリンチリンと鈴を鳴らすと、人数分のお茶とティーポッドが運ばれてくる。


 ただお金で雇われているだけであろう給仕の少女の手は震えており、ジーオは安心させるようにニコリと微笑む。


 少女がペコリと頭を下げて机を離れると、不機嫌そうにイズミは口を開く。


「それで?何の用?この周りの人達は人質のつもり?」


「あはははっ、まっさかぁ。そんな事しませんって。私達はこの街の人達に危害を加えませんよ、魔王様に誓って」


「……私達は、ね。四天王とやら一人足りないみたいだけど、その人がやるの?」


「その人」


 イズミがそう呼ぶのを聞いて、シアンはクスリと笑う。


「何がおかしいの」


 シアンは左手を口元にやりニヤニヤと笑う。


「え~?だって『その人』って。……魔物ですよ?あはは」


「揚げ足取りはいいから続きを言ってくれないかな?残る一人の四天王が何かを企んでるんじゃないのかって言う話だよ」


 ニコニコしながらも強い口調でジーオが質問を続ける。


「その心配はいらないですよ。四天王最後の一人……『爆心鬼(ばくしんき)』ナギオウはそう言う騙し討ちとかが一番嫌いな性格ですから。だからまずあり得ませんね、魔王様に誓って」


 その言葉でまたイズミに苛立ちが募る。


「……魔王なんかに誓われたって信用できないわ」


「そうですか。私達にとっては最大級の誓いなんですけどね。おいおいわかっていただけると思いますけど……まぁとにかく、私達がこの場に集まっている皆さんに手を出す事は魔王様に誓ってありませんよ」



 イズミはまだ『信用できないわ』と言った表情をしている。


 次の瞬間、周囲の音が少し小さくなる。



「音。気にしないで良いから」


 目を瞑ったままカルラが呟く。風魔法の障壁で防音処置をしたようだ。


「ウヒヒ、お気遣いどうもお美しいお嬢さん」


 カルラは目を瞑ったまま返事を返さない。


「あっ、自己紹介がまだでしたっけ?私はシアン。百獣姫シアンって呼ばれてまーす」


「ワタクシはヴィクリム。獄殺卿と呼ばれてましたが、今は城も持たない居候の身でございます。ウヒヒヒ」


「イズミ、ジーオ、カルラ。あっちの上にいるおじさんがナシュア」


 不愛想にそれぞれを指差して自己紹介を終えるイズミ。


「さて、場も和んだところだしお話を始めましょっか。イズミ様って呼べばいいですか?呼んでいいですか?昔のお姿も凛々しかったけど、今のお姿もかっわいい~」


 興奮した様子で身もだえるシアンを制止するヴィクリム。


「ちょっとちょっと……、便宜上勇者サマって呼んでおかないと。もしかしたらまだ……」


「あぁ、もう知っている。お気遣いありがとう」


 ジーオの言葉にため息を吐き、淹れられた紅茶に口を付ける。


「さようでございますか。なら結構。ウヒヒヒ」



「……茶番はもういいわ。目的は?」


 イズミの言葉にシアンは困惑する。


「えっ、言ってませんでしたっけ?イズミ様とおしゃべりしたかったので。お怒りのお顔も凛々しいですけど、そろそろ笑ってるお顔も見たいなぁ。何でそんなにトゲトゲしてるんですか?可愛いのに」



 バン!と机を破壊せんばかりの力で叩き、イズミは立ち上がり声を上げる。


「何でって……!?あなた達が村を滅ぼしたんでしょ!?」


「私達っていうか、あいつが勝手にやったんですよ?名前何だっけなぁ、うーん……」


 腕を組み、首を捻るシアンにヴィクリムが耳打ちをする。


「……ジギですよ。『魔先鋒ジギ』」


 パンと手のひらを叩き、すっきりした笑顔を見せる。


「あぁ、それ!そいつ!ただお迎えに上がればよかったのに、そいつが勝手に村襲ったんですよ!あはは、弱い奴程強がるっていうか……人間にもいますよね?犬猫とか無駄に殺すやつ。そんな感じです」


 説明に到底納得できない様子のイズミを見て、寂しそうにシアンは笑う。


「イズミ様。あなたは人間で無く魔王なんですよ?」


「ウヒヒッ、人間でも例があるでしょう?狼に育てられた人間が自分を狼の様に思って――」


「もう黙って」


 イズミはハクに目配せをすると、ハクは決意したように口を開ける。


 ハクアの剣の柄が見える。


「ジーオ、ごめん。もしもの時はお願い」


「イズ――」


 ジーオがイズミを制止するよりも速く、イズミはハクアの剣を抜く。


 シアンが残念そうに何かを呟く。


『やっぱりだめかぁ』


 

 目にもとまらぬ速度で二人を横薙ぎに一閃しようとした次の瞬間――、シアンの周りの空間が歪み、鬼のように巨大な巨躯を誇るナギオウが円卓に現れる。

 ナギオウはシアンを守るように左手でハクアの剣を受け止める。血が滴り、円卓を濡らす。

「剣、しまいんさい。……お久しぶりですなぁ、魔王様」


 突如現れた如何にも魔物然としたその巨躯に、広場は騒然となる。

 

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