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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
勇者と薬売り

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疑惑の芽吹き

◇◇◇


 かつて魔王を封印する為に命を落とした偉大なる勇者は、唯一無二の光魔法の使い手だったと言う。それから300年以上の時を経ても、ただの一人たりとも光魔法の使い手は現れていないそうだ。


「……だから私も実際にこの色を見るのは初めてなんだよね、理屈上は知ってたけど」


 机の上に並ぶ小瓶に入った光り輝く液体を眺めながら四極天カルラは引きつった笑顔を見せた。


『並ぶ』の言葉通り、机の上には光り輝く液体の入った瓶が9本並んでいて、その隣に血を明るくしたような真っ赤な瓶と、何も入っていないかのような透明な液体が入った瓶が並ぶ。


 製品には絶対の自信を持つカルラだが、念の為と9回試されたのだ。そしてこの1本で家が建つと言っていた。本当かどうかはわからないが。



 カルラはイズミを見る。


「イズミはどう思う?」


 眉を寄せて半信半疑のカルラとは対照的に、イズミはにっこりと満面の笑顔だ。


「シロウはすごいな、って」


 カルラは呆れ顔でため息を吐く。


「神獣ハク。君は?」


 ハクも呆れ顔でため息を吐く。


「そもそもその液体は神が作ったものじゃないだろ?君が作ったんだ。それが何色に変わろうとも僕は興味無いね」


 言葉に詰まったカルラは羊のようなフードを目深に被る。


 そして、少しの間ブツブツと言ったかと思うとおもむろにフードを上げてニッコリと笑う。



「ま、いっか。何にせよ貴重なサンプルだね。じゃあ授業を続けるよ。……と言っても、光属性の人の魔力の使い方は机上の空論だからさ、ズレがあったら都度修正の感じで行こう」


「うっす」


 

 そして、カルラによるシロウへの魔法入門講座が始まる。


 育ての親である大賢者ゼルからは魔法のまの字も教わっていなかったが、日々の教えの中にそれらが散りばめられていたようで、思いの外理解は早かった。


「この携帯窯魔法に使う魔法は三つ。二層式の風魔法の檻、空気中の水蒸気を集める魔法、後は火の魔法。この三つの魔法の一つ一つを部品として考えて、釜魔法って言う一つの魔法を組み立てるんだよ。と言ってもそんなに難しく考える必要は無くて……」


 黒板を使いながらカルラはシロウとイズミに手順を細かく教えていく。もっとも、イズミは既にこの合成魔法を扱える為、彼女へはシロウへの教え方を教えているのだ。


 例えば、火の攻撃魔法を例にとっても、①火を生み出す②目標へ放出するの二つが合成されている合成魔法と言える。


 今度は一歩進んで、火の攻撃魔法を部品の一つと捉えればもう少し複雑な事ができる魔法が作れるというわけだ。


 そして、最後に申請書の書き方を教わる。


「これが受理されれば、君が作った魔法として登録されるよ」


「おぉ……、何か嬉しいっすね」


「名称は変えられないから気を付けてね。『言霊』って言ってさ、多くの人が使うほど魔法自体の強さも増していくから。はい、じゃあこの辺で四極天・カルラさんの魔法入門講座はおしまいっ!」


 シロウは深々と頭を下げる。


「ありがとうございました、師匠!」


 師匠呼びが意外に嬉しいようで、ニヤニヤした口元を隠して手を振るカルラ。


「あいあい、またね。シロくん」


 イズミもペコリと頭を下げる。


「お邪魔しました。ありがとね、カルラ」


「珍しいもの見せてもらったから全然いいよ~」



◇◇◇


「私の言った通りだったじゃん」


 カルラの屋敷からの帰り道、イズミは俺の服の袖を引き得意げにほほ笑んだ。


「何か言った通りだったっけ?」


 特にとぼけたつもりもなく、首を傾げるとイズミは言葉を続ける。


「シロウは勇者だって」


「あぁ、それか。『お前にとっての』って言ってなかったか?」


 それを聞いてイズミは嬉しそうににっこりと笑う。


「あ、それは覚えててくれてるんだ?」


「……別に、だよ。つーか、珍しい光属性だっただけで別に勇者なわけじゃねーだろ。そもそも勇者様は今俺の隣にいますし?」


「ん?そう?」


 わざとらしくきょろきょろと辺りを探すイズミ。


「……お前だよ、お前」


「そっか、私か」


 上機嫌にクルリとその場で一度回った後で、ピッと敬礼の真似をしてまた笑う。


「ふふ、伝説の勇者イズミ・キリガミヤです」


「……何の茶番だよ。酔ってんのか?どこに酔う要素があったんだよ」


「酔ってないもん。あっ、お祝いをしよう!家の人に頼んで豪勢な料理にしよっか!お酒も……」


「お前は酒はやめとけ」


 妙に上機嫌のイズミに手を焼きながら、シロウも屋敷へと戻る。



◇◇◇


 城の地下からいくつかの移動魔法陣を経てたどり着く、無尽蔵の書庫『知恵の樹』。


 古の魔法を基に作られているこの空間では、古今東西あらゆる書物の類が瞬時に検索できると言う。


 本の山の傍らに椅子を出して座り、ジーオはパラパラと高速で書物を捲る。


 討伐の旅がひと段落して、四天王への対応が議会の承認待ちの今、公務の合間を縫っては調べ物をしている。


 魔王の封印と、復活の予言について。


 四天王の一人、百獣姫シアンが言うには魔王は既に復活しているようだ。


『本当は魔王様に来てほしかった』


 彼女はそう言った。




 ――こんな事を思うなんて、本当にどうかしている。



 魔物をけしかけて、人間を50人殺す。


 何故、それで魔王が現れるというのか?見た所何等かの儀式と言うわけでもなさそうだった。


 魔物が暴れ、人間に被害が出れば現れるという意味か?


 ――例えば、僕の様に?



 黒蛇のノワも協力して書物を漁る。


 勇者と魔王の戦い。勇者はその身を犠牲にして魔王を封印したと言う。


「勇者・復活・予言」


 いくつもの古い書物を漁っていて、いくつかの新しい事実を知った。


「魔王・復活・予言」


 本が現れて、ジーオとノワはまたパラパラと書物を漁る。


 

 8年前、カカポ村は転生した勇者……イズミを抹殺する為に現れた魔物により滅ぼされたらしい。


 二人の生き残り、イズミ・キリガミヤとシロウ・ホムラ。


 ジーオは顔をしかめ、辛そうに本を捲る。



 調べれば調べる程、疑念の芽は育つ。


 カカポ村を襲った魔物達。


 飛躍した論理かも知れないが、芽は育つ。



 もしかして彼らは……、魔王を迎えに来たのでは無いか?、と。



 ジーオは歯ぎしりをしてバンと強く本を閉じる。


 本は消え、彼は大きくため息を吐く。


「……こんな事を考えるなんて、どうかしてる」






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