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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
勇者と薬売り

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疑念の芽

◇◇◇


 サラスラットの街は喜びに沸いた。


 王子自らが剣を振るい、街を恐怖の底に叩き落とした魔物を斬って捨てたからだ。勿論、先の犠牲の事もあるので、手放しには喜べ無いがジーオの安全宣言により、街は前を向き始めたと言える。


 魔王の配下の言葉を完全に信じるわけではないが、人々が平穏を取り戻せるなら利用しても良いのではないかと思う。万が一を考えて数日間街に逗留する事にする。


 相手は魔物だ。


 百獣姫シアンの口振りからすると、『魔王様』を呼び寄せる為に50人を犠牲にした惨劇を起こしたのだ。


 にこやかな笑顔で街の人々に挨拶をしながらも、ジーオの胸の奥には疑念の種が植え付けられたようだった。


 魔王様に来て欲しかった……と言った。


 ――甦ってはいるが、近くにはいないと言う事か?なぜ人間を50殺すと魔王が?何らかの儀式と言う事か?


 あのデカいのは知っている、と言った。


 ――誰の事だ?



 と、考えてしまってため息を吐く。


 相手は魔物だ。

 

 こう考えてしまっている時点で既に術中に落ちていると言えなくもない。


 こんな風に平和に見せておいて、また魔物が襲ってこない保証は無い。


 そして、確実に首を落としたはずの百獣姫が生きていた事も解せない。


 もっと速く斬れば斬れたか?


 いや、速度の問題では無さそうだ。



 ニコニコと笑顔を浮かべながら頭をかく。


「ノワはどう思う?」


「どの話?」


「どれでもいいよ」


「……変な質問。気にしない方がいいわ」



「どの話?」


「全部よ」


「相談しがいが無いなぁ」




◇◇◇


 生まれて初めて劇場で観るお芝居。


 内容は、偶然出会った男女が実は敵対する国同士の王子と姫だったと言う悲恋を描いたラブロマンスだった。


 何でも250年ほど前の実在の人物をモデルにしたお話らしい。


 決して結ばれることのない2人は、一度は身一つで駆け落ちをしようと試みるが叶わず、謀略により互いの事を思いながら自決して、天国で結ばれましたと言うお話。


「どうだった?」


 劇場に付属の喫茶店で飲み物をかき混ぜながらイズミは俺に問う。


「あ、あぁ。面白かったよ」


 変装用の眼鏡越しにジッと俺を見る。


「本当は?」


「死ななくてもいいんじゃね?って思った」



 忌憚なき俺の意見を聞き、興味深げにニヤニヤと笑う勇者イズミ。


「へぇ。じゃあシロウ王子ならあんな時どうするの?」


「なんじゃその無茶振り。……んー、偉大なるシロウ王子なら」


 腕を組み、首を捻って考える。



 芝居自体はともかくとして、観終わった後でああだこうだと意見を言い合うのは楽しいな。


 俺が首を捻っている間にイズミが俺の飲み物をもう一杯注文してくれているのが目に入る。どうやらまだまだ語らうつもりのようだ。


「俺なら……、相手の話も聞かずに死ぬのは無いかなぁ」


「相手の姫に会うのが禁止されてるのに?」


「監視を買収するなり鳩を飛ばすなり他にやりようはあると思うんだよな。もっとも、芝居だとその辺のやりとりを端折ってるだけかも知れないけどさ」


 俺の意見をニコニコと微笑みながら聞いているイズミ。


「……じゃあイズミ姫だったらどうされるんですかね?」



「私だったら?カルラに転送魔法陣作ってもらう」


「はい、カルラ無し」


 指をピッと立てて得意げな顔をしていたイズミは途端に困った顔をする。



「……ジーオに外交でどうにかしてもらう」


「当然ジーオも無し」


「じゃあナシュアに~……」


「はいはい、四極天無し」



 イズミも腕を組んで困った顔で首を傾げる。


 そして、少し考えた後で一人納得したように頷き呟く。



「うん、私なら……、待ってる……かな」



 眉を寄せて困り顔でイズミはそう呟き笑った。


 月明かりの差すバルコニーに出て、物憂げに空を眺めてため息を吐くイズミを想像して、妙に様になっているなと思った。


「……つーか、俺にも頼れよ。ポーションくらいなら持って行ってやるけど」


「だってシロウは……」


 イズミは言いかけて途中で何かに気付き言葉を止め、言い直す。


「あ、……うん。ありがと」


 そのまま暫く話をしていると、後ろから聞き覚えのある声がした。


「よう、ガキども。珍しいところで会うじゃねぇか」



 俺が振り返るより早くイズミが頬杖を突いてため息を吐いた。


「ははは、デートか?芝居よかったよな~、俺3回泣いたぜ」


 声の主は四極天の一人ナシュアだったが、意外にも小奇麗な正装をしていたので一瞬誰だかわからなかった。


 彼は特に断りもせずに俺の隣の席に座り、注文をする。


 頬杖を突き、それを不機嫌そうに眺めるイズミ。



「断り無く座る?普通」


「あぁ、悪い悪い。でもほら、感想とか言いたいじゃん?」


 イズミは大きくため息を吐く。


「うん、気持ちはわかる。じゃあ述べていいよ、2分くらいでまとまる?」


「まとまるか!飲み物すら来るか怪しいぞ」


 何のかんの言っても信頼しているのは伝わってくるので何となく俺も嬉しく思う。


「ナシュアさんはよく見るんすか?」


「んー、まぁたまにだな。今日はまだ2回目だ」


「ん?なんか会話おかしくないっすか。しかもそんなばっちり決めた服装で」


 今日は『まだ』2回目。


「がはは、細かい事気にする奴だな。まぁ、服装は礼儀だろ」


 そう言ってにやりと笑い襟をピッと引く。


「別にドレスコードないから気にしないでね、シロウ」


「あっ、そう言えば」


「あん?」


 ナシュアさんも爺ちゃんに育てられたってイズミが言っていた。……聞いて悪い事では無いと思うんだけど、何と聞こうか少し悩む。


 でも、いいか。


 ストレートに聞こう。


「ナシュアさんもゼル爺ちゃんに育てられたんですか?」


 少し驚いた顔をした後で、嬉しそうに笑い俺の頭をワシワシと撫でてくる。


「ははは、何だよ知らなかったのか。ジジイが王都にいる頃にな。まぁ、大分前だよ。だが兄弟みたいなもんだ、仲良くしようぜ。がははは!」


「……つーか、爺ちゃんが大賢者って呼ばれてたのも昨日知ったんすけど。普通の薬師の爺ちゃんだと思ってたっすよ」


「まぁ偏屈なジジイだったからなぁ。ふはは、でも懐かしいな。よし、飲もう!ジジイの悪口を酒に飲み明かそうぜ、兄弟!」


 イズミは本当に嫌そうな顔をして、追加でパンケーキを頼んだ。


「はぁ~、もう帰って~」


「ははは、妬くな妬くな」


「黙って~」















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