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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
勇者と薬売り

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胎動

◇◇◇


 8年前、村が魔物に滅ぼされて身寄りの無くなった俺を引き取ってくれた爺ちゃんは、実は偉大なる大賢者様だったらしい。


「そんな事言われてもなぁ。普通の爺ちゃんだったぞ、カカポ村にも普通にいそうな」


「でも私は知ってたわよ?シロウだって絶対に聞いていたと思うけど」


 俺は現れた爺ちゃん関連の本をめくりながら首を捻る。


「まぁ言われてみれば本棚に古代文字とか小難しい本は多いとは思うけどさ。俺他の薬師知らないからそんなもんなのかな~って感じもあるじゃん?つーか、お前も知ってたら教えろよ」


 口を尖らせる俺をチラリとみて不満げな顔をするイズミ。


「何て?あなたのお爺ちゃん大賢者よって?」


「あー、確かにそりゃ変だな」


「更に言うと昔はナシュアを育ててたんだってさ」


 それを聞いて楽しそうに笑うジーオ。


「ははは、なら君とナシュアは兄弟みたいなものだね」


 四極天の一人、『武の極地』ナシュア。


「まじか」


そこだけ聞くと非常に光栄な事なはずなのだが、何だろうこの得も言われぬ気持ちは。



 

「さて、そろそろ脱線から戻ろうか。何の本を探しに来たんだっけ?」


 パンパンと手を叩き、教師の様に俺たちを笑顔で諭すジーオ。



 古代文字の解説書か翻訳の補助になる様な本を探していたんだった。


 少し考えて、俺は手を伸ばし呟く。


◇◇◇


「いい本が見つかってよかったね。一冊でよかったの?」


 ニコニコと我が事のようにイズミは喜んでくれた。


 俺の手には一冊の本。大賢者ゼルが著した古代文字解読の入門書だ。


 ここ『知恵の樹』の書物は約10日程外への持ち出しが可能なようだ。日付が切れると自然に消えるので返却の必要はないとの事。中々に便利だ。


 なので、借りるのは一冊で十分。


「10日で読まなきゃいけないからな。俺はお前みたいに読むの速く無いもんで」


 イズミは俺と爺ちゃんの写真が載った6年前の新聞を持っている。


「ふふ、そっか」



「お目当ての書物が見つかったみたいでよかったよ」


 時間を取らせたにも関わらず、ジーオも全く嫌な顔をせずに微笑んでいる。基本的にいいやつだと思う。


「次の動きは決まった?」


 イズミの問いにジーオは腕を組んでため息を吐く。



「ちょっと意見が割れててね。逃走した獄殺卿の足取りも掴めないし、他の四天王の居所も未だ不明なまま。そもそもが、四天王の扱いをどうするか?と言う問題がまだ決定していない」


 四天王を倒すと魔王の封印が解ける。


 イズミもそう言っていた。


 なので、四天王よりも先に魔王を探して倒すべきか。ならばその間に被害が出たらどうするのか?と議会でも意見が割れているとジーオは言った。


 俺も腕を組んで首を傾げる。


「世界を救うってのに議会で話し合うんすか」


「そうだね。僕らは力を持ちすぎているからね」


 少し呆れたように笑い、イズミも面倒くさそうに眉を寄せた。


「面倒くさいわ。どれだけお金を使ったとかの細かい報告書もいるんだもん」


「面倒くさいって、それは大体いつも僕が作ってるけどね」


「誰が作っていようと面倒くさいには変わりないでしょ」



 ジーオはイズミとの議論を止めて、俺を見る。


「ま、兎に角今の議会は四天王より先に魔王を倒すべきとの堅実派が多数なんだ。なので、当面遠出は無いと思うよ」


「本当!?」


 イズミの明るい声が階段に響く。


「ふふふ、明日はどこに行きたい?」


「明日もかよ」


 

 俺の返答も気にせずにウキウキと階段を上る勇者イズミ。


「うん、明日も。折角のお休みなんだもん」


「もし彼が断わるなら僕がご一緒しようか?丁度劇場でいいお芝居もやっているよ」


「お芝居。ふふふ、いいね。行きたい」


 じゃあ――、とジーオが言葉を続けようとするとイズミはクルリと振り返り俺を見る。


「お芝居、行こ。決まり」


「決まりっすか」


「うん、決まり」


 ジーオは半ばイズミの答えを予想していた様で、呆れ顔で微笑む。


「それじゃチケット2枚用意しておくよ」


「ジーオも行くなら3枚でしょ。シロウ、いいよね?」


 勿論、断る理由など無い。


「こちらこそ、お邪魔になります」



 ジーオはこれから公務があるそうで、明日時間を取って王都観光をしてくれる事になった。


「それじゃ、また明日。迎えに行くよ」


「あんまり大仰な事はしないでよね。普通でいいから、普通で」


 ジーオはニッコリと俺とイズミを見送ってくれた。


「シロウくんもまた明日」


「うっす。お邪魔しましたっす」



 俺とイズミは城を後にする。


「ジーオさん、超いい人だな。イケメンで、王子で、いい人って……最強すぎだろ」



 イズミはジッと眉を寄せて俺を見る。


「……なんだよ」


「別に何でもないけど。あ、そうだ。折角の王都だからたまには私の家らしいところに顔でも出そうかな。シロウもおいでよ」


 そう言えば、王都にも家を貰っているとは聞いた事があるな。全く帰っていないとも聞いたことはあるが。


 毒を喰らわば皿までってやつだ、この際おつきあいさせて頂こうか。


「そんじゃお呼ばれするかな」


「ふふふ、行こ行こ」




◇◇◇


「ウヒヒヒヒッ、お邪魔しちゃって悪いですなぁ」


 とある地方のきらびやかな宮殿に響く下品な笑い声は、獄殺卿ヴィクリムの物だった。


「ちゃんと綺麗に使ってくれるなら別にいいよぉ。汚さないでよね」


 人払いのされた広間の中央に置かれた玉座に頬杖を突きながら少女はニコニコと答えた。少女は鮮やかな赤いクッションの玉座に身を委ねていて、玉座は色とりどりの宝石で飾られていた。


 対するヴィクリムに差し出された椅子は悪い意味で古びた木製の安価な椅子であったが、特に頓着なく座っている。


 落ち着きなく椅子の足を前後にギッコギッコ鳴らしている。


「うるさぁい、それやめて。不快。あぁ、貴方の部屋は地下に用意してるから好きに使っていいからねぇ。ちょっと日当たりは悪いけど、部屋にトイレも付いてるしドアは鉄格子だから防犯もバッチリだよ」


「それってもしかしなくても地下牢じゃないんですかね?ま、別に構いませんが。ウヒヒヒ」


「ね、そんな事よりさ」


 世間話もほどほどに少女はズイっと身を乗り出す。



「魔王様に直接会ったんでしょ!?どうだった!?」


 思い出すように目を閉じて、満足気に頷くヴィクリム。


「歳の頃は貴女の見た目と同じくらいですかねぇ。姿かたちは違えど在りし日の気品と威圧感を感じさせる少女でしたよ。あぁ、人語を解する山猿や白蛇を従えていたので動物がお好きなのかもしれませんな」


 少女はヴィクリムの話を聞きながらうっとりとイズミの写真が載った新聞を眺める。


「いいなぁ、私も早くお会いしたいなぁ」



 少女は立ち上がり、イズミの写真に口づけをすると両手を高く上げて背伸びをする。


「とりあえずもう一個くらい城を奪ってから伺おうかな。貴方も手伝ってよね、ヴィクリム」



 少女の申し出に困り顔で笑う獄殺卿ヴィクリム。


「貴女とはやり口が合いませんのでなぁ」


「間借りしている身で随分な口きくのね、獄殺卿(ごくさつきょう)


「……微力ではございますが、力添えさせていただきましょうかね。百獣姫(ひゃくじゅうき)


 少女はかつての魔王四天王が一人『百獣姫シアン』。


 ヴィクリムの申し出にシアンもニコリと微笑む。


「それじゃお茶にしましょうか。お口に合えばいいのだけど」








 


 






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