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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
勇者と薬売り

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世に賢者は数あれど

◇◇◇


「勇者・シロウ・伝説」


 反応無し。


「シロウ・隠された才能・伝説」


 反応無し。


「シロウ・伝説・……えーっと」


 シロウが何を羅列しても一向に本は現れない。

 

 その様子をニコニコと眺めるジーオ次期国王陛下様。


「イズミ、彼は何で伝説になりたいんだい?」


 所々に設置されたベンチに腰をかけ、微笑ましくシロウを眺めるイズミ。


「ふふ、さぁ?」



「おーい、お二人さん。これ壊れてますよ」


「そんなはずないよ。イズミ・勇者・伝説」


 ジーオがシロウと似た文言を口にすると、ドサドサドサっと無数の書物が現れる。


「ほらね?」


 納得できなさそうに首を捻り、シロウも『イズミ・勇者・伝説』と呟くが何も起こらない。


「やっぱり壊れてるっすよ」


「いや、今君が検索した言葉は僕と全く同じだろう?ここに出てるから改めては出ないのさ」


「そう言うもんなんすか。『ジーオ・熱愛――』

「おっと、ストップ。止めたまえ、追い出すよ?」


 シロウの言葉を遮るが、検索は有効だったようで何冊かの書物が現れる。


「あ、出た」


 何度目かの正直に嬉しそうなシロウと対照的に眉を寄せるジーオ。


「へぇ、私も読みたーい」


 イズミも興味深げに書物を覗き、ジーオは溜め息を吐く。


「一応付け加えるとだね、『書いてある書物が現れる』だけであって、それは真理や真実とは別の物だからね?」


「はいはい、言い訳はいいから」


 そう言ってパラパラと本をめくり、顔をしかめるイズミ。


 その書物にはこう記されていた。 


『ジーオ第一王子と、勇者イズミ様の熱愛が発覚』


「嘘じゃん」


「だから言っただろう?……と、言いたい所だけどそうあっさり否定されるのも何だか嫌だね」



 イズミが顔をしかめながらパラパラと捲ったその本は国内外の噂話を集めた大衆紙のようだった。


「あっ、次俺も読みたい。読み終わったら貸してくれよ」


「ダメ。こんな下らない本は見るだけ無駄だよ。だって嘘だもん」



 積まれた本の山にポイッと大衆紙を投げると、パンと手を叩く。


 すると、本の山が消える。


「あ~あ、俺も読みたかったな。王子と勇者の熱愛記事」


「……そんなの読ませるために連れてきてあげたんじゃないんだけどなぁ」


 わざと恩着せがましい言い方をするイズミ。


 

 本棚から適当に一冊取り、パラパラと捲っていたジーオがシロウを見る。


「そうそう。何を調べに来たんだい?君の家にだって様々な本があるだろう?」


「えっ、怖っ。身辺調査済みっすか」


 つい先日会ったばかりで、ジーオは勿論シロウの家に来た事などないので、シロウの反応も納得できる範囲だ。


 だが、ジーオはシロウの反応を見て首を傾げる。



「何で僕がそんな事しなければならないんだよ。君のお爺さんの蔵書があるだろ?って事さ」


 確かに、シロウの……爺ちゃんの家には本がたくさんある。


 新しい本、古い本、読める本、読めない本。


 流石にここ『知恵の樹』と比べる程は無いが、古今東西様々な本が並んでいるのは事実だ。


「まぁ、あるっすけど。古代文字の本が多いんすよ。だからわかりやすい解説書とかあればなって」


 それを聞いてジーオは眉を顰める。


「それなら猶更君のお爺さんだろう?」


 先刻からどうも会話が噛み合っていない気がして、シロウも眉を顰める。


「確かに爺ちゃんは物知りでしたけども。つーか、ジーオさん爺ちゃんの何を知ってんすか?」



 ジーオは困った顔でイズミを見る。


「イズミ、君は知ってるだろ?」


「うん、勿論。……って言うか、まさか」


 今度はイズミが眉を顰める。


「ちょっと、待てって。いったん整理しよう。うちの爺ちゃんはゼル。草むしりと薬作りが趣味のただの爺さんだぞ?どこかの誰かと勘違いしてないか?」


 ジーオはシロウの話を制止して、イズミとひそひそ話をする。


「ちょっと待ってくれ。こっちも一旦話を整理する。……もしかして、なにか事情があって秘密にしているとかあるのか?」


「……ううん、確かシロウがいる前で話した事もあると思う」


「なぁ、目の前でひそひそ話やめろよな。感じ悪いぞ。『イズミ・勇者・感じ悪い』」


 すると、一冊だけ本が出た。


「あっ、あんのかよ。ははは」


 シロウがその本を取ろうとすると、風魔法か何かでふわりとイズミの手元に行く。



「ばか。どうせまた噂話なんだから読まなくていいってば」


「わかったよ。んで?ひそひそ話の結果は?」


 イズミは少し困った顔でシロウを見る。



「うん。予め断っておくけど、この事はお爺さん直接シロウに言った事あるからね?私もお爺さんも秘密にしてないからね?」


 念を入れたイズミの予防線に、更に困惑と不安を強めるシロウ。


「何なんだよ、一体。あっ、本当は実の爺ちゃんじゃ無いのよ?って?」


 白蛇のハクも茶々を入れる。


「当たり前だろ?知ってるよ、そんなの。君にもゼルの知性の1%でもあればよかったのにねぇ」


 その口振りからハクもゼル爺さんの事を知っているようだった。



「……そろそろ答え教えろよ。引っ張りすぎなんだよ」


 イズミは手をかざす。



「ゼル……功績……」


 かざした右手にぽうっと魔法の反応が宿り、少し考えたのちにイズミはもう一つの言葉を付け加える。


『大賢者』



 次の瞬間、まるで本の雨の様にドドドっと三人の前に書物が降り注ぎ、山となる。


 いや、山となった後も雨は止まない。


「イズミ!多すぎる、言葉を絞ろう!」


 慌てたジーオを見てクスリと笑い、シロウを見るとポカンと口を開いていたので、イズミはプッと吹き出した。


「ゼル・シロウ・家族」


 右手をかざしたまま検索語句の訂正を行う。


 すると、本の山は瞬時に消えて一部の新聞が残る。


 少し寂しそうに笑いながらその新聞を手に取り、イズミはシロウに手渡す。



「はい。読んでみて」


 瞬時に消えたり現れたりするところから考えて、ここ『知恵の樹』の書物達は実物質ではないのだろう。


 イズミに促されるままシロウは新聞を開く。


 日付は6年前だった。


「……爺ちゃん」


 写真付きの記事が載っていた。


『大賢者ゼル、子育てを語る』


 そんな見出しの記事で、今は亡き笑顔のゼル爺さんはこう語っていた。


『世の万物を知った気になっていたが、子育てとはままならんもんじゃのう。子育ての何たるかを知るまでは、恥ずかしくて『大賢者』など名乗れぬわ。……引き取って『もう2年』か、『まだ2年』か。ワシはシロウを実の家族と思っとるよ』


 写真のゼル爺さんの膝の上には仏頂面の子供が座っている。


 シロウだ。


 あまりの情報過多に固まるシロウ。


「世に賢者は数あれど、『大賢者』と呼ばれるはただ一人。それが、君を引きとった大賢者ゼルさ」


「ふふふ、このシロウかわいいね。生意気そう」


 誇らしげに語るジーオをよそに、シロウの持つ新聞を一緒に覗きながらイズミはクスクスと笑っていた。

 

 



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