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魔王軍に村を焼かれた俺、今日も元気に幼馴染勇者を後方支援~草をむしれば魔王が滅ぶ~  作者: 竜山三郎丸
勇者と薬売り

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獄殺卿との会談

◇◇◇


 タキシードの執事風魔族は、イズミとナシュアを先導し城内を歩く。


 仮にも魔王四天王を称する魔物の居城であると言うのに、一匹たりとも魔物は襲ってこないし気配すらない。


「誰もいないの?」

 

 イズミは先導するタキシードに声をかける。


「まさかまさかでございますよ。皆おもてなしの準備で出払っておるのです」


 その言葉にイズミは眉を寄せ、ナシュアは吐き捨てる様に言う。


「どうせろくでもねぇおもてなしだろうが」


 タキシードは嬉しそうに笑いながら歩を進める。


「ほっほっほ、お心に沿うかはわかりませぬが、精一杯気持ちを込めてご用意させていただいております」


 

 暫く歩くと、重厚で歴史を感じる古い木製の扉の前で彼は止まる。


「お待たせいたしました。どうぞ、ごゆっくりとお過ごしくださいませ」



 タキシードがペコリと頭を下げると、扉は音も無く内側に開く。


 扉の中は広間になっており、真っ白なテーブルクロスのかかった長いテーブルがいくつも並び、所狭しと料理が並んでいる。


 そして、そのテーブルの向こうにはダボダボの燕尾服を着た細身の男性がニッコリと満面の笑みで両手を広げてお出迎えをする。



「やぁやぁやぁ、お待ちしておりましたよ。偉大なる!勇者様!なんちゃって、うひひひひ」


 細身で青白い顔をしたその男の着る燕尾服は、何故か燕尾の部分が長くなっていて、地面を引きずる程長い。


 病的な上機嫌さを見せるその男を見て、露骨に嫌悪感を示し眉を寄せるイズミ。


「……あなたが『獄殺卿ヴィクリム』ね」


「えぇ、えぇ。如何にもその通りでございます。本来は私の方からお伺いさせて頂かなければならぬところ、わざわざ斯様な僻地までご足労させてしまい、申し訳ない気持ちで胸が張り裂けそうですよ。……さて、本日はどのようなご用向きでございましょうか?」


 へらへらと、ペラペラと、ヴィクリムは早口に言葉をまくしたてる。


「……ご用向きねぇ。そんなもん決まってんだろ」


 ナシュアはガガっと音を立てて椅子を引くと、ドカッと座った後で足を乱暴に机に放りだす。


 ガシャンと音を立てて皿に乗った料理が落ちる。


「お前らの殲滅だよ」


 背もたれに両腕を回し、ふんぞり返ってヴィクリムを睥睨するするナシュアの頭をバシッと叩くイズミ。



「食べ物。粗末にしない」


「……いや、今言う事かよそれ。後で言ってくれよ」


 イズミの言葉を聞き、獄殺卿は満足気に手をパンと叩く。



「いやはや、流石勇者様!全く以てその通りでございます!私共が丹精込めてお作りさせて頂いたお料理、どうぞ温かいうちにご賞味下さいませ。さぁ!さぁ!」


 腕を組み、ジッとヴィクリムを見据えるイズミ。


「勘違いしないで。食べ物を粗末にするなとは言ったけれど、あなた達の作ったものを食べるだなんて言ってないわ。そもそも私達は食事やおしゃべりをしに来たんじゃないの」


 イズミの動きに合わせて神獣ハクが口を開け、伝説のハクアの剣を取り出しヴィクリムへと向ける。



「二つに一つよ。選びなさい、人に近づかぬか……滅ぼされるか」


「勇者様は人がお好きですか?それは奇遇でございますね、実は私も大の人間好きでして」


「それなら――」


 イズミの言葉を待たずに、ヴィクリムは満面の笑顔で両手を広げる。


「好きが高じて近頃は産地にも拘る様になりましてね。そちらのステーキはグズーリ産、そのシチューはハルハラ産の肉を使っているんですよ。味わってみるとこれが結構……」


 その言葉を聞いた瞬間、イズミの顔からサっと血の気が引き、思うよりも早く身体が動いた。


 音も無く床を踏み込み、ハクアの剣でヴィクリムを狙う。

 

 瞬間、ナシュアがイズミを止めようと手を伸ばすが間に合わない。


「イズミ!」


 薄笑いを浮かべるヴィクリム。


 だが、その笑みは次の瞬間落胆に変わる。


「……ざーんねん、殺していただけると思ったんですけど」


 ハクアの剣はヴィクリムの瞬きした睫毛に触れる程の距離で止まっている。


 目を見開いて荒い息のイズミの身体に白蛇のハクが巻き付き必死に止めている。



 二人と一匹の様子を見てヴィクリムはニヤニヤと笑いながらステーキを手掴みで頬張る。


「その様子だと、我ら四天王に施された封印はご存知の様ですねぇ。ウヒヒヒヒ、残念残念」



 震える右手を左手で押さえながらヴィクリムを睨むイズミ。



「……ハク、ナシュア。止めなくていいよ。こいつは私が倒すから。私は……勇者なんだから!」



 イズミの言葉を聞いてヴィクリムは笑いを堪えられずにぶはっと吹き出し、口内の肉片も辺りに飛び散る。


「ウヒヒヒッ!300年以上の時を経て尚!冗談がお好きでございますなぁ!懐かしくなって思わず吹き出してしまいましたぞ!……魔王様!」



 ――『魔王様』。


 ヴィクリムはイズミにハッキリとそう言った。


 イズミはギュッと一度唇を噛み締める。


「違う!私は……」


「ウヒャヒャヒャヒャ!違うはずがありますまい。なればこそ8年前、復活の予言通り貴方様をお迎えに上がったのでしょう?四天王最弱のゴマすり男が」



「違う!」


 声を上げるイズミの横を、影の様にぬるりとナシュアが動く。


 刀の柄に手を掛け、ヴィクリムの胴を狙う。


「……てめーはもう喋んなや」


「ウヒッ!」


 刀を抜く音がまるで爆撃のような轟音を上げる。

 

 テーブルも、料理も、爆風と共に吹き飛び、前方の壁は全て吹き飛ぶが、長い燕尾服の燕尾が無数の触手の様にヴィクリムをガードしている。


 ナシュアは追撃をかけるが、ヴィクリムは触手を使い攻撃を受けながら破壊された壁へと向かう。


「ウヒヒヒ、魔王様の為に死ぬのは構いませんけど、むさ苦しいおっさんに殺される趣味はありませんのでねぇ。城は献上いたしますので、此度は痛み分けの形に致しましょうか。また遊びましょう……魔王様」


 ニィッとヴィクリムが笑うと、部屋全体が球体魔法陣で覆われて、次の瞬間激しい音を立てて城全体を巻き込んだ大爆発を起こした――。



◇◇◇


 獄殺卿ヴィクリムの居城は瓦礫の山と化し、土煙の中からハクの障壁に守られたイズミとナシュアの姿が現れる。


『大丈夫~?』


 特に心配そうでない呑気な声のカルラの念話が二人の頭に響く。


『平気』


 短くそう答えると、申し訳なさそうにナシュアの顔を見上げるイズミ。



「……ごめん。逃がしちゃった」



「あいつも言ってただろ?拠点一個潰したと考えれば痛み分けだ」


 

 イズミを見るナシュアも申し訳なさそうな顔をしていた。


「次はちゃんとやるから」


『何でもかんでも背負うなよ』……と言おうとしたが、背負わせてしまっている己の不甲斐なさからナシュアはその言葉を飲み込んだ。


「……帰ろうぜ。風呂入りてぇ」


 イズミはクスリと笑うと鼻を手で覆う。


「そうね。入るといいわ」


「マジ!?」


「おーい、お疲れ~」


 ジーオとカルラが駆け寄ってくる。


 魔王四天王との戦いは、一旦の終戦となる。









 


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