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1.日常の一場面

紅葉に綺麗に染まっていた葉っぱがひらひらと舞いながら地面に落ちてきている。

気温も随分と下がってきているので、冬の訪れを感じるくらいだ。

地面に散らばっている葉っぱを見ていると、少し寂しさまで感じられる。

紅葉の景色が辺り一面に広がっていた、人々の気持ちを癒してくれる秋の季節が終わろうとしていた。

すっかり暗くなった夜の町を少年は歩く。肌寒くなっているので歩いている人のスピードが少し速く感じられる。

暗くなるのも早まっているので、すれ違う人の量も少なめだ。

お店もお客さんが来ないのか、閉店の時間を早めている所もあるくらいだ。

コンビニエンスストアも24時間営業をしていない所を見かける。閑散とした店内で従業員が一人で働いているのを見かけるとこちらも寂しく感じる。

毎年巡ってくる日常の風景なのに、少しだけ特別な感情を抱えながら、少年は帰り道を歩いていた。


「ただいま~。」

少年が玄関のドアを開けると、少しして廊下の奥の扉が開いて女性が出てきた。

「おかえりなさい、理玖。少し遅かったね。」

少年の名前は理玖(りく)、地元では少し有名な高校に通う16歳。理玖に声をかけてきたのは理玖の姉、久美(くみ)、歳は理玖より五つ上で大学に通っている。夕食の用意でもしていたのかエプロンを身に着けている。身長は理玖よりも高く、少し茶色に染めたストレートの髪は、髪ゴムによって綺麗にまとめられていた。理玖の容姿については、少しボサっとしたショートヘアで体形もごく平均的である。

「姉さん、ただいま。」

理玖は脱いだ靴をサッと横に揃えると、久美を横切って階段を上ろうとした。久美は横切ろうとする理玖の肩を掴んで動きを止めた。

「ちょっと理玖。」

あまり会話をしたくなかった理玖だが、いつもと違う動きをしてしまったので、失敗したと思いながら久美の方に振り向いた。

「何、姉さん?」

「今日の理玖、なんだかいつもと違うよ。表情が固いし、何か考え込んでいる感じ。学校で何かあった?」

久美は心配そうに理玖の顔を見つめている。久美にまじまじと見つめられている事に理玖は少し動揺して、頬が少し赤らめた。

「…別に何も。小テストの出来と発表でつまづいただけだよ。それで少し反省して勉強を頑張ろうと思ってたの。」

「ほんとに?そういう顔じゃないと思うんだけど。もっと別の悩み事があるような顔をしてる。」

「それは学校で色んな刺激があるんだから、悩みの一つや二つくらいはあるよ。姉さんもあったでしょ?」

「ん~、確かにそうだけど。その悩みは私達には相談出来ないこと?」

「簡単に言えない事だってあるだろ、あまり構ってやるなよ。」

「あっ、お兄ちゃん。」

「ただいま、兄さん。」

二人が話し合っている中、奥からもう一人現れた。彼の名前は久志(ひさし)、この家庭の財政をメインで支えている、いわゆる大黒柱である。黒髪ロングヘアで髪を後ろでお団子のようにまとめているのが特徴的だ。久美よりもさらに高身長である。理玖とは九歳も離れている長男だ。

「だって、こんな理玖の顔をあまり見たことないんだよ。少し心配しちゃうよ。」

久美は自分より他人の事を第一に考えるタイプで、以前も楽しみにしていたクラシックのコンサートと理玖の体育祭の日程がかぶった事で、コンサートに行くのをやめてまで理玖の応援に来るほどである。

「もう高校二年だぞ?少しくらいの悩みくらい自分でなんとか出来るだろ。なあ理玖。」

少しあきれた表情をしながら久志が話す。

「うん。」

「それはそうなんだろうけど…。でも何かあったら遅いんだよ?一人で抱え込みすぎるのはあまり良くないよ。」

「本気で困っていたら、ちゃんと相談するだろうよ。」

理玖は自分の事で言い合っている二人を見て、申し訳なさそうに思った。

「二人とも大丈夫だから。聞いて欲しい事があったらちゃんと話すよ。」

そう言うと理玖は階段を駆け上がり自分の部屋へと向かった。

「あ、理玖…。」

「少しはほっといてやれって。それよりも久美、鍋に火を入れたら目を離すんじゃないぞ。」

「あ!そうだった、ありがとお兄ちゃん。」

久美はバタバタとキッチンへと向かった。久志はやれやれと首を振りながらリビングに入っていった。


ガチャリと理玖は自分の部屋のドアを後ろ手で閉めた。電気のスイッチをONさせると、眩しく部屋の中を照らした。

六畳位の広さがある部屋の中には、小さい頃から使っている木製のベッド、一人で見る分には問題ない大きさのテレビ、美麗な木目のウェーブを描いている勉強用のデスクと漫画や参考書が詰まった本棚があり、年ごろの男の子が使っている部屋としては綺麗に整理されていて、清潔感が溢れていた。

理玖は窓に取付られたカーテンを閉じて、上着を脱いで、ベッドにうつ伏せでダイブした。

「はぁ、一体どうすればいいんだよ。」

理玖は今日あった出来事について考えていた。

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