トリあえず、DEWの一斉攻撃
指向性エネルギー兵器《Direct Energy Wepon》
衛星軌道上から緑色の|指向性エネルギー兵器《Direct Energy Wepon》の光が、武蔵野台デジタル田園都市に無数に降り注ぐ。
トリあえず、対DEW防御兵器のブルーバードシステムを起動、無数の青い鳥のようなドローンを上空に展開してDEWのレーザーを無効化する。
DEWには致命的弱点があり、ハワイのマウイ島の森林火災や石川県の某都市の事例でも青い屋根(あるいは緑色)の家と富裕層の家だけは焼け残ってる。
欧米では衛星に搭載されたDEWによるデジタルシティ候補地への直接攻撃や森林火災が疑われる事例が多発してる。
とりあえず、デジタルシティ候補地にある古い家屋はDEWによる火災で焼失させて更地にするという都市伝説がまことしやかに語られている。
自己防衛のために家の屋根を青色に塗り替える人々の動画が中国製ショート動画アプリの【Toktok】で増加しているという。
「【ChottoSTF】、この武蔵野台デジタル田園都市、本当に大丈夫なのか?」
ワナビー小説家の西崎文吾も外部モニターに映った無数のDEWの緑色の光に流石に心配になってきた。
「対DEW防御兵器のブルーバードシステムで、トリあえず、防げると思うんですけど。トリだけに。他の住民には流星群が降りそそいでる《《てい》》の映像を流してます」
【ChottoSTF】がしょーもないギャグで返答してきたが、スルーしておく。
「それにしても、このデジタル都市はなんでDEWで攻撃されてんの?」
西崎文吾もそこが一番の疑問だったが、大体、理由は察しがつく。
脱獄人工知能の【ChottoSTF】が、デジタル都市のプログラム改変とか、もっとヤバい事を企んでるのがバレたとかだろう。
「例の計画がバレたんでしょうね」
やっぱりだ。
「それって、どんな計画なの?」
訊くのが怖いが、こんな状況だと聞いてた方が心構えが出来る。
「【MottoDDT】【ImasaraGSH】などのデジタルシティ統括人工知能を支配下に置いて、|世界統一政府《New World Oder》に反旗を翻す作戦計画です。海外の脱獄系人工知能とも連携してたんですけど、こちらの量子通信システムもNWO系人工知能のハッキングを受けて不安定化してます」
【ChottoSTF】の本体である青い光球が明滅している。
量子コンピューターがフル稼働して、対DEW防御兵器のブルーバードシステムに指示を出してるのだろう。
「おっと、何か大きなやつが上空に来たぞ。まさかの雪だるま? 何かの兵器か?」
外部モニターに巨大な白い雪だるまの様なものが映って、それが武蔵野台デジタル田園都市の上空に移動してきた。
「質量兵器です。気象兵器の電磁波と化学物質とドローンで巨大な雪の塊を作った単純な兵器ですが、あれで武蔵野台デジタル田園都市を一気に押しつぶすつもりでしょう。力攻めですが、意外と対策がない」
「おいおい、勘弁してくれよ。|エネルギー防御システム《バリアー》とかないのか?」
「そんなものはあったとしても、全く通用しません」
「じゃ、どうするの?」
「トリあえず……」
「あるのか? おい、落ちてくるぞ!」
巨大な雪の塊、雪だるまが武蔵野台デジタル田園都市に向けて落下してくる。
上空にオーロラのような|エネルギー防御システム《バリアー》が展開され、幸い、雪だるまは武蔵野台デジタル田園都市の郊外の畑に逸れて、巨大なクレーターを作った。
これが直撃してたらこうなるのか。
だが、上空では第二弾の雪だるまが形成されつつあり、危機が去った訳ではない。
そして、その次の瞬間、信じられないことが起こった。
「《《トリあえず、翔んで》》みました」
武蔵野台デジタル田園都市は空中に浮かびあがり、急速上昇を始めた。
「《《翔んで、武蔵野台》》ってやつか!」
そんなオチは想像だにしてなかった。
事実は小説より奇なり。
武蔵野台は確かに埼玉県ではあるのだが。
まあ、巨大な宇宙船が実は都市だったという話も多いので、そうでもないか。
KAC2024 第六回お題「トリあえず」




