ある世界の勇者と魔王の戦い
これは、作者が異世界もの書いてみたいなーって感じで作った短編となっています。
やっと……やっとここまで辿り着いた……
ここは悪魔軍隊の総本山、魔王城の最上階。
そこに悪魔軍隊の最高指揮官、魔王がいる。
俺は勇者のバライト・レイフィス。
旅をしている道中、運良く聖剣を見つけることができ、魔王に対抗する戦力となったのだ。
そんなことがあって俺たちは何十人もの味方を連れて魔王城へと乗り込んだ……。
だがしかし、ここに来るまでにほとんどの仲間を失った。
残ったのはたったの5人。
斧使い、武闘家2人、魔法使い、それと俺だ。
それで今から、魔王に挑もうとしている。
「いいか?ここまで色々な仲間を失ってしまったけど、俺たちはここまで来ることができた。お前たち。絶対に負けないぞ。」
「わかってるよレイフィス?俺だって何がともあれここまでやってくることができた。俺達にはあんたが必死になって探してくれた伝説級の武器……俺なら「エタニティアックス」を持ってるからな。」
「ええ。それより、私たちにあるこの絆は、魔王なんかに負けやしないわ!!」
「あぁそうだね。僕らが、負けるわけにはいかない!」
「…………ぶつぶつ。」
5人で絶対の勝利を約束する。
「よし、じゃあこの扉、開けるぞ?」
「「「「わかった‼︎」」」」
そして、俺たちは扉を開けた。
「さぁ魔王、かかってこい‼︎」
だが、そこに魔王はいなかった。
「は?いないじゃないか?魔王のやつはどこに……」
斧使いが混乱する。だが次の瞬間、
「……よくぞここまできたな、勇者達‼︎その意に免じて、この我が、相手をしてやろう‼︎」
という“声”がした。
「な……?魔王……?どこに……」
そう。声がしただけで、姿は一切見ることができない。
「けど、あっちの方から声がしたよね?」
声の方向を探っていた武闘家はそう言った。
あっちの方には……なんかカーテンのようなものが敷かれている。
…………完全に罠じゃね?
しかしそれに反応したもう1人の武闘家は、
「あぁ。そうだね。僕と彼女で見てくるから、勇者達は待っていてくれ。」
と言ってきた。
「いや、それはまずいだろ……これ、完全に罠じゃないのか?」
流石の俺もこれは忠告する。だがしかし、武闘家2人は完全に言うことを聞かなかった。
「まぁ、この感じ、そうだろうね。だがしかし、僕たち2人が行くことによって、君たちはそれを回避できる。それでいいんじゃないのか?」
「ええ。それに、私たちだって少しは抵抗してみせる。簡単には屈しないわよ。」
「けど……」
「まぁ、勇者。君は安心して待っていてくれ。この城に入ってもう何人も死んでいる。僕たちが死んでも、何ら変わらないさ。」
「その通りよ。胸張って待ってなさい。」
そう言って、2人はカーテンを開けようとした。
その瞬間だった。
「かかったな‼︎《ヘルファイア》ァ‼︎」
魔王の魔法が、突如上からカーテンの方に降ってきた。
「え?」
「は?」
そんな2人の断末魔を残して、カーテンごと2人の武闘家は塵と化した。
「……………………」
「な…………嘘だろ……?シュルフィ?ジャント?…………」
「何が……」
まさか……奇襲……なの……か?
もう何度も仲間の死体は見せられてきたが、こんな死に方は酷すぎる。
もちろん吐きそうになった。泣き崩れそうにもなった。
だが俺は勇者。ここで精神的に負けるわけにはいけない。
泣いたり、吐いたりするのは後からいくらでもできる。
まずは魔王がどこにいるのか探さなくては……
「レイフィス‼︎上だ‼︎」
「⁉︎」
そう言って俺は上を見る。
すると……
魔王が手足両方から生えている剣のようなものを天井に突き刺してぶら下がっっていたのだ。
「チッ……バレてしまったか……だったら……」
「魔法使い‼︎」
俺は咄嗟にそう叫んでいた。
「《獅子氷河》‼︎」
「…………ぶつぶつぶつ……《ロンディス・ガーディアン》」
魔王が放ったのは氷属性の攻撃。それに対抗して魔法使いは防御魔法を張る。
「………………よかった………………間に合った」
「あぁ。助かった‼︎」
すると、それを見た魔王は、
「ふん。遠距離は通じんか。だったらいいだろう。この我が直々に相手をしてやろう。」
と地面に降りてきた。
地面に降りてきた時、魔王の姿はやっとはっきりとわかった。
端的に言うと、こいつは化け物だ。
長い髪やふたつある目、足が日本であること、などは人間の特徴と一緒だが、手は10本を悠に超えている。さらに口は牙が生えていてあれに噛まれたら肉を抉られそうだ。
それに体格が、俺らの数倍はある。
これはまずいんじゃ……
「おいレイフィス、やれそうか?」
恐慌している俺に斧使いが声をかける。
「さぁな。そんなんはわからない。だけど、やるしかないんだよ!」
「だったらいい。お前がその気なら……俺はそれに答えるだけだ‼︎」
そういうと、斧使いは一本の斧を握りしめ、地面を蹴り上げ、魔王に向かっていった。
「うぉぉぉぉ!!《牙流刃の舞》(がるばのまい)ぃぃ‼︎」
斧使いは斧を上手に駆使して、魔王の体を切り刻む。
だがしかし、
「はぁ。そんな武器と実力じゃあ、この我は倒せんぞ‼︎」
「な…………おえっ」
魔王は何事もなかったかのように、斧使いを殴り飛ばしたのだ。
しかも、魔王に攻撃は全然入っていない。
「おい‼︎大丈夫か‼︎」
俺は斧使いに声をかける。
「はぁ……はぁ……まぁなんとかなぁ……」
だが斧使いはすでに満身創痍だ。
「さぁ、次は誰が相手をしてくれる?」
「だったら俺が……」
「………………いや……ここは…………私がやる。」
「え?けど……」
「…………いいから」
「ほう?次はお前か!魔法使い!」
「…………負けない。《炎の御神》」
そう言うと、魔法使いは、火属性の最上魔法の一つを放つ。
だがしかし。
「なんだ?一切効かないが?」
またもや魔王には、何一つとして攻撃が入っていなかった。
「………………まさか、そんなことが」
「お前……なんで攻撃が効かない‼︎魔法使いの攻撃も、斧使いの攻撃も、確実に入っているはずなのに‼︎」
俺の疑問に、魔王は勝ち誇ったようにこう返した。
「ふん。実はな。我は聖剣の攻撃しか効かないんだよ。そしてそれは見つけるのが極めて困難だ……だからこそ……お前のような勇者以外では、絶対に負けることがない‼︎」
「なんだよ……なんでそんなチート級な力持ってんだよ‼︎」
「フハハハハハ‼︎恨むのなら、聖剣を持っていないお前を恨むんだな‼︎」
その時、俺は一つの決断をした。
「あっそう。……だったら……お前達。逃げろ。」
「は?何言ってんだよ……レイフィス‼︎……俺たちはここまで苦労して……やってきたじゃねぇか‼︎それなのに、ここで俺たちは死もなしに逃げろと⁉︎ふざけんなよ……レイフィス‼︎」
「……………………けどそれは……正しい。………………逃げよう」
魔法使いが斧使いを説得する。
「いやけどよ……」
「………………いいから…………早く」
そう言うと、魔法使いは斧使いの方まで行って、斧使いを引きずる。
「な……お前、何しやがる‼︎」
「………………うるさい……早く、逃げなきゃ………………あと、あんたは…………今は動けない………………つまり…………足手まとい。」
「…………わかってる。わかってるが……俺は、それを……!」
「………………認めたく、ない。…………それは…………私だって、一緒。…………だから、今は、我慢して」
「…………仕方ねぇ。了解。」
ようやく、魔法使いが斧使いを説得し終えたようだ。
だが、やはり魔王はそれを見逃さなかった。
「残念だが、ここから出られるものは、我に勝った者だけだ‼︎」
と2人に向かって剣で攻撃しようと魔王は駆け出した。
だが、それを黙って見ているほど俺は愚図じゃない。
「舐めんなよ魔王‼︎行くぞ聖剣‼︎」
俺は聖剣を抜き、魔王へと突き掛かっていった。
攻撃は当たった。
ズブズブと聖剣は刺さっていく。
「んな……⁉︎この我にダメージを与える……だと⁉︎」
魔王はそのことを一瞬で察知して標的を俺に変えたようだ。
その間に2人は脱出に成功。
とりあえずの作戦は成功した。
あとは俺がこいつに勝てるかだけれど……
「お前……まさか聖剣を持っていたなんて……」
「あぁ。たまたま見つけてな。運が良かったぜ。」
あの様子からして、ダメージに関しては期待できないが、魔王に相当な衝撃を与えることは成功したようだ。
「だが、お前が我に対抗できるほどの力を持っているのか?」
「んなもんはしらねぇ。けど、お前に勝てうるかもしれない存在が俺なんだったら、意地でも勝たなければいけねぇんだよ‼︎」
俺は魔王に向かって切り掛かった。
すると魔王にその攻撃はかわされた。
「なんだ?そんな攻撃?簡単にかわせられるぞ‼︎《イカヅチ》‼︎」
魔王は、雷属性の攻撃、イカヅチを放ってきた。
「くっ‼︎」
俺はかろうじてその攻撃をかわす。
「ほう?ある程度は鍛えているようだな?」
「まぁな。俺を、そんなにみくびるなよ‼︎《チェーンバインド》‼︎」
「な⁉︎」
「勇者はな、剣以外にもある程度の魔法だって使えるんだよ‼︎《八四裂き》(やつしざき)‼︎」
鎖で足を拘束された魔王に向かって剣撃を放つ。
「うぁぁぁぁあぁぁ!!」
魔王はのたれうち回っている。
だったら……‼︎いける‼︎
「これでトドメだ‼︎《スターホーリー・フィナーレ》ぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」
「うがァァァァ‼︎」
そこに俺の渾身の突きが魔王の心臓を直撃したのだ。
そして魔王は動かなくなった。
「よし……やった……‼︎」
心臓を直撃したのなら、いくら魔王だとしても、致命傷は避けられない。
つまり、これは俺が勝ったのだ。
あとは魔王に刺さったままの聖剣を抜いて帰れば、俺は英雄……
そう思っただけでワクワクしてくる。
早く斧使いと魔法使いにも知らせなくては。
そうした思いで倒れた魔王のところまで行き、聖剣を抜く。
その時だった。
魔王の周りから、魔法陣が現れたのだ。
「あ?なんだ⁉︎」
俺は聖剣を持って構える。
だが、次の瞬間、俺は壁に激突していた。
「……は?」
そして再び魔王の方を見ると、魔法陣は消え、魔王は何事もなかったかのように立っていた。
「な……嘘だろお前‼︎お前は……俺が心臓を突いたはずなのに……‼︎」
「あぁ。そうだな。我は確かに心臓を刺され絶命しかけた。だがしかし、一年というクールタイムはあるものの、対象1人の命の破壊・再生のできる《ライフブレイク》という禁呪魔法を自分に使ったのだよ‼︎舐めるなよ?これは他者に使うと自分にも代償が来てしまう。それはいくら魔王たる我でも度し難い程の呪いでな。自分用に取っておいたのだよ!!」
「…………っ。テメェ、ふざけやがって‼︎」
俺は聖剣を強引に振りたくる。だがもちろんのこと、魔王には当たらない。
「はぁ。感情的になって振っても、我には当たらんぞ?そして……お前はもう、タイムリミットだ。」
「何を言って……‼︎俺はまだ戦え……」
「《デスボロス・インフェルノ》ォ‼︎」
「んな⁉︎」
俺の目の前には、かわすことなど不可能の極太の火柱があった。
……まだ、俺は負けるわけには……‼︎
そう思う一心で聖剣を振りかざす。だが、それにはなんの意味もなかった。
「くそ……くそ……くそォォォォ‼︎」
「お前はまだ楽しめたぞ?名前くらいは覚えておいてやるが?」
「俺の名前はバライト・レイフィスだ。覚えておけよ。魔王。いつか俺のような勇者が、お前を倒しにくるからな‼︎」
「そうか。覚えておく。さらばだ。聖剣の勇者、レイフィスよ‼︎」
――ごめん。斧使い、ガーゼル。魔法使い、ウィラフィアン。お前らのとこには、いけそうに、ない。
俺は燃える業火に焼き尽くされ、灰となって消えていった。