鉱夫もツルハシの誤り 3
「神が創ったナビゲーター…だと?」
普段は声も姿もミツキのみが認識するようにしているが、彼女を勇者だと分からせる為には私の威厳も必要であろう。
〈そしてその聖剣、デカイも神が創りました〉
「にわかには…。ううむ…だが…未知の製法…てんこ盛りのスペック…おまけに謎の生き物…」
「勇者だよー★」
珍妙なポーズでウインクするミツキ。ヒンゲは無言で眉根を寄せるとまたデカイに視線を戻す。
「まぁ何でもいいわい。ワシはこの剣を悲しませない最高の仕事をするだけだ」
〈よろしくお願いします〉
「明後日取りに来い。…いつまでそれやってんだ?」
「あんたがかわいいって言うまでだよ!」
「なぁナビゲーターさんよ、ワシこんなやつに救われたらこの世界が嫌いになりそうだぞ」
〈ご愁傷さまです〉
さて2日後。
「すっごー!どこで折れてたのか分かんない!」
「ガッハッハ!恐れいったか!」
部屋の角に積まれた産業廃棄物には触れずにおこう。やはりミスリルとオリハルコンを合成するのにはかなりの試行錯誤があったようだ。
「ところでなんかやつれてないか?どうしたんだ?」
「ちょっとね…」
〈ミツキの記憶力のなさには失望しました〉
「ちゃんと覚えたでしょうが」
〈16時間もかかるなんて想定外です〉
「あたしだってあんたのしつこさは想定外だよ!」
「なんのこっちゃ知らんが苦労してんだな…」
〈本当の苦労はこれからです。盆地の出口に辿り着ける強さになるまであと何ヶ月浪費するのやら〉
「どういうことだ?」
初回転送地点失敗の事情を聞いたヒンゲは呆気にとられつつもミツキが勇者であることを少し信じたようだった。
「ちとついてこい」
洞窟。
「ねぇー、こんな奥まで来て何があんのー?」
「これだ」
「行き止まりじゃん」
「少し待ってろ」
ヒンゲがそう言って壁を堀りはじめ、5分。崩れた瓦礫の隙間から光が差し込んでくる。
「え…?」
「ご所望の出口だ。昔、間違って貫通させちまってな。モンスターが入ってこないよう塞いどいたんだ」
「なんですとぉ…」