鉱夫もツルハシの誤り 2
しかしして踵を返したのは敵側だった。
「あっ、ちょっ、どこ行く!」
ミツキの呼び止めは届くことなくロックモールは地面に潜り、事態はあっさりと終了してしまった。
「図体のワリにビビリだな」
〈ミツキ、これ…〉
「ん?」
ロックモールが登場時に開けた穴の少し奥に煌めく、淡い青色の鉱石。
〈オリハルコンです〉
「ええっ?!グッジョブじゃん、でかモグラ!」
〈見つけた私への賞賛は…〉
「よぉーっし、掘っちゃうぞー」
自分が入るスペースを作る為か、穴の下の壁にツルハシを勢いよく突き立てるミツキ。
「は??爆発しないんですけど!?」
〈マナの残存量が足りないようです。ツルハシの〉
「そんなぁ!」
〈ミツキが火のマナを保有していればリチャージも可能なのですが…〉
「ないのね」
〈火属性適性0です〉
「ばっきゃろぉぉー!」
そうしてオリハルコンの掘削作業は開始され―
3時間後。
「はぁ…はぁ…オリハルコン採ってきたぞジジイ…。ねぇ!ジジイってば!」
テーブルに突っ伏したヒンゲからは応答がない。
「ウソ…死んで…」
〈酔っ払って寝ていますね〉
「起きろーー!!」
「お…おう…帰ったか。あんまり遅いからよ、飲みすぎちまった。ヒック…」
「酒くせぇー!ほら、オリハルコンだよ」
大事に抱えていたオリハルコンをテーブルにゴトッと置くミツキ。
「こりゃなかなかの大物見つけてきたな。どれさっそく…ああん?火ぃ消えてんな」
「しっかりしてよ!大丈夫なの?ホント」
「俺にできなきゃ誰もできん。それだけは確かだ」
「ほぉん?」
〈彼の鍛冶師レベルは100。本物です〉
無言ながら信じてないな、あの表情。
「なぁ、そんなデタラメな剣どこで手に入れたんだ?勇者でもあるまいし」
ヒンゲは炉に薪を焼べ直しながら聞いてくる。
「え?そうだけど?」
「ガッハッハ!冗談に冗談で返してくるたぁ、おもしれぇ娘っ子だ」
「殴っていいかな」
〈やめておいた方が…。あの男、戦士としてのレベルも82あります〉
「うげぇ」
「誰としゃべってんだ??」