鉱夫もツルハシの誤り1
「んあー…どこまで続いてんのこれ」
洞窟を進むこと約1時間。ミツキの足取りは次第に重くなってきていた。
〈予測不可能です。空気は循環しているので低酸素症にはなりません〉
「そいつはようござんした。あちこちにあるけどあのプロペラの動力ってどうしてんだろ」
〈風の魔石ですね〉
「魔石?」
〈マナが結晶化したものです〉
「マナ?」
そこからか。
〈自然現象の源になるエネルギーです。魔法もそれを操ることで発動させます〉
「ほへー…。マジで違う世界なんだね、ここ」
〈マナに関しては存在しない世界の方が珍しいです〉
「あたしは地球の科学力が恋しいわい」
〈ミツキ、構えて〉
「なに!?」
洞窟内に反響するゴリゴリという音。ほどなくして壁から現れたのは―
「モグラ??」
〈ロックモール。あの爪は鋼鉄並みに硬いとカミペディアに…〉
「でかいだけでヤバそうなのに!」
その体長はミツキの軽く2倍。何を食べてあんなに…なるほど、コウモリ…。いや、資料を参照している場合では!
〈今は【自動防御】がありません。一撃でも浴びたら…〉
「ひぃぃぃ!!」
言い終わる前に振り下ろされる、巨大な黒い爪。
ミツキはそれを間一髪飛び退いて避けたものの、背後の壁に追いやられた形になってしまった。
「転移!ねぇ転移!!」
〈それがその…さっきしようとしたのですが磁場と風のマナの干渉が強くてエラーだらけに〉
「ポン!このポンーーー!!!」
再び襲ってきたロックモールの腕にミツキがヤケクソで薙いだツルハシが当たり、爆発が起きる。
「な、なんだぁ??」
〈そのツルハシに付与されたアビリティ、【爆破】の効果ですね〉
「フフッ…フフフ…」
ツルハシを引きずってゆらりゆらりと敵との距離を詰める勇者様。
〈ミツキ?〉
「そういうのはさぁ、もっと早く教えてよぉ…」
ダメだ。攻撃手段を得ただけで勝った気になっている。頼むから逃げてくれ…。