誉れとモテには乗り易い 3
「だってあたし、RPGとかやったことないし。モリアツくらいしかやったことないし」
「モリアツ?」
〈盛りまくれ 厚揚げの街。最新シリーズ7作目は累計4000万本を超える、日本を代表する街作りゲーム。キャッチコピーは「盛らないの?盛るでしょ、豆腐加工食品」。特に10〜30代女性の支持が高い〉
「ご、ご苦労、104号」
この女の出身、地球のインターネットなるシステムにアクセスしてみたが、何かが壊れる危機を感じた。
「え、ナニモノ!?」
「そなたを補佐する予定のナビじゃ」
「うわ、ナビまで用意してんのか」
「当たり前じゃ。達成してくれんと困るからの」
「いちおう聞いとくけど他には?」
「制限はあるが容姿の再編集、神具或いは神アビリティの贈呈 、蘇生保障、勇者の誉れ…くらいかのぅ」
「最後のについて詳しく」
「端的に言うとモテる」
「よし、乗った!」
そこかよ!
「そこかよ!」
神様と内心でハモってしまった。
「あとは“容姿の再編集”だなぁ。もしかして若返ったりできちゃう?」
「設定する歳は自由だ。体型も骨格に準じておれば…」
「17歳、今より細身!!あとはめんどいからいい感じにしといて!」
図らずともOL26歳、不摂生によるぷにぷにボディ、生涯男に騙され続けた女の夢が叶うようだ。
「…よいのじゃな?」
「ピチピチモテモテセカンドライフばっちこーい!」
これが竹上三月改め勇者ミツキの転生、そして私の任務開始に至るエピローグである。…可能ならば記憶から抹消したい。
〈た…ただいま…〉
言わずもがな神に追い返された私は村の宿のベッドに突っ伏した少女〔26歳〕に恐る恐る話しかけた。
「おい、クソナビ。私はあの後ちゃんとワンちゃんやっつけたぞ」
〈ボロボロなのですが〉
どうにか捻出していた譲歩の念は彼女の第一声で吹っ飛んだ。致し方ない。本当に、致し方ない。
「いいからやり直させろよぉーー!!泣くぞ三月ちゃん!何なんだよこの無理ゲー!!!」
〈私だって泣きたいですよ!涙を流せるのなら!〉
レベル6。一体いつになったらこの盆地から抜け出せるのやら。これが「途方に暮れる」というやつだろうか。