誉れとモテには乗り易い 2
真っ白い空間に浮かぶ豪壮な玉座。そこに坐するは―
「それでおめおめと帰ってきよったのか。まだ3日しか経っておらぬぞ」
神。私の産みの親である。
〈私、堪えました。それはもう堪えました。こうして人間は憤死たるものをするのかと悟りました〉
「生まれて1ヶ月で神でも悟ってないこと悟るでないわ。確かにあの娘のはねっかえり具合は目に余るものがあるがのぅ」
〈加えて怠惰で自分本位で知能も残念。勇者として、いいえ、人として良いところを探す方が難しいです〉
「そなた、本当に104号か?ついこの間までの純真無垢さはどこにいった」
―1ヶ月前。
「誕生おめでとう、ナビ104号。どうじゃ、しゃべれるか?」
〈104…識別ナンバーの照合に成功しました〉
「かったいのぅ。AIか、そなたは」
〈…違うのですか?〉
「妾、プログラムなんぞ書けんもん。そなたは肉体にうまく宿れなかった魂を集め、こねくり回して我が力の一部と叡智を与えた存在。血も肉も持たぬが歴とした生命じゃ」
神が手間暇かけて創り上げ給うSDGsな魂の結晶。細かい疑問点は無視して私は出自を誇ることにした。
〈自覚に努めます。それで…具体的にはどんな仕事をすればよろしいのでしょうか?〉
「勇者の手助けじゃ」
すでに勇者が必要だとする世界は決まっていたものの、適合する死者が現れるまで634時間…約26日半要した。その間私は彼の世界についてや歴代勇者の冒険などを徹底的に学習し、準備を万全たるものにした。
そうして現れた勇者候補の魂。
「竹上三月。そなたは死んだ」
神が召喚した霊晶ディスプレイに彼女の死の瞬間―レストランの食べ放題のパンを喉に詰まらせて窒息する姿が映し出される。
「マジかー」
ダメだ、バカ女だ。どう繕っても。
「あなた神様的なヒト?」
「的ではない。神様じゃ」
「ふぅん。あたし知ってるよこの流れ!転生して世界救ってこいってやつでしょ??」
「話が早いではないか。であればさっそく…」
「や、ウェイト、ウェイト。了承してない」
「は?」
神は、困惑していた。