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太陽の刻印(1)

「盟約の花嫁~星の刻印~」と同じ時代の王国篇です。単独でも読めますが「星の刻印」に登場するレギナルト皇子がチラッと出るので、帝国篇の先読みをお勧め致します。この王国シリーズは登場人物の外伝3作あります。四人の王子の中の誰かが含まれますが…先ずは花嫁争奪の行方をお楽しみください。

 我々は盟約に従って、永遠に〈沈黙の地〉の封印を守る事を誓う。天界は盟約の証に、オラール王国へ〈光の聖剣〉の輝きと、その礎なる〈天の花嫁〉を与える事を誓おう。冥界は盟約の証に、デュルラー帝国へ〈闇の聖剣〉の無限と、その礎なる〈冥の花嫁〉を与えよう……

 これらは、オラール王国、デュルラー帝国の建国当時から伝承される盟約の抜粋である。


 遥かなる古の時代。人が天冥の神々より創造されて、終わることの無い永久の平穏を信じていた頃、世界を無に変えてしまう邪悪な存在が現れたのだった。そして天界・冥界ともにその〈虚無の王〉に脅かされる事となった。その力は強く、永く続いた平穏に慣れ衰退した世界は、終焉をただ待つしかないと諦めかけていた。


 しかし、お互い干渉する事が無かった各界は、同一の巨大な敵に対抗する為に、力を合わせる盟約を結んだのだ。天界と冥界はそれぞれの力を凝縮した聖剣を創り、生命力に溢れ、何よりも各界に無い強靭な心と活力を持つ人間にそれらを与えた。

 しかし、力なき人間は異界の巨大な力を使いこなす事が出来なかった。だが人間達はその貪欲なまでの意志の強さで諦める事は無かった。その聖剣に相応しい者を創り出す為に、天界と冥界より花嫁を迎えて婚姻を結び、力に見合う胎児を誕生させたのだ。


 後にこの二人は成長し〈虚無の王〉を滅ぼすまでには至らなかったものの、人界の土地に封印し世界を救ったのだった。そして光の聖剣を(よう)する者はオラール王国を建国。闇の聖剣を擁する者はデュルラー帝国を建国し〈虚無の王〉を封印した土地を〈沈黙の地〉と呼び、両国はこの土地を盟約に従って守っている。

 天界と冥界はこの〈虚無の王〉を封印する力を与える血脈の維持の為に、彼らの一族へ同胞の花嫁を送り出す。これより盟約に記された花嫁は歴史の中に度々現れる事となる……… 



 オラール王国は夏の終わりを迎えようとしていた。四季がある隣国デュルラー帝国に比べて、冬でも比較的に温暖なこの王国は夏も穏やかな土地柄だ。だから夏の終わりと言っても暑さはそう変わらない。身体を動かせば額に汗するのは当たり前だった。

 王都の街はずれ、森林地区を聖地とする神殿がある。この王国は魂魄の創造と誕生を司る天界人を神と信仰して、王族は建国より続く天界神の血筋を自負し、国民から絶対の忠誠と尊崇を得ていた。逆にデュルラー帝国は魂魄の導きと再生を司る冥界人を神と呼び信仰する。そして皇族は冥界神の血筋を誇りにしている。古来より永々と続く変わらない盟約によって築かれた三界の絆であった。


 その天界神を祀る一つでもあるこの神殿は女神官だけで、警備兵も女性で構成される男子禁制の地であった。

 夜明けも近づき地平線の空は、星空を抱くように曙に染まり始めていた。神殿近くの森林には神官建の禊に使う湖があった。崖の上から豊富に湧き上がる泉は聖水ように澄み木々を潤わせ大地に落ちて湖を作っていた。

 その湖には人目を忍ぶような人物が二人いた。湖は泉から落ちる水音と湖面の所々に突き出た岩で視界が悪く、お互い相手の存在を知らなかった。

 一人は神殿の女神官フェリシテ。今日で十七歳となる。昨夜はどうしても寝付かれず、心に宿る不安な気持ちを落ち着かせる為に禊に出かけてきた。彼女がこんな時間に禊に来るのは珍しくない。ある事情があって人目を避けるように禊をするのだ。人目が無いせいもあるが神官達が行うような厳かな雰囲気では無く、まるで涼を楽しむかのように潜っては空気を求めて湖面に顔を出すような有様だ。彼女は冷たい湖水に一糸纏わない身体を任せるうちに、心も清々しくなってきたようだった。もうそろそろ神殿に戻ろうと思い、最後にもうひと潜りした。息の限界まで我慢して一気に湖面に飛び出したその時、今まで一人かと思っていた湖にもう一人いたのだ。突然現れた彼女に相手は驚いている様子だ。向こうも自分一人だと思っていたのだろう。


 二人は声も無く驚きに目を見開き、お互いに見つめ合った状態になった。しかし、最も驚いたのはフェリシテの方だった。

目の前にいる人物は、この地で見ることは絶対にありえない男性だったからだ。背が高く立ち上がった姿は腰から上が湖面から出ていた。しかも裸体のうえ、太陽神かと思うような黄金の髪と驚きに見開く瞳は碧。この世のものと思えない美しい容姿だ。


気丈なフェリシテは気を失うことなど今まで無かったが、今回ばかりは気が動転してしまって目の前が真っ暗になり意識を手放してしまった。

いきなり倒れこむ彼女を謎の青年は抱きとめると岸辺へ向かった。そして気を失っているフェリシテに自分のマントをかけて、身支度を整えると彼女を見ていた。その表情は硬く何故か懐疑心に満ちているようだった。

それから彼は正気を取り戻させようとフェリシテの頬を軽く叩いた。


「‥うん~ん……あっ!」

 フェリシテは意識を取り戻し急に起き上がった。折角かけてくれていたマントが、ハラリとずれてフェリシテは半身裸体の状態なった。

「きゃあ――っ」

 慌てて前を隠そうと焦れば焦る程上手くいかない。そんな様子に気にする様子でもなく目の前に座る青年が話しかけてきた。

「君はこんなところで何をしているの?」

 その表情は先程見せていたものとは違い、何も映してないような無表情だった。その無表情さが彼の美しさを際立たせて現実離れさせていた。

「え?」

 答えを待つ彼はフェリシテの事を何とも思っていない様子だった。それには彼女自身驚きだった。自分のこんな姿に気にする様子を見せない男性は初めてだったのだ。


 フェリシテは自分の容姿と黒髪が嫌いだった。翠の瞳は大きく、歳相応の可憐な美しい容貌なのだが、〝首から下が最悪だ!〟 と、彼女は思っていた。すんなりと伸びた肢体はしなやかで胸はまるく大きく、胴は細く括れ腰は形よく曲線を描いていて男性の欲望を刺激するには十分な魅力だった。色気の無い首元まで詰まった神官服を着ていても男達の嘗め回すような視線から逃れることが出来なかった。男達のいやらしい視線はいつも胸と腰を行き来して何かと付きまとわれるのだ。

 

 それで問題が起きて王都の神殿から追い出されたようなものだった。だから女神官同士の禊にも一緒に行かなかった。自分の身体を陰で指差してはその噂話をされるからだ。

〝淫売神官〟 と酷い言われようなのだ。

そんな諸々の事情があって男性には警戒心と嫌悪感を持っているのだが……  


(綺麗だけど…男の人だよね?)


 フェリシテはまだ月光が降り注ぎ照らし出されていた彼の裸体を思い浮かべて赤面した。


(た、たしかに男の人に間違いは無いけど……不思議な人…人間臭さを感じさせないと言うか、存在感が無いと言うか…)


 フェリシテは前を押さえるのも忘れて、目の前の人物が実在するのか気になって彼の頬に、そっと手をのばしかけた。

「何? 君はこんなところで何をしているの?と訊いたのだけど?」

「あっ、ごめんなさい。やっぱり人間よね?私は神官で禊をしていたのだけど…

あああぁ――っ!あなたこそ此処は男子禁制地区よ!あ、あなたこそ何をしていたの!」

「しっ、騒がないで!」

 青年はフェリシテの口を押さえて黙らせると魅惑的な微笑みを湛えて囁いた。

「君は素晴らしいね。その漆黒の長い黒髪は…まるで豊穣と美の女神のようだ」

「わざとらしい誤魔化しなんて私に通用しないわよ!それに私はこの黒髪が大嫌いなの!それにその女神に例えられるのもね!」


 フェリシテは、ピシャリと言った。


〝豊穣と美の女神〟 これこそ本当に嫌いだった。素晴らしい肢体の持ち主の美しい黒髪の女神。神話では女神が冥界の主神に恋をしたが、性質の違う天界と冥界での婚姻は禁忌とされその恋は実らなかった。しかし女神の強いその想いは冥界に馳せ、結ばれることの無い深い悲しみに金色だった髪が冥界の闇色に染まったと云う。

〝豊穣と美の女神〟 は愛の女神でもあるのだが…良く例えるなら純愛の神。悪く例えると奔放な愛の神とも言われている。天界人の流れを汲むオラール王国では色素の濃い髪色は珍しく、仲間うちでは女神の悪い評判の方に例えられるのだ。


 それにそれに何時も聞き飽きた男達の賛美と違う事はすぐに分かった。そう囁く彼の声や瞳には欲望に満ちた熱っぽい気持ちが全くこもって無かったからだ。

 彼は自分の魅力と女性に及ぼす力を十分自負していたのだろう、少し面食らった様子だった。それでもフェリシテから言わせればわざとらしい笑顔で問いかけて来た。

「これは手厳しい。こんなにも貴女を崇拝しているのに?私はどう?私を見てどうも思わない?」


 フェリシテは改めて彼を見た。容姿は今まで出逢った人達の中でも一番だろうと思った。女性の中でもそういない。王都の神殿では容姿が自慢の貴族も多く見たが、彼ほどの人物を見た事は無かった。服装は高級品で品良く、貸してくれているマントも普通はもっと丈夫な布を使うが、これはすぐ駄目になりそうな高級な絹物だった。


(お金持ちか?貴族と言うところだろうけど…でも従者もいないようだし?そんな身分の人が一人だと言うのもおかしいけど…この人、私からの賛美を聞きたい訳?)


「――変な人」

「え?」

「変な人と言ったの!確かに初め太陽――」

 一瞬、青年の瞳が光ったような気がしたが次の言葉でその光りは影を潜めた。

「太陽神が降りてこられたかと思ったけど。そうじゃないでしょう?」

「……良く言われるね。太陽神のようだと。それで私の体はどう思った?」

「えっ!体って…あ、あなたもしかして!体売る、だ、男娼だとか!私、必要ないしそれにあなた高級でしょ?私、お金持ってないわよ!そ、そんな事より私、神官だから絶対駄目、駄目!」


 青年は突拍子も無い話を始めた彼女に、そんなものでは無いと言いかけて、口をつぐむと、自己完結して喋っているフェリシテの顎をとらえて見つめた。

「そう、それは残念。折角好みだったのに」

「私じゃなくても、あなたなら幾らでもお客さんはいるでしょう?頑張って! 」


 青年の眼力も彼女には効かないらしい。彼は手を離すと溜息をついた。

「ふっ、だけど君も見ただろう? 私の胸の傷。女性なら嫌だろう?」

「傷?そんなのあったかしら?」

 フェリシテは、また彼の姿を思い出して真っ赤になったが、青年は真剣な顔で念を押すように聞き返してきた。

「分からなかった?気にならなかったと言う訳だね」


 フェリシテは男のくせに自分の美醜を気にする輩に関わっている暇は無かった。朝の祈祷に間に合わなくなる事を思いだしたのだ。

「商売道具の体が心配なのも分かるけど、あなたに付き合っている暇は無いの!それじゃ、さようなら。ああ、それと忠告よ。仕事をどうこう言うつもりは無いけど、あなたの容姿は素晴らしいけれど、そんな無感動の冷めた瞳をしていたら誰も相手にしないわよ!もっと鏡を見て研究すると良いと思うわ。じゃ、もう会う事無いと思うけど頑張ってね!それと早く此処から出て行かないと警備兵に捕まるわよ!」


 フェリシテは早口に一気に喋ると、マントを身体に巻きつけて走り去って行った。途中、自分の洋服を拾ってはいたが着替える時間が無いのだろう。

残された青年は唖然と彼女を見送っていたがその表情は謎めいていた。

愉快そうなのか?興味をそそられたのか?無関心なのか……心中は謎である。



 オラール王国の女王ブリジットが王城内にある大神殿の宣託の間に呼ばれていた。

王城は周りが堀と堅牢な城壁に囲まれた広大な土地を要する壮麗な居城だ。大小の宮殿を回廊で繋ぐ巨大な宮殿都市の様相である。

その中に王族の為にある大神殿は天界神の宣託を受ける場所でもあり、国家の神事を司る。まさに王国内の神殿の中枢にあたる所であった。


 その聖域である宣託の間は、天に届くかと思うような尖塔の一室にあり、天井は総硝子貼りで陽光が降り注ぎ光溢れている。しかも壁全体に鏡をはめ込み、それが光りを更に乱反射させて昼間などは目も開けられない程だった。

朝の祈祷が終わって間もない時間、太陽は高く昇りきっていないが眩しさは十分だった。


 女王ブリジットは榛色の瞳を眩しさに細めて、呼び出した大神官の話を聞いていた。

大神官エルヴェ・ガロアは三十代という若さにして大神官に就任した鬼才の持ち主だった。その姿は神職者に相応しく聖なる白銀の長い髪と双眸。慈愛に溢れるその微笑は思わず跪きたくなるような神々しい端整な顔立ちだ。

 語られるその声も、まるで謡うかのように耳に心地良い響きで一つ一つ紡がれていた。


「十七年前に啓示のございました〈天の花嫁〉が本日お目覚めでございます。誠におめでとうございます。第一王子、王位継承者のご不幸がございましたが啓示通りに〈天の花嫁〉がお目覚め頂きまして私も安堵いたしました。それで〈天の花嫁〉のお相手は第二王子のユベール殿下に定めてさせて頂きますがブリジット女王?」


(天の花嫁か…)


 女王は思った。〈天の花嫁〉に託された使命について――。

 〈沈黙の地〉に封印された〈虚無の王〉は消滅した訳では無い。閉じ込められているだけで完全な封印の時でさえも、その隙間から地脈を通じて人を食らう妖魔を生み出すのだ。

 世界の安寧の為、封印の強化は百年ごと聖剣を用いて行う。その聖剣を使える力は天界からの血筋を継ぐ王と王統を継ぐ第一子のみに受け継げられるが……血が薄まると聖剣を使う力が弱まる。それゆえ、王家の血脈の維持は重大なのだ。


数百年ごとに盟約に従って繰り返される〈天の花嫁〉の降臨。天の神が計ったかのように必要と思われる時代に花嫁を送り出すのだ。それは王国にとって最も喜ばしい慶事なのだが――その十七年の間に事情が多少変わっていた。十三年前に〈天の花嫁〉と婚姻する予定だった王位継承者の第一王子が暗殺されたのだ。


特殊な王統の継承を行うこの世界において、第一子を暗殺するのは愚の骨頂でしかない。王位継承者は第一子のみで他に王位継承権は無いのだ。仮に第一子が早世し、跡継ぎがいなかった場合でも第二子が王位継承者を名乗る事は出来ないのだ。そして新たな王統を継ぐものをもたらす〈天の花嫁〉が現れるまで王位は空位のままだ。


 慶事である〈天の花嫁〉の存在は、王権争いを伴うことも永い歴史の中、度々引き起こされていた。婚姻を結ぶべき王位継承者が不在の場合のみ、王家の血筋のものが〈天の花嫁〉と婚姻を結ぶ事が許され、事実上王権を握ることが出来る。そこで王位簒奪を狙うものはその機会に継承者の暗殺を謀る訳だ。

そこで啓示があっても〈天の花嫁〉の存在は秘事となり、その啓示を知るものは王と王国の王統を庇護する神官の長である大神官のみだった。

 それなのに〈天の花嫁〉の存在を知られていない十三年前に王子暗殺は行われた。いつの時代も目先の欲に溺れる痴れ者はいる。


ブリジット女王は深い溜息をついた。

「ユベールか……」

 ユベール王子とは死去したジェラール王子とは双子で女王の悩みの種だった。女王も第一王子亡き後は〈天の花嫁〉の相手には当然、第二王子であるユベールをと思っていた。だから婚姻の早い王家において、二十三歳と言うのに婚約者さえ決めていなかった。


(しかし、今のユベールには無理と言うものではないのか?)


「ユベールの素行を考えると、王に相応しいは思えないのだが?」

「さようでございますが……順番を無視なさいますと騒動になりかねません」

「………」

 女王が懸念しているユベール王子は、国政に関心なく何事にも執着することが無かった。いつも風のようにかわして、掴みどころも無く本気になって何かをするのを見た事も無いのだ。 女王はある考えが閃いた。それは一種の賭けかもしれなかったが、王国の存亡を賭けるのもまた一興と思った。思わず笑いが込み上げてきた。


「陛下?如何なされましたか?」

「エルヴェ。次代の王政者、花婿は〈天の花嫁〉本人に決めさせようと思う。だからユベールの他に候補者を数名用意しよう」

 ガロア大神官は驚いた。女王の意図することが分からなかった。

「女王、どういう事でしょうか?候補者を増やして、わざわざ争いを誘う必要がどこにございますか?」


「おや?そなたのその頭脳でも分からぬか?遊戯…そうユベールを本気にさせる為の遊戯ぞ。獲得商品は麗しき〈天の花嫁〉その花嫁は、天界神の子をこちらの世界へ転生くだされたもので言わば天界人。伝承によれば天の輝きの如く誰をも魅了すると云う。ユベールも欲しくなるのではないかな?しかも遊戯は面白く無くては話にならぬ。簡単に手に入るものでは誰も燃えるものでは無い。困難が多いほうが良いと思わないか?」

「陛下…」


「心配するでない。余はユベールが今のような男だとは思っていない。この母にさえ本気を見せないのだから。しかしそれは親の欲目で今のあれが本気かも知れんがな。その時は余の負けと言う訳で王位は他にくれてやるしかない。それでも〈天の花嫁〉が選ぶ男なら間違い無いだろう。隣国のデュルラー帝国の〈冥の花嫁〉は花嫁本人の 〝承諾〟 が無いと婚姻が成立しないらしいな?」

「はい。昔、皇族が〈冥の花嫁〉を道具のように扱って命を絶った為、冥界神の怒りを買い、その条件が付けられたそうです。オラール王国ではまだ、そのような条件はございませんが…天の怒りを買っては大事でございますから、デュルラー帝国に見習って花嫁の意思を尊重するようにしていると記載がございます」


 女王は、ニヤリ、と微笑んだ。

「そう、全ては〈天の花嫁〉の御心に従うのが天界神の望みと思うが?」

 大神官はそこまでする女王が理解出来なかった。しかし王命に逆らうことは神に逆らうに等しいとされる王国において肯定するしかなかった。

「御意。ではそのように取り計らいます」

 大神官の心配を他所に、女王はこれから始まる〈天の花嫁〉を巡る遊戯を思い描きながら宣託の間を後にするのだった。


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