6.
二人で話し合った末、香波は人混みが苦手だというので、近くの渓谷をぶらつくだけになった。いつもとたいして変わらない。それでも、よく晴れた初夏の緑は見ているだけで楽しく、夕暮れ時の空模様には心を奪われた。
「ねえ。レミングって知ってる?」
岩肌から突き出た大岩に並んで腰掛け、赤、オレンジ、紫色と複雑に染め合う夕焼けを見つめながら、ふいに香波が言った。
「レミングってネズミはね、集団の数が増えすぎると、みんなで海に飛び込んで自殺する――、そんな話があったんだ」
その魅入られたようなまなざしに、陽光はやけに不安を掻き立てられた。
「たまに、イルカや鯨の大量死がニュースになるでしょ? そういうの見ると、私、思うんだ。もしかして、世界から排除されようとしてるんじゃないかって。人も動物も増えすぎたから、地球が、どうにかして数を減らそうとしているのかもしれないって」
「……は。まさか、そんな……」
陽光は、笑い飛ばそうとして失敗した。
香波の淡々とした語り口に呼応したかのように、雲が太陽を覆い隠したのだ。
背中に走った悪寒が、辺り一帯が急に陰って周囲の気温が下がったせいなのか、香波の横顔に何かの予感を感じたせいなのか、陽光はわからない。
香波は続けた。
「今はただの事故だって言われているみたい。でもさ、本当のところはわからないでしょ? 私達は地球から生まれたんだし、考え方や遺伝子に最初から組み込まれていたとしたら……」
――自分達の意志で選んだつもりの死も、偶然と思われた事件や事故も、地球に操られた結果という可能性があるのだ。
「地球を汚してばかりの人間なんて、もっと、いらないって思うよね。……それに……」
香波は、何か小声で付け足した。
けれど、小さすぎて、陽光には聞こえなかった。