5.
土日は慧のクリニックは休診である。
いつもは閑散としている川原も、家族連れや釣り人で賑わっている。さすがに香波の姿もない。
陽光は、コンビニ帰りにふらりと川原に立ち寄って、木陰からその様子を眺めていた。
ありふれた日常の風景。ついこの前までは陽光も彼らのように何も考えずに楽しめていたはず。
でも今は。
(今は……どうなんだろうな)
バーベキューで出たゴミを透き通る川の中や川原に捨てる。新しく伸びた梢を折る。
香波が見たら悲しむだろうなと思うものの、陽光自身が深刻に受け止めることはない。
つまりは中途半端。どちら側に身を置くこともできず、かといって二つの間を取り持つような覚悟もない。
陽光は溜息をついた。このままでいいとは思わないが、どうなるのが正解なのか全然わからない。
(症状が進まないようにって、一体どうすりゃいいんだよ……)
もう一度溜息をついて、何気なく視線を上げる。すると、木の枝の隙間から足がにゅっと突き出てきて、仰天した。
「なっ!? ――って、咲原!? なんでそんなところに!」
頭上の枝に腰掛けた香波が、ふてくされたような顔で陽光をにらんでいる。
「なんでここにいるの? 陽光君」
「それはこっちのセリフだ!」
足をぶらぶらさせていた香波が勢いをつけて飛び降りた。そしてすねたように横を向く。
「だって、行くとこないんだもん」
「そんなこといったって……。ここだって、いづらいだろ」
今日はどうしたってひとりぼっちは目立つ。一人きりの香波がすごすのに向いている場所とは思えない。それに、これ以上香波にこの光景を見せたくはない。
「あー、どうせオレも暇だし、どっか遊びに行く? 行きたいところがあるなら付き合うけど」
「――ええっ!?」
しかしなぜか、香波は悲鳴じみた声をあげた。陽光はちょっと傷ついた。
「い、いいよ! そんなの!」
「え……、なんで?」
「だ、だって……。だって、そんな、毎日会ってるのに、休みの日にも一緒に遊びに行くなんて、そんな……、そんなの……!」
香波は赤くなって震えだした。
ずうずうしすぎて怒らせてしまったのかもしれない。そう思った陽光は、焦って代案を考える。
「あ、あー、そういえば、同じクラスの伊藤が、咲原と一緒に遊びたいとか言ってたな。そっちにするか?」
「えっ、あ……、陽光くん『で』いい!」
陽光は再度傷ついた。