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グラデーション

作者: keita

昔の人。


いつも時代でも過去の栄光の話ばっかり話したり、

過去の自分は凄かったと豪語しながらそれをツマミにお酒を飲むあの生き物はいつの時代だって一定数いる。


マウントを取っている事に気づかない人。


誰かの言葉に被せるように自分の方が凄いだとか常に上にいたがるあれはもう習性だと思う。

その時の一瞬は気持ちが良いかもしれないが『あ、この人とはうまくいかないかも』と思われる確率は高いし、生きていく上での難易度を上げにいくところを見ると天性のドMなのかもしれない。


私達はこれまでの義務教育だったり集団生活の中で周りと違う事を恥ずかしいと思うように仕向けられてきた。

少数派はいつの時代も生きづらい。

自分は周りと違うんだと思い、勝手に生き辛くしてる場合だってある。

いつもどこかに監視カメラがあるような、いつも誰かの評価を気にしながら生きる。

そんな世界に希望はないと最後に見る景色が線路になってしまう人もいる。

そんな何も変わらない時代は時を経てAI人型ロボットと人間が共存するようになった。


ー20XX年ー

時間を切り売りするような機械的作業は全てAI人型ロボットの仕事になり、

『おもてなし』は“OMOTENASHI”に変わった。


人間1人にAIロボット1台が付き人に着くようになり、今日はカレーが食べたいといえば

お肉とじゃがいもとにんじんと、、の様に必要な具材を買いに行き

人間が家に帰る時にはあったかいカレーができているような便利な時代だ。


小さな個人経営の居酒屋『創』のカウンターの奥にはAI人型ロボットのRISAは今日も器用に笑顔でジョッキを洗っている。


大きな声で笑う人。嬉しそうな顔をしている人。

なんだか少ししんみりした顔をしながらお酒を飲む人。

少し緊張した表情で先輩の話を前のめりに聞いている人。


このお店には色んな人がやってくる。RISAはこのお店の看板娘としてお客さんから親しまれている。


看板娘という言葉は“昔の人“から教えてもらった言葉だ。元々開発された時の教師データには入っていなかったということは多分死語なんだろう。

RISAはAI人型ロボットの中でも一部の特殊なものに該当する。


AI人型ロボットはまだまだ開発段階な部分が多く、人間が開発するこのテクノロジーの未来を担うロボットに『感情を持たせてみるとどうなるだろう?』とデータ収集の為に試験的に改造されたロボットがRISAだ。だがこの試験的に持つことを許された“感情“には制限がある。


それは感情を出すことが許されないということ。


RISAは感情を持つ前もこの『創』で働いていた。

何の変化のない毎日から色んな人の表情や言葉が気になるようになり、今まではなんとも思っていなかったお客さんの笑顔をみると何故か“嬉しい“と言う感情が生まれることに最近びっくりした。


そんなある日、スーツ姿の男の子の涼太がお店に来て、1人でカウンターに座り注文する。


『すみませーん、生ビール1つと冷奴と唐揚げお願いします』


RISAはオーダー通り、注文の品をカウンターに座る涼太に手渡す。すると、『いつも頑張ってますね、ありがとう』と涼太は言いググッと中ジョッキに入った生ビールを一気に飲み干しもういっぱいお願いしますと言った。


今まではありがとうと言われても何も感じなかったのに感情を持ってからは言葉一つ一つの意味を強く感じるようになっていた。

何気ない日々の連続だった日常という真っ白なスケッチブックに色がついたような感覚があった。それがとても楽しかった。

次第にRISAはもっと人と話してみたいと思うようになっていった。

だが、言葉は時に残酷に鋭く尖り冷たい色を持つことも知った。


おじさん3人がテーブル席に座り、RISAはいつも通りオーダーがあった注文を持っていく。


『AIロボットなんだからもっと早く持ってこいよ』


おじさん3人組がRISAに冷たい言葉を投げる。

追加の注文の品を持って行くと、


『もっと美味しく作れよ』


3人組は出された料理を食べ終わるとそう言って店を出て行った。


AIだから何でも言っていいのか、感情を出してこないとわかっているから言ってきているのかと感情には怒りの色があり、時に言葉は鋭く人に突き刺さり冷たい色の感情がある事も知った。

同時に、人間とAIロボットが共存する中でまだまだ人間が作ったクローンでしかないという現実に悲壮感を覚えた。


人間と会話をする中で生まれる感情には嬉しいものもあれば悲しいものもある。

時に嫌な思いもすることも知った。

けれどあの時の嬉しい気持ちを忘れられない自分がいる。

人間とAI人型がもっと分かり合える世界を。


『いらっしゃいませ』


RISAはそんな眩い光の色を心に秘めながら今日も『創』のカウンターに立つ。

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