私の顔が気に入らないのは知ってますが、人のものをとるのはさすがにいけないと思うんですのお姉さま。
「あなたみたいな人間がいるから、私が不幸な目にあうのよ!」
「そういわれましても」
「なんでも持っているあんたみたいな人間がいるから!」
私は姉を見てため息をつくしかありませんでした。いつもいつもお姉さまは私が何でも持っているといいます。
でも私がお父様に似て金色の髪を持つのも、青い瞳を持つのも、私のせいじゃありませんことよ。
「……私だって金の髪に青い目さえあったら、アウグスト様に好かれたわ!」
「多分、アウグスト様はだれでもよかったのですわお姉さま、私でなくても」
「ふざけないで!」
ヒステリーを起こして、私に本を投げつけるお姉さま、私が王太子殿下の婚約者にきまってからいつもこれでした。
お姉さまの茶色の目や髪は、お母様譲り、私はとても好きでしたが。
私とお姉さまは母上が違いました。
お姉さまのお母様は公爵の娘、私は伯爵の家の出である母を持つので、お姉さまのほうが格上なのです。
扱いもそうなのに、みんなお前ばかりをかわいがるとお姉さまは怒るのです。
容姿はそれほどは違いはないと思います。
髪と目の色が違うだけです。
お姉さまだってかわいらしいといわれるお顔をしていますのに、お前みたいな容姿と色彩であればといつもかわいらしいお顔を歪めて言うのです。
私はお姉さまを嫌いではありませんでした。
昔、庭で犬に襲われた私をかばってくれたこともありましたのよ。
でも社交界に出て、私の色彩は珍しくとても美しいといわれるたびに姉はゆがんでいきました。
そしてお前の顔は嫌いだといつもなじるようになったのです。
私はそろそろ縁談が来るので、私とお姉さまが結婚してこの家を離れれば、ある程度お姉さまのイライラもなくなるでしょうと黙ることにしました。
言い返せば言い返すほどお姉さまが怒るのですから。
「……さすがに人のものをとるのはいけないと思いますのよお姉さま」
私は寝台の上にいる二人を見て、言いました。ええ、私はアウグスト様のお部屋で、二人が……。
どうしてこんなときまで冷静なんだとアウグスト様が吠えます。
でも、さすがにこんなことまでするとは思いませんでした。
私は女好きで、どうしようもないアウグスト様のおバカなところも割と好きでしたのよ。
「……お前が悪いのよ、アウグスト様に冷たくするから!」
「はあ、いいわけですか、へえ」
私は目をいったん閉じて、だれかきてええと叫びました。すると姉とアウグスト様が大慌てで私をとめようとします。でももう遅いですわ。
扉にかぎはかかっておりませんでした。間抜けですわ二人とも。
「どうしました、ってえ? え?」
「誰か陛下をおよびください、そしてこの不義密通の処分を」
私だって我慢しておりましたの、お姉さまに本を投げつけられたり、お前の顔なんて見たくないと怒鳴り散らされても。
でも人のものを取ろうとするなんてね、駄目ですわよ。
「お姉さま、もう私の顔などたぶんこれから見られませんわ、よかったですわね」
にっこりと私は笑うと、あんたはだから性格が悪いといわれるのよとお姉さまは吠えました。
誰がこんなにしたと思われますの? あんたの顔なんて見たくない、あんたなんて大嫌いだといわれ続ければ、どんな人間でもひねくれますわ。
でもお姉さまだからいつか仲直りできると思ってましたのに。
「……他に申し開きがあるのなら、陛下のもとでどうぞ」
私が笑うと、ひいっとアウグスト様が恐れたように身を引きます。
裸だから外に出られないのですね? 間抜けですわ。
私はこれから二人がどうなるかななんて思いながら、陛下が現れるのを見ました。その顔を見た途端、ああ、これは追放コースではなくて、下手をしたら……。
さすがにそれはどうかなと思うので命乞いだけはしてあげますと私は思い、二人ににっこりと笑いかけたのでありました。
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