表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

二日目:中流作家のこげまりさん

 二日目。


 今度は、都内の一戸建てにお邪魔する。


 この家の奥様も、なろう作家さんらしいけど……


 あ、玄関前を掃いてる。こんにちは。


「ああ、ちょっと早かったんですね、こんにちは」


 すみません、早かったですかね?


「もう子どもを幼稚園に送り届けた後ですから、大丈夫ですよ」


 ああ、ママさんなんですね。


 お邪魔しまーす。


 彼女はなろう作家のこげまりさん。


 三階建ての一軒家。その二階のリビングで、いつも執筆してるらしい。


 ふーん、こげまりさんは恋愛小説を書いているみたい。今書いているのは、どんなストーリーなんですか?


「今書いているのは、貴族令嬢の追放物語ですね。無実の罪を着せられ、一方的に断罪される。そこから山にこもってスローライフをしていたら、同じく追放された放浪中の王子様に出会うんです」


 へー、面白そう。


 評価とブックマークって、見せて貰ってもいいですか?


「今、ブクマは540件で、総合評価は1572ptですね」


 えっ。凄いですね。pvはどれくらい?


「更新日に5000行くかな?と言ったところです」


 じゃあランキングに載ったりなんかします?


「全然!これぐらいじゃランキングなんか引っかかりもしませんよ。異世界恋愛ジャンル、激戦区なんで」


 異世界恋愛ジャンルというのがあるんですね?そんなに読まれても、ランキング入りは難しいんですね。


「そうですね。一回でも載ると、急に評価が入り出すらしいですよ。面白いですよね」


 なるほど。面白い、か……。


 こげまりさんは、設定集やプロットとか、作ったりします?


「いいえ。作ったことは、ないです」


 ええっ。じゃあTwitterで見つけた仲間と作品を読みっこしたり……


「ないです、ないです。そんな時間があったら書きます」


 そうなんですね。じゃあ、どんな感じでお話を書き進めているんですか?


「ストーリー展開を投げてみて、評価やpvが伸びたらそのエピソードを膨らませます。逆に反応が悪ければ、短めに切り上げます」


 それってもはや、ライブですね。


「そうですね。なろうって、単に小説を発表する場……ではないと思うんです」


 へー。


「読み手と一緒に作るものだと思ってます。だって本当に小説を読みたい人は、本屋か図書館に行くでしょ?」


 確かに……


「気楽に手軽に読めて、作者にも話しかけられるっていう、特別な空間なんです。だからボールを投げ合うような感覚で、試作を詰めていく感覚ですね。書いてる最中に反応が貰えるって、凄いことですから」


 本当に、そうですね。


 こげまりさんが執筆するきっかけって、何かあったんですか?


「月並みですけど、本が好きなんです。で、読みまくってたらいつの間にか読みたくなる話がなくなっていて、じゃあ書こう、と」


 それで書けるんだから、凄いじゃないですか。


「それは常々思っていて……お話を書く、って結構な特殊技能だと思うんです」


 本当に、そう思います。


「それを肝に銘じて書いてます。多分、私は誰かが読みたい話を書いている」


 はい。


「自分の哲学や好みをこう!って書いてもいいんだろうと思うんです。でも、なろうの読者がそれを望んでいるかどうかは疑問です」


 そう聞くと、なろう作家さんって作家って言うより、職人みたいですね。


「それはあるかもしれません」


 こげまりさんは、これが初めての作品ですか?


「そうですね」


 初めてでこの評価は凄いですね。


「うーん、書きながら、まだ誰かの真似をしているなって感じていますから。これからが本番……かな」


 なるほど。オリジナリティを出して行きたい、と。


「でも、職人は誰かのためにオリジナリティなんか出しませんからね。今、葛藤があります。オリジナリティ対、模倣」


 そこにも葛藤が。


「やっぱり見てもらいたいですからね。馴染みのない話なんか書いても、誰も見に来ませんもの」


 はー。難しい問題ですね。


「そこを突破するには、やはりファンの存在が必須だと思うんです」


 ファン、ですか。


「なろうで言うと、逆お気に入りさんの数でファンの人数が分かります。私は15人」


 ブックマーク500あって、ファンは15人!?


「そんなものですよ。いくら見られても評価されないのがなろうですから」


 厳しいですね、なろうの読者って。


「厳しいと言うより、ランキング外の作家なんか眼中にないのが基本です。無関心なんです。だからランキングに載らない間に得た逆お気に入りユーザーは、めちゃくちゃ貴重です」


 なるほど。じゃあファンをつけてから、独創性にチャレンジして行こうと?


「そうですね。跳べる勇気を貰えます」


 そっかぁ。普通の小説や漫画に必須とされている独創性は、なろうでは余り受け入れられないのかぁ。


 不思議だけど、七十万作品もあってやっぱり数が多すぎるから、はなからジャンルや的を絞って書くしかないのかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一日目の彼への疑惑が深まるやりとりが……! 初めての小説、自分のファン、自分の投げた物語に揺れ動く読者の反応をみて試行錯誤していく。 生き生きとしていて応援したくなる作家さんだなぁ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ