基礎的なこと③
この前の練習の終わりに会社で基本的な知識を載せた資料をもらった。
教えてもらった属性の相性。そしてそれぞれの属性には進化系がある事。
火は炎。水は氷。風は嵐。土は岩。雷は裁。
他の属性としては光、闇、音、無があるらしい。
さらにバトルスーツには、それぞれベースとなっている生物の能力が備わっている。バトル創設当初は十数種の動物限定だったけど、年々動物の数は増えていってる。それに加え昆虫も少しずつ増えているとの事だ。
そして個人個人にはそれぞれランクがあるらしく、バトルでの勝敗や貢献度の個人成績で昇格がある。
ランク一覧表にはレベル1〜10まであり、各レベル事にブロンズ、シルバー、ゴールドの三つが分かれていた。
ランク1B 『スタートはここから』
ランク1S
ランク1G
ランク2B
ランク2S
ランク2G
ランク3B
ランク3S
ランク3G
ランク4B
ランク4S
ランク4G
ランク5B
ランク5S
ランク5G
ランク6B
ランク6S
ランク6G
ランク7B
ランク7S
ランク7G
ランク8B
ランク8S
ランク8G
ランク9B
ランク9S
ランク9G
ランク10P 最高クラスはここ
一番下位ランクがレベル1のブロンズで高いのがレベル10のプラチナだ。
僕は新人だからレベル1のブロンズだな。
3
1週間が経つのはとても早かった。
あれから毎日岡本さんに教えてもらった基礎を中心に一人で練習を続けた。暗く人気が無い場所での練習は果たして自分がどういう動きをしているのか?これで正解なのかさっぱり訳もわからず、とにかく教えられた事を思い出しながら続けてみた。
ゴールデンウィークまで後3日。今夜は1週間ぶりにメンバーが集まって練習をする。
ただ今回は前回来てなかった北川を中心に教えつつ、僕にも岡本さんが付きっきりで教えてくれるとのことだった。
「よし、早速先週教えた基礎のおさらいをしてみようか」
例の倉庫で岡本さんと向き合う形で早速ファイティングポーズをとる。
「いい形してるね〜まずは殴りの基本からいこうか」
先週教えてもらった殴りの基本を岡本さんに向けて打ち続ける。
グローブミットがパスッ、パスッ、と相変わらず情けない音をしていた。
「もっと強く殴れ!」
岡本さんの気合いに応えようと必死に打ち続ける。あっという間に体力は削られていく。
続いては蹴り技。前蹴りや回し蹴りを同じくミットに蹴り込む。
「もっと!もっとだ!」
息も上がり、段々と蹴りの力強さが弱くなっていく。練習が終わる頃にはハアハアと完全に息が上がっていた。
「疲れるの早いよ〜」
言って僕にミットを渡した。そして次は岡本さんがファイティングポーズをとる。僕は慌てて受けの態勢に入った。
バスーン!バスーン!バスーン!バスーン!
岡本さんの強力な殴りと蹴りに受けている手や腕がビリビリと痺れていく。終始吹き飛ばされるのを堪えながら早く終われ!と祈った。
ようやく終わった時には完全に腕の感覚が無くなっていた。
「攻撃だけじゃなくて受けの練習もしないとね。まずは並以上の耐久力を付けないと敵の攻撃一発でダウンてこともあり得るから。そしてスタミナもつけていこう!」
「は、はい!」
繰り返す岡本さんの打撃に必死に食らいつく。早く終われ!早く終われ!と再び心の中で叫びながら受けていた。
数を数える岡本さんの動きが止まった。やっと打撃が終わったのだ。
「はい交代」
倒れそうな僕からミットを奪い取り、受けの態勢に入る。
「早く前蹴り」
岡本さんに急かされ、フラフラながらも慌ててファイティングポーズを取る。ジンジンと痺れている腕は赤くなっていた。
ポフッ、ポフッ、ポフッ、
相変わらずの情けない音に蹴っている自分自身が恥ずかしくなる。
スーツに変身してからの練習も容赦なかった。それ以上に過酷な練習をしてたのが向こうの4人だった。
北川を鍛えるために武田さんや女性2人が練習していた。
岡本さんとの練習も一通り終えたとこで武田さんと合流する。
その後3人対3人のバトル形式や5人での連携の練習を軽くおこなった。
今日が練習初日だった北川はついていく事も出来ず、半分以上は見学という形に。後々岡本さんとマンツーマンで、僕がしたように基礎の練習を始めた。
事務所に戻ると、北川専用のバトルブレスレットが届いており、早速北川はやり方を習いながら初めて変身をした。
煌く光に包まれる北川。彼は一体どんなバトルスーツなのかと皆が注目する。
「あ」
姿を見せたのは茶色と薄黄緑に触覚の生えた姿。
「え!?ゴキブリ!?」
土端さんの言葉に騒然とする女性陣。
「ん〜多分ゲンゴロウじゃないか?熟練度を上げていけばスーツも進化して形態もより頼もしく強くなる。今は頼りないかもだけど、きっと心強い戦力になるよ」
「でも、見た目は結構ゴキブリよね、、、私ちょっと苦手、、、」
岡本さんの説明を聞きながら土端さんはカタカタと震え
「それになんか、怪人みたいだよね」
と笑った。
「でも、強くなりそう」
岸江さんが北川の腹の辺りを軽くパンチする。
「うう」
急に頭の部分から白濁した液体が出て岸江さんの頭にかかった。
「え?」
急激な臭いが部屋中に充満した。
「クサ!?何これ〜!?」
全員が鼻をおさえて逃げた。頭に被った岸江さんはうえ〜と言いながら何処かに言ってしまった。
「これは多分ゲンゴロウの防御行動かもしれん、、、たまらん、、、」
鼻をおさえた岡本さんも逃げるように外へ飛び出した。
「変身を解け!」
僕の言葉に慌てて変身を解く北川。すると忽ち臭いも消え失せる。なんて能力だ。
北川がゲンゴロウ。僕は鳥。でも鳥といっても一体何の種類なんだろう?沢山種類があるし、それによって能力も違うだろう。ただ、今はまだ熟練度も0だから、これから分かっていくのだろうか?
3日間はあっという間に過ぎた。
明日からGW3日間、毎日戦う事になる。北川がサブになり、武田さん、岡本さん、僕、土端さん、岸江さんがバトルメンバーに。そしてサポートに末光さんという女性の方が入った。
「明日から3日間、大変だろうけど、体調、ケガに気をつけて乗り越えよう」
『はい!』
事務所を後にし、僕と北川と中村は3人連なって自転車を家路へ向かう。
中村は僕達とは別の班。僕と北川の班の他にも4班チームは動くらしい。
という事は一班7名編成だから、少なくとも28人は居るって事か。まだまだ知らない人が沢山いるんだなあ。
この時はまだ知らなかったが、どうもGWというのは1年で一番忙しいイベント行事らしい。それだけにメンバーの数も必要とするため、普段レギュラーじゃない人とかも呼び出される事もあるとのことだけど。
段々と暖かくなってきた日中に比べ、夜はまだまだ冷える帰路を急いで自転車を漕いでいく。明日からの戦い、、、今まで感じた事のない感情で僕の心はいっぱいだった。