始まりは突然すぎる④
[TS拠点壊滅。よって爽チーム勝利!]
「チ!もう破壊されたか!?」
「勝ったの?」
「武田さんがやったのよ!よっしゃー!」
大歓声が僕達を包んだ。客席を見れば、多くのお客さんが興奮した姿で歓喜の声と拍手を送っていた。
「すごい…」
僕は思わずそう呟いていた。
「お疲れ様。新井君があそこで止めてなかったらギリギリで負けてたわ。本当にありがとう!」
川崎さんの声に照れてしまう。
「いえ、僕は何も」
武田さん達は一通り会場の人達に手を振り声援に応えた。
瞬間、広大なフィールドが消え、さっきの控えテントに転送される5人。
変身を解いた5人。武田さんがお疲れ様。と労いの言葉をかけてくれた。
「手伝ってくれてありがとうな。おかげで助かったよ」
本田さんが僕に声をかける。
「はい。あの、お疲れ様でした」
照れながらそう言葉を返した。それを聞いていた武田さんはニコッと笑顔を見せていた
「どうだった?」
帰り道、陽は西に傾き、空も夕焼けの姿を見せ始めていた。田んぼ道が続く中、自転車を漕ぎながらさっきまでの事を思い返していた僕に中村と北川が感想を聞いてくる。
「よく分からないまま終わったけど、とにかく緊張した〜でも楽しかったよ」
あっという間の時間だった気がして、バトル中の事はあんまり覚えていない。でも緊張した事と、終わった後のステージから見たお客さんの歓声はしっかりとこの目と耳に焼き付いていた。
「俺達やっていけそう?」
中村の質問に僕は頭を傾げる。
「ん〜多分。楽しかったから。やっていけそうな気がする」
「そうか〜」
僕の答えになるほど〜と言った表情を見せる。
「外から見ていてどうだった?」
僕が戦っている間、中村と北川は外からステージを見ていた。僕やこのバトルがどう見えていたのか、非常に興味があった。
「武田さんすごかった。蒼太が戦っている時、一人で敵の拠点に攻撃しかけてたんだけど、相手3人がかりやったんよ」
「3人?こっちに3人いたから、あと2人じゃないっけ?」
中村の言葉に疑問を投げかける。
「サブ枠があるやん?よく分からんけど、向こうがサブも参戦してきて武田さんと3対1やったんよ」
なるほどサブメンバーが向こうにはいたのか。システム的に誰かと交代じゃないみたいで追加参戦が出来るみたいだ。そこら辺の説明はまた会社行った時に教えてもらうか。
「武田さん、3人を蹴散らして拠点破壊したんよ。早かった〜」
北川があの戦いを思い出すように空を見上げながら語る。
敵3人相手に一人で蹴散らして拠点を破壊するなんて…確かに凄い。その姿を見たかった。
「お客さんの声がすごかった。あんなに人気があるんだな〜って思ったよ。俺、初めて見た」
呟くように喋る中村。僕はバトルに夢中でよく分からなかったけど、きっと戦ってる間応援してくれてたんだろうな。
「凄いバイトだねこれ」
「誰だよ最初着ぐるみなんて言った奴は。全然違うじゃん」
3人は笑いながら自転車を漕いだ。