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スーツアクターバトル  作者: ハムモツ
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ベストメンバー③

「あ!」


 本田さんが叫んだ。ステージに目をやると、福西さんの攻撃を受けていた金井さんが膝をついていた。ダメージの蓄積が極限に達したのか?それでも何とか立ち上がろうとする。


「どうした!もっと来ないのか!?」


 福西さんの叫び声がここまで届いた。気迫ある声だった。

 金井さんが痛みを堪えながらも次の攻撃に入る。

 その攻撃は今までを凌駕するものだった。きっと渾身の一撃なのだろう。強烈なパンチは福西さんを思いっきり吹き飛ばし、近くの壁に激突した。

 一瞬金井さんが勝った!?と思った。しかし、すぐに立ち上がる福西さん。瓦礫を押し退けながら笑い声が響いた。


「そう!そうだ!そうこなくっちゃ楽しくない!」


 金井さんに近づいていく。金井さんは再び膝をついた。


「化け物のように強い」


 本田さんが呟く。


「あの金井さんを押している」


 福西さんが再び殴りかかってきた。それを受け止めずに両手で絡みとるようにしながら押さえ込んだ。


「殴り合いを避けた!?」

「きっと体力の限界なんだろう。ルール上は何ら問題ない。だが、気持ちでは敗北だ」


 本田さんの言葉に横山社長が答える。

 押さえこまれた福西さん。しかし、力で金井さんを投げ飛ばした。金井さんは何とか着地するが、ダメージの蓄積が足にきており、よろけている。


「このままでは金井さんの負けだ」


 本田さんの言う通り。このままでは誰が見ても明らかに金井さんの負けは見えていた。

 しかし、ここで金井さんの周りに強烈な風が舞う。


「あれは、ソウルウェポンを出すつもりだ」


 本田さんが叫ぶ。


「金井のソウルウェポン。あの3位決定戦以来、久しぶりに見るぞ」


 横山社長が呟く。

 金井さんのソウルウェポン。強烈な風に包まれ姿を表したのは薙刀だった。

 その長さは3メートルはあるだろうか。とても長い柄の先に鋭く反り返った刃。

 金井さんは頭の上でクルクルと回し、出来た風の刃を福西さんに放った。

 鋭い風の刃を、しかし福西さんは微動だにせず立っている。

 当たる瞬間、体は大きくのけぞった。風の刃は壁に突き刺さり消える。刺さった壁は鋭い刃物に傷付けられていた。きっと避けていなかったら福西さんは大ダメージを受けていたかもしれない。


 福西さんも両手に力を込める。


「おいおいまさか福西も出すんじゃないだろうな?」


 横山社長が驚きの声をあげる。

 ソウルウェポンを出すのか?

 福西さんの込めた両腕が怪しく輝き出す。それを黙って見守る金井さん。

 やがて生まれたのは両拳を覆った巨大なグローブのようなものだった。左右の拳を軽くぶつける。そこに発生する雷の柱。


「これが福西さんのソウルウェポン!そして属性である雷の柱を融合した力!?」


 本田さんが驚きの声を上げた。僕や他のみんなも固唾を飲んだ。今目の前に起きていることが凄い闘いだってことが嫌でも分かる。高いランク同士の戦い。そして漢と漢の闘い。

 ソウルウェポンは体力の消耗が激しいと聞いた。きっと決着がつくのは早いはず。それともランクが高ければあまり関係ないのか?

 二人が駆け出す。雷の柱がバチバチの福西さんと巨大な薙刀に強烈な風を閉じ込め一撃必中を狙う。

 その両者が真っ向からぶつかった。



 バチーーーン!!!



 耳をつんざくような音が響き渡った。

 瞬間的に光が全員の視界をゼロにした後、視力を回復したみんなが見た光景は、交差した二人の姿だった。

 福西さんは風の刃が体を切り刻んでいる。対して金井さんは地に倒れ、煙に包まれていた。

 身体を切り刻み続けている風の刃を自らの拳で天を突き上げるように上げ、断ち切った。

 この瞬間、福西さんの勝利が決まった。

 誰も声が出なかった。あまりの凄さに。

 と、立ち上がろうとする金井さん。そのボロボロになった体を、煙が舞う体を起こそうとする。


「金井さん!まだ戦う気だ」


 その根性に僕は完全に言葉を失った。それに呼応するかのようにお客さんの歓声も蘇った。


 金井さんは立ち上がった。そして、一歩福西さんに向かった所で再び倒れた。



 ピーー



 そして30分の時間が終わった。


『このバトル、勝負は引き分け!』


 MCの審判が降った。

金井✖️  福西○ 

武田△  伊野田△

岡本✖️  夜月○

八木野○ 大貫✖️

杉尾○ 大河✖️


 二勝二敗一分という結果だった。


 バトル後、僕達は裏の控えへ向かった。

 控えでは激闘を繰り広げた先輩たちがいた。


「お疲れさです!」


 みんなで挨拶をする。それに疲れを残しながらも笑顔で返す先輩達。


「みんな見に来てくれてありがとね」


 八木野さんが微笑む。


「凄いバトルでした!ホントに凄くてカッコ良かったです!」


 感動を隠せない本田さん。有崎さんて人も同じく溢れんばかりの感想を疲れている先輩達にぶつけていた。


「よ〜お疲れさん」


 ふと入り口から声が聞こえ、みんなが視線を向けた。そこには福西さんを始め、バトルで対戦した五人が立っていた。


「お疲れ様です!」


 僕達新人が丁寧に挨拶を返す中、他の先輩や対戦した先輩みんなが元気よく挨拶を返した。


「金井、体大丈夫か?」

「大丈夫です!福さんにはまだ敵わないです」


 福西さんの呼びかえに答える金井さん。夜月さんに対しても武田さんが後輩丸出しで答える。こんな先輩、見たことのない光景だ。いや、これが先輩に対する礼儀というやつなの?

 後々知ったが、福西さんは爽が出来た時に最初にバイトで入った第一期のメンバーらしい。そして夜月さん、伊野田さんも同じく爽に在籍していた。大貫さんと大川さんは荒尾で立ち上げたエクストラからの加入らしい。

 こんな化け物が元メンバーだなんて。やはりうちの爽というチームはとんでもなく強いんだな。

 来月一二月から一月にかけて荒尾にある緑の国という遊園地で爽の大きな祭典があるらしい。その祭典に僕達新人も参加するという事。


 トイレを済ませ、自販機でジュースを買いに来た所で中村とバッタリ遭遇した。

 中村は最初驚きの表情をしたが、すぐに固い表情になって自販機に視線を移した。


「なあ」


 僕は中村に声をかけた。


「、、、」


 しかし返事をせずジュースを買う。


「何に対して怒ってるのか分からないけど返事くらいしたらどうなん?」

「、、、」

「黙ってても分からんやろ?」


 買ったジュースを一口飲み、僕をチラリと見た。


「お前のそういう態度が嫌いなんよ」


 中村が言う。


「は?なんの態度?」

「なんでお前と遊びに行かなくなったか分かる?」

「分からん。ちゃんと話せよ」

「ああジュース不味、、、」


 そう言い残して去っていった。意味が分からない。何をしたっていうんだ?ちゃんと言ってくれんと分からんのだが。

 結局中村とは相変わらず不仲のままだ。こうなった切っ掛けを考えてもさっぱり出てこない。こんな状態がいつまで続くんだろうか?


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