勝ちと負け⑥
バトルが始まった。
今回僕は高村さんと、有沢は八木野さんと組んで攻め込み、金井さんが後方から全体を見ながら進む。
前回有田で一緒にバトルした高村さん。犬型のバトルスーツでランクは1Gだ。
敵陣地までのルートは一箇所のみ。つまり固まって進めば背後を取られる心配もなく戦えるということだ。
「新井、敵が現れたら俺が戦闘に入るからサポートを頼む」
「はい!でもサポートってどうするんですか?」
「武器で攻撃したり、他の敵に対応したり、かな」
「分かりました!」
「来たぞ!」
八木野さんが叫ぶ。
前方から現れる五つの影。敵だ!
相手は前に対戦した人。ゴリラアクターの佐藤さん、スネークアクターの橋本さん、そしてネコ科の竹内さんに鳥科の林さん。で、今回初めて見る向こうのチームリーダー牧田さんて人だ。牧田さんはワニのバトルスーツみたいでとても力強そうだった。
「高村はスネーク!八木野はゴリラに当たるんだ!」
「了解!」
金井さんの指揮に従い行動に移る。
八木野さんがいち早くゴリラアクターの佐藤さんと激突した。八木野さんのバトルスーツは同じ猿科だ。つまり猿対猿の戦いになる。敵の佐藤さんと体当たりするようにぶつかった。そのままお互い両手をガッチリと掴み力の対決に入る。どちらも互角の力だ。
八木野さんとタッグの有沢は後ろから様子を窺っている。
高村さんも金井さんの指示に従いスネークの橋本さんにぶつかる。
高村さんの繰り出す攻撃に橋本さんはクネクネと避ける。そんな二人の後ろから現れるネコのバトルスーツ。
すぐさま僕は応戦に向かった。
僕の繰り出す殴りに絡むように受け流し、背後に回られる。
そして蹴りを背中に食らいヨタヨタと前のめりに倒れた。
「あんた新人?」
「そうです」
ハスキーな女性の声に答える。竹内さんというネコのバトルスーツは身につけたアクター。
「そう。少々痛い目あうけど、覚悟してね!」
そう言って突っ込んでくる。右手に武器が見えた。
僕もすぐに鞘を持ち出しエネルギーを込めて剣を作り出す。
剣から生まれたエネルギーの刃が相手のエネルギーの刃とぶつかる。
「く!」
衝撃を感じた。でも圧倒的に負けてはいない。なんとか耐え凌げる。
そう思った矢先竹内さんの回し蹴りが脇に入る。浅かったが、バランスを崩すには十分だった。
上から振り下ろされるエネルギー剣に対応できない。またやられる。
ガキイイイン
横から入った別のエネルギー剣が受け止めていた。そのまま弾き返す。
見ると有沢が僕の目の前に立っていた。
「大丈夫?」
「あ、、、八木野さんと組んでたのに何で?」
「八木野さんは一人でも大丈夫。相手を圧倒しているから」
見れば、猛烈な勢いで八木野さんが攻勢を仕掛けていた。その一つ一つの攻撃がよく分からない食らい速い。
「私たちはこの人を倒そう」
「うん」
二体一。数字的には有利だけど、場数では負けている。
「見たところ貴女も新人みたいね。まあその子よりセンスは有りそうだけど。一人増えたってたかが知れてる」
「人を見た目で判断しないことね。最弱二人でも貴女に勝ってみせる」
キリッと返す有沢。
そうだ、僕は選ばれた五人の一人。たとえ最弱でも勝たなきゃいけない。
僕は立ち上がり構えた。
エネルギー剣を構え、突っ込んでくる。敵の一振りを後退で避けるが、それを見越したようにさらに詰めてくる。これには対応出来ず懐に入られる形になってしまう有沢。敵の一撃を何とか受け止める。僕はすぐさまエネルギー剣を竹内さんに振り下ろす。有沢は受け止めた剣を弾かれる。瞬間出来た隙間に入り込むように僕の一撃を避けた。瞬間、腹部に痛みが。
僕らに背を向けた形で屈む竹内さんの両拳が両サイドの僕と有沢の腹部を突く。
吹き飛ぶ二人。強い。バトル経験が浅いとはいえ、二人でも勝てないのか?
「まだ、、、」
痛みを堪えながら立ち上がる有沢。剣を構え直す。
「そうこなくっちゃ」
有沢に剣を突き立てる竹内さん。僕もまだいける。これだけのダメージで負けるわけには行かない。
「お、まだ二人共いけそうね。さあ、続きをやるよ」
身構える竹内さん。まずは有沢にかかっていく。それに対応しようとする。僕も二人の戦闘に入る。
有沢の振り下ろした一撃は、しかし空を斬る。そのまま避けた竹内さんに追撃を仕掛けるが、竹内さんの膝蹴りがヒットし、ややたじろいでしまう。しかし、浅かったのか、次に振り下ろされた一撃は剣で弾き返す。
その間に僕も後ろから近づく。
「やあああ!」
竹内さんの背後から持っていた剣を振り下ろす。すんでで剣で受け止められ回し蹴りを顔に受ける。怯んだ僕に追撃をしようとした竹内さんに後ろにいた有沢が攻撃する。何とか避けるが、続いての柄での攻撃には対応出来ず顔に食らう。
驚いた表情を見せる竹内さん。
「新人のくせに!」
怒って有沢に向かっていく。有沢も対応し、剣と剣がぶつかる音。
その頭上から僕は竹内さんに目掛けて剣を振り下ろした。有沢に体当たりして僕の攻撃を避ける。僕は追撃で背後から竹内さんを狙う。有沢も次は避けられないように鍔迫り合いで食らいつく。
逃げられずヒットしたかに見えたが、逆にやられたのは僕だった。一瞬何が起きたのか分からなかった。
気づけば有沢も竹内さんの攻撃に倒れる。
「危なかったですね先輩」
「助かった林」
見れば、鳥科の林と呼ばれる人が竹内さんのそばに立っていた。
新しい敵?どこから?
「サブメンバー、、、」
有沢が痛みに耐えるように震えた声を漏らす。
サブメンバー、先発メンバーとは別で好きなタイミングで投入でき5分だけバトルに参加できる。林と呼ばれるその人は今回のサブメンバーで今まさに投入されたということだ。
二対二。実力的にはこちらが不利。