偽りと真実 〜愛の行方〜
どうも、甲斐と申します。この作品は昨今の異世界ファンタジー系とはだいぶ違うジャンルですがそれでも人と人、心、愛、そして運命と呼べるものはあるのかなど私自らが感じたことを物語にしょうと思い作りました。これから定期的に連載していくので良ければ読者の皆皆様にとって少しでも楽しんでもらえるような世界を作り上げていきたいと思います。また処女作として自分の感性や表現力、根気へのチャレンジでもあるので何卒よろしくお願いします。
2020年8月5日、場所は都内のとある駅付近にあるとある喫茶店。その店内にある2人がけの席に座る1組の男女。2人を取り巻く空気は他の客とは異質で、でもどこか暖かい感じがした。
—— prorogue ——
ピピピピ。ピピピピ。ピピピピ。
「もうこんな時間か、、、。仕事いかなきゃ。」
いつもどおりセットしておいた聴き慣れたアラームの音。いつもは3、4個かけているけど今日はなんとか1個目で起きれた。朝と言うにはだいぶ日も昇っていて毎日始発の電車に乗って出勤する人には足を向けて寝れないだろう。
今日もいつものように軽く朝食を済ましてシャワーを浴び諸々の準備を終え至福の一服。これがまあ止められない。そんなこんなで駅へ向かう時間だ。15分に家を出ればちょうどいい時間に職場に着くのでこれがいつものルーティン。
「どうか今日もあまり混みませんように!」
そんな願いを胸に電車に揺られ出勤するのは都心にある喫茶店だ。働いて先月でちょうど1年になる。当初ここまで継続するつもりはなかったが成り行き上と言うか愛着が湧いたとかで今もまだ働かせてもらってる。
それになぜか自分が出勤すると急激に混むこともあって水面下で売り上げに貢献しているという自負すらある。
最近だと新人教育とかそういう基本的な業務外の仕事も任されるようになってきて嬉しい反面少しだけでいい、時給を、上げてくれ。
そんな願い虚しく新人を抱えながら今日も混みすぎる我らの喫茶店は喫茶店というよりかファミレスなんじゃないかと錯覚するほどだ。そんな激しい業務を終え閉店作業を終えた時だった。
「朝霧くん、誰か知り合いとかいない。」
「え、僕ちょっと最近まで北海道にいたのでこっちにそんなに知り合いいなですし、何より歳的に同い年とかはもう就職しちゃってますよ。」
「あー、そっか。そうだよな。ごめんね。そういえば、どう、舞台の方は。」
「いえいえ、お気になさらずに。舞台は一応決まってはいますがまあなかなか上手くスケジュール合わないらしくて、、、。」
「そっちもそっちで大変そうだね。ま、とりあえずバイトの方はなんとかしてみるから、新人とかもし教えてあげられそうならお願いしてもいいかな。俺も俺で発注とか雑務が多くて手が足りなくてさ。」
「はい、できる限り頑張ります。」
「よかった。ありがとね。じゃあ、お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
***
帰り道、電車の中は仕事を終えたサラリーマンたちや学生などでいつもいっぱいで、せめてもの救いが今日が金曜日じゃないことか。金曜日だったら酔っ払いが多すぎてその酒気混じりの熱気でむせ返る。それに、、、
せっかく台本持ってきたのにこんな狭さじゃカバンから出すことさえ億劫だ。目の前の椅子で2人仲良く今日行ったであろうデートの話をしているカップル。
「そういえば、次の舞台は恋愛ものだったよな、、、、まあ、頑張るけどさ。」
東京都生まれ東京都育ち。俺は18歳の高校卒業まで東京にいた。しかし大学進学で北海道に行きそこで4年間一人暮らしを送りながら大学生活を過ごすのだがその途中、ちょうど20歳の時に本当に自分のやりたい仕事に挑戦してみたいと言うことから教師から役者へと見事なジョブチェンジを果たしたのであった。
まあ普通はしないだろうけど、そもそも教師をやる意味を見出せなくて色々悩んでいた時だったから最初は勢いで、それこそザ・若気の至りってやつだったに違いない。
しかしそこから俺の周りの世界はガラッと変わった。見た目にも拘ってジムにも通い、当時住んでた地域で活動していた劇団に入団して芝居しておかげで演技の基礎を身につけることに加え、実生活で以前よりも人前で堂々と話したり自分の意見を伝えたりすることができるようになり、今まで見たことのない景色がそこには広がっていて俺はとても充実していた。
それから大学卒業すると同時に東京に戻ってきて縁があって有名な俳優の養成所に所属し、そこで初めてプロから1年間しっかり演劇を学ぶことができた。
だからこそ、そこを卒業してこっからはとりあえず独力で舞台の出演をもぎ取って知名度を広げて行こうってのに、その最初の舞台がなかなか上手く進まない。それに加えて恋愛ものと来た。
「店長の言う通りバイト先も大変だけどこっちもこっちで大変だよな。とりあえずどっちか片方の問題は解決しておきたいところなんだけどな、、、ん?」
ふと、Blutootheイヤホンからメッセージ受信の通知音が今流行りのJ-POPのサビを遮って聞こえてきた。少しの不快感を眉に出しながらスマホの画面を見ると大学時代の友人から連絡が来ていた。
ーーー就活そっちでするんだけどさ、お前のバイト先って人募集してる。ーーー
彼は大学時代の同期で本来であれば一緒に卒業してるはずだったんだが1年間大学を休学してワーキングホリデーに旅立ったのだ。そして今ちょうど大学を卒業したらしくこれから就職活動をするらしい。
前々から話は聞いてはいたけど正直当時はうちのバイト先を勧めなかった。理由としては喫茶店にしては変に混むし業務もなかなかハードでいくらバイト経験があっても地方出身者で1発目でここは二が重いだろうとの理由だった。それにそれを伝えて彼自身もそこはやめとこうかななんてことを言っていたのだ。
しかし、飲食店でのバイト経験歴や直近でのワーキングホリデーでの経験もあるので個人的に来てくれると非常に助かるのも事実だった。でもそんな理由なしに5年来の友人が同じ職場にいるっていうのは素直に嬉しい。
結果的にそのまま彼は東京に来て一緒に働くことになるのだが、これに加えて当初住む家の条件が厳しいなどのこともあり、彼と俺は一緒に住むことになるのである。それが俺こと朝霧晴人と常田翔のよくわからない共同生活が始まるのである。しかし、これはこの物語のほんの始まりでしかなく、これから俺に起こることのきっかけに過ぎないのだ。
朝霧晴人くんという名前は朝霧で先が見えないような状況でその霧を晴らしてしっかり前へ進んでいける人であってほしいという意味で付けたのですが、着想は夜中から書いていて朝日が目にしみて、朝かぁってところから閃きました笑