主人公
山賊がいそうな宿屋。確かそう表現したと思う。
村で唯一の宿泊施設を前にしてなんともうまく表現したものだと感心した。
この場合、誰の表現がうまかったというべきか分からないが目の前の宿屋が確かに山賊がいそうだった。
「ここか主人公がいるのは。」
「そうだね。」
「じゃあ、中に入って。」
「え?一緒に行くんじゃ。」
「え?やだ。恥ずかしい。」
村娘は顔を赤らめながら言った。
「どうせ、一緒にいるのが恥ずかしいほどみすぼらしいとかだろ。」
「正解。本当に創造主様なんだねー。」
村娘は舌を少し出しながら言った。
この女に感情を揺り動かすのはそれだけそんなのだと肝に銘じる。
「そうだと思うならもっと大切にしてくれよ。」
「大切にしているよ。」
「はー。じゃあ、行ってくるわ。」
「行ってらっしゃい。」
村娘は楽しそうに手を振っているのを背中に感じながら入っていく。
宿屋に入るとギシギシと軋む床板が俺を出迎えた。
扉を開けると不機嫌そうな女将がこっちを見ていた。
「いらっしゃい。泊まりかい。」
「いや、泊りではないんだが……」
「泊りじゃないなら帰れば?」
女将はむすっとした表情をもうこちらに向けることはなかった。
「実は、ここに勇者様が来ていると……」
「客じゃないんでしょ。」
「ああ、そうだが。」
「なら自分で探せば。」
「いや、ここに始めてきたもので。」
「私の知ったことじゃないよ。」
自分の作ったキャラとはいえ腹が立つ。
不愛想にも程があるじゃないか。イケメン主人公に嫉妬して主要人物以外嫌な奴で書いたのが失敗した。
「もしかして、俺に用事なのか?」
振り返るとそこには高身長、サラサラの金髪、青い綺麗な瞳でさわやかなイケメンが立っていた。
目の前で見ると腹が立つほどいい顔だ。同性なら嫉妬をしないものはいないだろう。
もちろん、俺もその顔に嫉妬をした。
しかしそんな様子をおくびにも出さないようにして話しかけた。
「はい。近くの町に住んでいるのですが、うわさに聞いて。駆け付けてきました。」
「ありがとう。しかし自分なんかの為に来てもらって悪いね。」
「いえ、お会いたかったので。」
「知っていたその町まで行ったのにな。」
「いえいえ。申し訳ないです、そんなこと事。」
「そうだ、困ったことないか?」
「困ったことですか?」
「ああ。勇者になったのだから少しでも皆の役に立てればと思ってね。」
裏表がないと感じられる言動だった。俺は不思議に感じた。
「それなら、私の手伝いでもしてほしいものだね。」
「なんですか?何でも言ってください。」
「溜まった洗濯物にすべての部屋の掃除。それに繕い物もやってほしいね。あとはトイレの汲み取りに水も組んで帰途もらいたいね。」
「分かりました。洗濯物はあの部屋にたまっている奴ですよね。」
そう言うと主人公は走ってどこかに向かっていった。