村娘#2
「それは演技なのか。」
「えんぎですか。」
「ああ。記憶が正しければこの村の牧師がいるはずだ、そいつが実は世界を裏で……」
「シッ」
村娘は俺に飛び掛かり口をふさいだ、その目は混乱に満ちていた。
「なぜ、そんなことを…」
「モゴモゴモゴモゴ」
「口をおさえていると話せないか。間違っても変なこと言うなよ。」
「ひどいな。流石最強キャラ。」
「最強キャラ?なんだそれは。」
「誉め言葉だ、気にしないでくれ」
「分かった。」
そのリアクションを見て、ますます村娘は自分が作り出したものだと確信をする。
どこか抜けているがこの感じは当に思い描いたものだった。
「俺は作者だ!」
「作者って?この世界を作った。」
「そうだ!!」
「……」
余計な説明は不要に思えた。これで通じるに違いないと確信はしていたが無言の時間が長引くほどに嫌な汗をかいてきた。
村娘はこっちをじっくりと覗き込んだ。
あまりにもスムーズな動きだったので今の今まで気が付かなかったが手には無駄に刃渡りが長いナイフを握っている。
濁った銀の刃を見るとそれはオリハルコン製の最終武器”DOSS”のように思えた。
もしも、俺の首元にあの刃が触れたら、それこそ豆腐の様にさっくりと切れるような気がした。
「なるほどね。」
「信じてくれた。」
「そうね。まずあたりにあなたの味方はいないのにそんな危険な情報を言うのは考えなしの創造主様でないと考えられないわ。
しかも、自分の魔力上限も考えずに魔法をぶっ放すのも創造主様らしいわ。
それに、間抜けな顔をどこかで見たことあると思ったら創造主様だったのね。」
「あの、様をつければ何でもいいってわけじゃ……。」
「申し訳ないわね、創造主様。」
「まぁいい。そこをどいてくれないか。」
「そうね、もしここで誰か来て、勘違いをされても仕方ないし。」
「そうだな。」
そうはいったものに、俺はその言葉を聞いて誰かここに入って来てくれないかと少し望んでいた。
しかし、願いも虚しく誰も入ってこなかった。
創造主の思い通りにはいかない世界らしい。
村娘は先ほどまでの性格とはまるっきり変わったかのように話しかけた。
「それにしてもどうしてここにきたの……」
「それは……」
「分からないか。分かってたらもっとスマートに動いているよね。」
「そうだな。」
しかし、この性格の方がやり易かった。
素を見してくれているようで嬉しかった。
「ところで、知りたいことがあるんだけど。」
「ものによっては答えるけど。」
「主人公ってもうここにきてるのか。」
「ああ、この前から村で唯一の宿に泊まっているけど。」
「そうか……」
「なに?」
「会いたいの」
「会いたくないといえば、嘘になるな。」
「回りくどい言い方。なんとかならないの」
「ぐっ」
村娘のザクザクとえぐる様な言い方に思わず黙る。
決して嫌な言葉ではなかったが一瞬動揺を覚える。
「会いに行きたいでいいのね。」
「ああ、頼む。」
「じゃあ行くよ。」
「ちょっと待って準備が。必要ないでしょ。」
「いや、ちょっとまって」