6.姪っ子歴19年の経験が教えてくれる
よろしくお願いします
「だからもう二度と、二度と連に近づかないで!
連は、連はあなたの物じゃないの!!
返して!!!」
突然泣き崩した女性を私は“可憐”と言う言葉しか浮かばず、周りからは電車の時と違う痛い視線を向けられる。
となりに座ってる明彦はものすごくめんどくさそうな顔をしているが、私はそんなことなんて関係ない。
「ええっと、なんですって?」
さっきあなたは私になに、「連に二度と近づかないで」って言ったよね、
「連」っとあだ名で呼んだよね、なんかほかの女を嫉妬してる彼女さんの口ぶりみたいだったよね、
それって......
「最近連は私といる時でも心がここにあるずって感じで、そのせいでやっと深まった私達の絆が壊れかけているの。
ねえ、わかってるよね、それってあんたのせいよ、
あなたが連の周りにうろちょろするから連はこうなるし、それに顔を叩くだなんて......」
「。。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。。」
や、やっぱり連次おじいちゃんの彼女さんでしたか!!!
いや、待てよ、
なんか頭の中がゴチャゴチャになりそうだ。
もう一度整理してみましょう:
1.うちのおじちゃんは男が好き
2.うちのおじちゃんにはキラキラリア充達がいる逆ハー......じゃなくてハーレムがある。
3.でもおじちゃんにはこのどう見てもリア充の部類に入る彼女さんがいる。
......ん?どういうこと?
「いや、その、顔を叩いたことは私もちょっとやりすぎたかな~~とちょっと思ったり思わなかったりして、」
そう、今は日本人の社交辞令的なものとして先に謝りましょう。
「なによ、あなた何様のつもり?
ってかあなたみたいな地味で可愛げのない女なんて最終的に連に捨てられるだけだからね!」
確かに私の言い方が間違ってると分かってるけどそんな言い方ないじゃん、
それに私なんか誤解されてる?
いや、私無実なんですけど、ただの親戚なんですけど!
「あの、中村さんは私にガミガミ怒鳴る前にほかのハーレムメンバーのことはいいんですか?。」
先程は偉そうに何か言ってたけどあんただっておじちゃんのハーレムの中でほかのメンバーたちと競い合っているでしょ。
「は?」
「え?」
この反応、まさか、
「ハーレム?誰が?なんの?」
「。。。。。。。。。。。」
“キーーン!!”
うう、頭が痛い。
え、でも、え?
彼女さん、なんだよね。
それなのに自分の彼氏には(普通のハーレムか逆ハーレムはさておき)ハーレムがあることを知らないの?
いや、まさか知らされてないの!?
え!!
それっておじちゃんが、
「う、浮気......?」
「え?」
「な、なるみ?」
私は以前から知ってるよ、おじいちゃん達の前で連次おじちゃんは毎回猫をかぶってることを。
それに今はもう赤の他人みたいになったけど私はおじちゃんが同棲愛好者でも男でハーレム作ってもご本人たちが幸せなら私はそれでいいと思う。
でもまさかうちのおじちゃんが......
「いやなるみ、一旦落ち着こうか、それに中村さんもなにか勘違いしてるんじゃないか?」
「え、なんなの?ってか何!?」
「中村さんは黙ってください。」
「あ、はい、わかりました。」
この人本当に“人を見て話してる”よね、
ほんと、私にはムカつくようなタメ口なのに......
って、そんな感心する暇なかった!
「あ、あの、その、お花摘みに行って参ります。」
「お、お花摘み?」
「ああ、トイレか、いってらっしゃい。」
「オホホホホホ」
お花畑、ではなくお手洗いへ行く道は店内と同じ中世ヨーロッパ風で、私は店内に入ったばっかの時と違い、必死でパパ上とママの携帯に電話をしている。
でも、
携帯の向こう側は冷たい機械の音しか聞こえず、私は想定内だと納得する同時に焦り始めた。
「ほ、ほんと、これは......」
緊急事態だ。
いや、多分パパ上とおじいちゃん達の方はまだおじちゃんはただの好奇心でお酒やタバコを吸ってるだけならばだと思ってるだろう、
だから私はおじちゃんのお目付け役として一緒に住むだけで済んだ。
でも、もしおじちゃんがこんなドロッ泥な関係のど真ん中で、しかも浮気をしてると聞いたら......
ああああ!!
イライラする!!!
思い出せば今日血が繋がった実の親が住んでる実家に帰ったら即追い出され、それに妹の渚は私の前でパパ上が情けでまとめてくれた荷物を何度も踏んでいた。
はあ、
何度も言いますが、私何もしてないよ、まったく、全然何もしてませんよ!
それがどうしておじちゃんが過ちを犯したら私の自由と趣味を犠牲にするの?
いや、その前に私本当にあの人たちの実の娘?
ってか一般的にそこまでする??
勘違いしないで、私があなたたちの実の娘、私があなたの実のお姉ちゃん!!
“イライライライラ”
「。。。。。。。。。。」
“イライライライライライライライラ”
「。。。。。。。。。。」
そう言えばこの通路を少し曲がれば店内に戻らずとも出口に行けるよね、
それにここから駅まで徒歩3分、そして駅からおじちゃんの家まで行くには......
「黒川なるみ?」
ギクッ!
「あ、ああ、中村さん。」
「まさか今から蓮の家に行こうとしてるんじゃないわよね。」
「......ええ、もちろんです。」
鋭い、この人絶対何回も修羅場をくぐり抜けてるはず。
それに......
「あ!いたいた、麻美ちゃんだ!」
ん?この可愛い声、どこかで......
「な、光どうして、それにあんた今日は......」
「うん、収録は1時間延期したんだ。」
やっぱり、おじちゃんの家にいたハーレムメンバー会員2(かわいい系)だ!
って、ハーレム会員と現在浮気されてる女は知り合いなの?
うあ、今までよくバレなかったね。
「え、それってまさか、」
でも明彦といいかわいい系のこの人といい、今時のキラキラオーラがつく人はそんなにメガネとか帽子とか好きなのかな?
「うん、連が......ってあれ?連の親戚さんじゃない??」
はあ、静かにしてフェードアウトしたかったのに、
めんどくさい。
「まあ、これはこれはこんにちは、奇遇ですね。」
「あれ?昨日との喋り方がまるで別人なんだけど、大丈夫?」
あの時は二次元ファンとしての人生を続けて謳歌するため必死にもがいてたんだよ、でも今はもう......
「え?なんのことでしょうか??」
今はもうおじちゃんやおじいちゃん達に私の趣味をバレないようにしなくては。
「え、親戚??」
何、いきなり、
「うん、この子は連の親戚だよ!」
「え、でも、苗字が......」
「ああ、連の本名は黒川なんだ。」
ん?本名?
え、うちのおじちゃん何してるの??
ってか本名隠す仕事って何???
「それじゃあ黒川なるみさんは......」
ええっと、本名隠す仕事、本名隠す仕事、
「あ、まさか麻美ちゃん親戚ちゃんのこと連の彼女だと思ってた?」
例えば探偵?
いや、おじちゃんはそんな汚い仕事を受けないタイプだ。
「うう、いや、その、」
「ほら麻美ちゃん、親戚ちゃんが驚いてる顔をしてるよ、多分本人だって何がなんだかわからないのかな?」
それじゃあスパイ?
いや、あの欲望の塊には無理だ。
「ええっと、まあ、一応誤解したことは謝っておく。でもあなただって連の顔を叩いたでしょ、後で連に謝って、」
じゃあ......
......ホスト??
「それにあなただってわかるでしょ、いま連にとって、いいえ、私たちにとって非常な時期だから連とあまり会わないで。」
ホスト......
ホスト......
「おーい、親戚さん聴いてる??」
ありえる。
「なによあんた、文句あるんなら言いなさいよ!」
思えばおじちゃんの美貌、知性、キラキラオーラ、
そして昨日と今日の観察で分かったおじちゃんの堕ちた生活、
多分、いいえ、間違いない。
おじちゃんは......
「おーい聴いてる??」
「ええ、聞いてますわ、ですがおひとつ聞いてもいいでしょうか?」
「う、うん、
まあ、年上だけどあまりかしこまらなくてもいいよ、光と呼んで!」
「じゃあ光さん、あなたの職業はなんでしょうか?」
多分、だけど、
「「え??」」
「。。。。。。。。。。。」
「ああ、ええっと、連と同じ職業だよ。」
やっぱり、
じゃあ大手芸能事務所で働いている中村さんはただの金儲けの為に付き合ってるのね。
「。。。。。。。。。」
「なによ、黙らないでちゃんと言いなさいよ!」
もしかしたらおじちゃんは中村さんだけじゃなくほかの女も騙してるかもしれない。
それじゃあもしおじちゃんが女絡みのトラブルに巻き込まれたら私が真っ先に狙われるんじゃない?
だって思い返せば私は小さい頃からずっと連次おじちゃんを「おじちゃん」だと呼んでるのに今までみなみと明彦以外誰も信じてくれなかった。
まあ、確かに一般的な家庭の子供に同い年、いや、同世代のおじちゃんを見つけることすら難しいし。
「親戚さん具合でも悪いの??」
もしここで連次おじちゃんを「おじちゃん」と呼んでも絶対に信じてくれない、いや、多分女絡みのトラブルに巻き込まれるに違いない。
そう、だから、
「いいえ、お気遣いなく。
あと中村さんと光さんでしたっけ、申し遅れました、私は黒川連次の妹の黒川なるみと申します。」
私の姪っ子歴19年の経験が教えてくれる、
「今の状況は姪っ子を名乗るより妹のほうが効果的だ」と。
そう、これは私の身を守るため、
仕方ないことなの、多分。
「え、妹!?でも連は君の事「俺の親戚」だって......」
「そうよ、連に兄弟があるなんてこの私も聞いたことないわ。」
はあ、重症だなこれ。
「はあ、すみません。
実は兄にも口止めされてますが事がこうなってしまった以上打ち明けることしかなかったのです。
それに兄はこの仕事をしてる以上自分の妹がトラブルに巻き込まれるのが嫌なんでしょう、ですから自分を指名してくる人達や一緒に働く仲間にまで隠してたのでしょう。」
「え、う......」
「そう、だったんだ......」
「その、すみません、なんか変な空気になりましたね。
ですがお願いします、妹思いで優しいお兄ちゃんを私から奪わないでください。」
まあ、「自分が本当にダメだと思うまでやり続ける」とみなみや明彦と約束したからね。
それに今本当にお金ないし住むところもない。
はあ、早くバイト見つけよ。
「。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。」
あれ、ダメかな?
じゃあ、
「あの、確かに私は兄の顔を叩き、彼の仕事、いいえ、皆様の仕事に支障を起こさせてしまいました。
ですがそれは私が初めて兄が向こう側の人間だとわかったからです、でも私は家にいる兄が大好きです。
ですから、ですから、」
「だから?」
「ですから、もう一度私にチャンスを貰えないでしょうか?!」
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