16 子犬は中毒中
よろしくお願いします
大学で今日の授業が終わり、周りのリア充は今夜の合コンや恋人と今からデートと言う話題に花を咲かせてる。
ち、このリア充どもめ、と言いたいところだが私も人付き合いの為グループの圏に渋々と入っている。
「そうだ黒川さん、黒川さんも今夜の合コンに来る?」
「え?ええっと今日は......」
「ええ、黒川さん今夜予定あるの?」
「へえ、黒川さんが。」
な、なによ、その『黒川さんごときに予定なんかあるの?』って言ってる目は!
だいたい一週間前からK大学のリア充どもと合コンする話になってたよね、それなのにその当日に私を呼ぶなんておかしくない?
いいえ、絶対に何かある。
「ええ、実はお友達とお約束がありまして。」
まあ、嘘は言ってない。
今日は水曜日、多分来ないけどみーくんこと南さんと会う日だ。
まあ、約束は律儀に実行しないとね、どうせすっぽかされるけど。
「へえ、それって何時頃?」
「そうね、もしかしたら少しぐらい遅くなってもいいと思うし。」
うあ、勘弁してくださいよ......
「......7時、いいえ、八時ぐらいなら。」
く、
「良かった!合コンは8時半だし場所は大学から1駅離れたフレンチだし多分いけると思うよ!」
「ま、まあ、そうですの。」
「うんうん、黒川さんが来たら絶対に盛り上がるから一緒に行こう!」
うっざ、私をもう盛り上げ役に認定か。いや、行っても毎回盛り上げ役になってるけどね。
はあ、どうしよう、前回断っちゃったし今回は、
「ええ、わかりました、善処します。」
「やった!じゃあ相手にも連絡しておくから!」
「よかった、正直愛ちゃんが急に来れなくて焦ってたんだ。」
おい、愛ちゃんって誰だ!それに私は善処って言ったけど行くなんて言ってないぞ!!
まったく代打だと分かっても落ち込むものは落ち込むわ......
“ブーンブーン”
今日で何回目か知らないスマホの振動がポケットの中からして、私はスマホの画面を見た途端バッグに放り投げた。
はあ、どうしよう。
連次おじちゃんが私を心配してる事は最初っから分かってる。
でも最初は気まずくて出なかった電話やどうやって返せばいいか戸惑ったメールは今ではもっと返しづらく、
結果、私はおじちゃんからの着信やメールは全てスルーしている。
「はあ、」
幸い連次おじちゃんはこのことをおじいちゃん達にチクっていない。
でもこのままじゃ本当に色んな意味でヤバイ。
「はあ、」
どうしよう、一人暮らし用のいい物件はもう見つかって契約金まで渡してるのに、それなのに......
「黒川さん?」
あ、やべっ、
「いいえ、何も、今夜が楽しみです。」
「そうですね、ふふっ」
「じゃあ後で連絡しますね。」
ああ~
さっきの目、仕草、なんか私を見下してるような......
まあ、確かに私はリア充じゃないからいいけど。
時刻は2時52分、先程より日差しが和らいで風が気持ちいい。
私は例の半個室風の場所で少し早い3時のオヤツと称して某有名メーカーのポテチ(ファミリーパック)をボリボリと食べている。
はあ、礼儀として30分ぐらい待っておこう。
“ブーンブーン”
「はあ、」
どうしよう、また連次おじちゃんだ。
ってか普段だったらどっかに出かけてるよね、こんな時間にかけてきて本当に大丈夫なの?
携帯の振動が収まってからすぐメールが届き、そこにはおじちゃんが私と話し合いたいと書いている。
「はあ、どうしよう......」
「ん?何かあったの??」
「え?」
声の方向へ向くとそこにはいかにも俺はリア充ですって言ってるような人がいる。
そしてなんていうか、チャラそう、うん、おじちゃんのハーレムメンバー第一号よりチャラそうだな。
ああ、もしかしたら、
「みーくん?ですか?」
「ああ、やっぱりなるみちゃんだ!!」
そしてみーくんはぎゅっと私を抱きしめ、気づいたら彼は私の隣に座ってる。
ごめんなさい、前言撤回させてください。
この人全然チャラくない、シイと言えばゴールデンレトリバーの子犬みたい。
ああ、やばい、なんかその柔らかそうな髪触ってみたくなってきた......
「ん?なるみちゃんどうしたの?」
「......いいえ」
いかんいかん、変なこと考えてた。
「それにしてもなるみちゃん本当に来てくれたんだ~~」
「まあ、」
あと数分で帰ろうと思ったんだけど、
それにあんたもすっぽかされると思ったんだ~~
じゃあ最初っから約束するなよ。
そして私とみーくんは空が茜色と明るい青色が混ざる頃までおしゃべりした。
まあ、ここで言っておく、
みーくんリア充なのに私を合コンに誘ってくれたリア充となんか違う。
う~ん、なんて言うんだろう、行動や言葉使いがいいっていうか、彼といるとあまり窮屈じゃないっていうか。
それにみーくんはいつもさりげなく話題を振ってくる。
なんか、社交の場慣れした人ってすごいよね、でも、この人となら友達になれそう。
「なるみちゃん後で一緒にご飯食べに行かない?」
行きたい、行きたいけど、
「ごめん、今日はちょっと、」
「え~~なにか予定でもあるの?」
「うん、クラスの人に突然合コンメンバーに引っ張られてね......」
ほんと、どうして受けちゃったの私!
「へえ、それじゃ後で家に帰ってこの服着替えるの?」
「え?」
「え?」
まあ、合コンにしてはちょっと質素だと思うけど、
「ただの引き立て役で盛り上げ役だからこれで大丈夫じゃない?」
「。。。。。。。。良くない」
「ん?」
「全然良くない!」
ええ~~そんなこと言われましても今からみなみの家に行ったら絶対に間に合わないし、おじちゃんの家は精神的な意味で絶対に立ち寄れないし、実家はもう立ち入り禁止状態になってるし......
「。。。。。。。。。。」
「わかった、じゃあ今から近くのデパ地下に行こう。」
「いや、その、ええっと、」
あそこって影でリア充の溜まり場って呼ばれるほど流行店がいっぱいある所じゃん、
いや、無理、ってか私そんなところに行ったら百パー浮く!
「ああ、ごめん、迷惑だった?」
あれ幻覚かな?なんかみーくんが“しゅん”と子犬のように耳を垂れてる様な......
え、何それ、私は何も悪くないよ、わたしは......うううう、
「ううん、全然、むしろみーくんは本当にいいの?後で予定とかない?」
「予定とかぜんぜんないよ!それに俺なるみちゃんと一緒に出かけたいし。」
ええ子やな~~
ほんと、連次おじちゃんのハーレムにいるどこかの悪魔とは天地の差だ。
「そうだ!これを機にメアド交換しようか!」
「ええ、いいの!?」
やった!私のスマホにある連絡先って家族を除けば両手で数え切れるからチョー嬉しい!!
「うん、あとインスタとかフォローし合おう!」
「い、インスタ、ですか、」
どうしよう、私インスタのアカウント持ってない。
「あ、それにフェースブック、いや、それはちょっと時代遅れか、ツイッターとか?」
うあ、色んなところのアカウントをお持ちで。
ってかあんたまさかSNSの毒にかかってもう自分で抜け出せないとか。
どうしよう、私のツイッターは主に、いいえ、百パー二次元とゲレンドラ様のことで埋まってる、だからといってあって間もないみーくんに二次元ファンだとカミングアウトはな......
「ううん、全然ない。」
ま、そうしとこう。
「へえ~あ、そうだ、じゃあ中国ではやってるウェーボーとか韓国で流行ってるネーバーとかある?」
「。。。。。。。」
何それ、ってかどうしてあんたが国外のSNSまで手をでしてるの!
日本の毒だけじゃなく外国の毒までかかってるとは、
ほんと、大丈夫?ちゃんと仕事してる??
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