13.数え切れない程の嘘 side??
よろしくお願いします
「あ、あの、五十嵐先輩......」
真っ白い雪がゆっくりと落ちてきて世界を一色に染めていく、俺はそんなシチュが、季節が大好きなのに大っ嫌いだ。
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スポットライトを照らされ、キラキラと輝く衣装に包まれながらステージに立つことを夢見る人は何人いるのだろう?
千人?万人?多分それだけじゃない。
だが本当にステージに立てた人は何人?それからファンにエールを送られるのは何人?有名になれるのは何人?
俺は、本当にこのままでいいのか?
暗転から一気に明るくなるステージの真ん中に立ち、俺は今信じ合える仲間と共に歌いながら応援してくれるファンへ最高のステージを送っている。
心を躍らせるミュージック、ファンから貰う暖かい声援、踊れば踊るほど軽くなる俺達のステップ、
ああ楽しい、嬉しい、
いつの間にかかく汗と共に会場の熱が上がっていき、俺達はそれに答えようとステップをもっとかっこよく見せようとする。
そして曲が終盤を迎え、俺達はそれぞれのポジションにつき最後のキメポーズをする。
そこで上がるファンの声中ではたまにメンバーを呼ぶ名前が聞こえ、俺達は心からのお礼を会場に言い渡す。
よし!今回もよく決まった!!
そう、俺は何千何万人が夢見るステージの上に立ち、ファンからエールを貰ってる。
ほんと、数年前まではただの夢だったのに。
「みんな今日はよく頑張ったね、お疲れ様!」
控え室の中で一番目立つマネージャーが一人ひとりを言葉で労う。
ああ、ここで言っとくがこれは一見ただのねぎらいだと見えるが本当はそうじゃない。
「きゃー!連、今日もカッコ良かったよ!お疲れさま!」
はあ、あいつが狙いだろう。
そうだよな、あいつは俺達グリタリングレトラスのセンターで一番の人気を集めてるからな。
いや、それだけじゃない。
あいつは、清原連、本名黒川連次は正統派王子様キャラで世間に知られてチーム内では歌が一番うまいけど本当は影で一番努力しているやつだ。
でもどうしてだろう、ステージの上で歌う歌は人をあんなに明るくて楽しい気持ちにさせるのに一緒に練習するときやたまに行くカラオケボックスで歌う時はまるで別人みたいに暗くて、闇を感じられる。
ま、俺には関係ないけどな、だがそのたまに感じられる闇が近くにいる女を虜にしていることはどうにかしたい。もし俺が正しければこの闇はいずれ俺達グリタリングレトラスを粉々に吹き飛ばす時限爆弾だからな。
「あ、光今日も可愛かったよ~~!」
「麻美ちゃんありがとう!」
はあ、疲れる、どうして俺はこんなカワイ子ちゃんみたいな真似をしないといけないんだ?
その前にどうして俺はこんな顔に生まれたんだ?
いや、俺は母さんにだからこうなってると知ってるけどできるなら父さんや兄ちゃんみたいな男らしい顔と身長が良かったな~って毎日思う。
自分で言うのもなんだけど俺は世間的に『かわいい』と認識されて、身長もたったの173.5センチだ。
あ、ここで言っておくがこの0.5センチを馬鹿にするな、これがあれば四捨五入で174センチになれるんだぞ!すごいんだぞ!
でもな、俺の身長は中学卒業まで本当に普通で、ってかクラス平均よりちょっと上回るぐらいで女の子にもモテていた。
いや、そんなことはどうだってでもいい、でも一番重要なのはあの頃俺の顔は兄ちゃんと似てちょっと男前で、そのため俺はよく先生たちからよく空気みたいに扱われていた兄ちゃんだと間違えられることが多かった。
あ、ここテストに出てくるからよ~く覚えといて!
そんなある日、俺は1年下の女の子に呼び止められた。
俺の記憶の中では彼女と会うのは初めてだが彼女はなぜか「前回はありがとうございます」っと訳わからないことを言ってくる。
でも俺は彼女と話してるうち分かった、この子は、目の前にいる後輩は俺じゃなく兄ちゃんを探していたと。
でも当時思春期に突入する時期だったのかただ頭がいかれてしまったのかわからない、気がついたら俺は彼女と、なるみちゃんとデートをする約束をしてた。
無論、俺と血が繋がった実の兄、五十嵐健人として。
俺と兄ちゃんの実の親は俺が4歳の頃離縁した。まあ、平和に別れたみたいだから裁判ごとにはならなかったし父さんと母さんがそれぞれ一人のこともを引き取っても俺と兄ちゃんは同じ幼稚園、小学、それに中学に通えることができた。
だが俺が**中学に入る頃、兄ちゃんはその男らしい性格とルックスでトラブルに巻き込まれたらしく、それ以来兄ちゃんは自分を空気と一体化するよう励んでいる。
いや、俺的にはそんな励みいらないがな。
一方、明らかに俺、じゃなく兄ちゃんに気があるなるみちゃんはグループ内で端っこに立ちながら控えめに笑う普通な女の子だ。
正直言って、俺のタイプじゃないな。
だが兄ちゃんもそろそろ心の殻から出てこないとマジでニートになりそうだ。だから誰でもいい、誰か兄ちゃんに現状を破らせるなら、そうなれるなら......
いつの間にか俺は休憩のチャイムが鳴るたびに一年の教室へとダッシュし、家の方向が学校から正反対なのに登下校を共にした。
「あ、あの、五十嵐先輩......」
真っ白い雪がゆっくりと落ちてきて世界を一色に染めていき、目の前にいる彼女は緊張してるのか制服を掴んだまま顔を赤くしてる。
ああ、やっぱり来るのか!
だがあの時俺はめんどくさいとかやっと兄ちゃんに引き渡せると思ってなく、自分でも何故か嬉しいと感じてる。
なあ、早く、早く告白してきて、いや、もしなんなら......
......あれ?俺はなんて考えたんだろう?
いや、そんなことは、なあ、
「あ、あの、先輩、五十嵐健人先輩!」
“ツーン”
うう、
なぜだ、彼女は、なるみちゃんはやっと“兄ちゃん”の......
「う、ううう、その、あの、」
待て、
「わ、私、その、初めて会った時から、」
ちょっと待ってくれ、
「す、好きでした!!」
頼む、待って!!
「よかったら、その、付き合って下さい!!」
一瞬時間が止まったように感じ、次の瞬間心まで凍らす風が視界を曇らせる。
どうしてこうなった?
いや、答えは最初っから知っている。
だけど目の前にいる彼女は今まで俺が何を企んでいたのか、今何を思ってるのか何も知らず、ただただ甘酸っぱい青春の1ページを刻んでいる。
「うん、いいよ、今日からよろしくね、恋人ちゃん。」
かけだった。
いつか、なるみちゃんがいつか俺の正体を暴いてくれるんじゃないか、本当の俺を見抜いてくれて、それでも好きって言ってくれるんじゃないかと。
俺はそんな身勝手でクズ野郎みたいな考えで自分でも数えてきれない何度目かの彼女についた......
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