12 かわいい悪魔はお好きですか?
よろしくお願いします
一瞬何かに打たれたような感覚だ。
うそ、まさか、そんなはずはない、
だって私のおじいちゃんの恋人が私の元彼(?)なんて馬鹿げたことこの世に......
でも現実は私をあざ笑うように、目の前にいる彼の姿はどんどん当時の彼と重なっていく。
いや、気づけたなら早く気づけたはずだ。
まあ、確かに見た目は当時より逞しくなり、背はモテる程に伸びてきたけど。
でもあの二次元にいる頼れるお兄ちゃんみたいにホッとする感じ、それに心は熱いのに紳士的な言葉使いや行動、
間違いない、目の前にいる五十嵐健人は私が知る五十嵐健人と同一人物、そして運命は皮肉なもので、彼は今私の法律的に繋がってるおじちゃんと恋人同士になっている。
「あ、あの、顔色悪いですよ、どうしましたか?」
でもこの人はまだ私が誰なのか気づいてない。
まあ、そうだね、何があったのかあまり覚えてないけど多分今の彼にとって私は恋人の実の妹に過ぎない。
ええっと、ああ、うん、確かにいきなり元彼(?)に会ってその人が自分の親戚になる(おばさんになるかおじさんになるかはともかく)ことになったらちょっとぐらい気まずいことはあるけど、うん、そうだね、自分一人でゴチャゴチャ考えても拉致があかない。
「いいえ、何でもありません、お気遣いさせてもらいありがとうございます。」
よし、このまま認識されず彼の世界からフェードアウトしよう。
「。。。。。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。。。。。」
ん?なにかじーと見られてる??
え、どうして、まさかバレちゃった?いや、隠すつもりはなかったけど、
でも、どうしよう、何言えばいい?
例えば普通のリア充みたいに『よ!元気だったか?』とか?
いや、今ではもう恋人でも友達でもないしそれはないと思うがな、じゃあ『お久しぶりですね五十嵐先輩、お元気でしたか?』とか?
まあ、それはそれでいいと思うけどこの状況だったらなんか変だと思う......って、あああああああああ!!どうして私がこんなこと考えなきゃいけないの??
ってかどうしてこんな状況で私の唯一の元彼(?)に会ってしまうの!?
「あの、」
「あ、はい!なんでしょう?」
どうしよう、何言っておく?
いや、その前におじちゃんに土下座しておく?だって五十嵐先輩はおじちゃんの恋人なんだから。
「あの、連の妹さんはどうして俺が**中学出身だと分かったんですか?」
「え?」
「そうだな、俺だって健人が**中学出身だって初めて知ったぞ。」
「ああ、」
やべっ、しくじった。
そうだよね、確かに今日で“初めて正式に話し合った恋人の妹”が何故か恋人にも話していない情報をそのの妹が握っているなんて少しだけ不気味だよね。
まあ、ここは誠実に『実は私も**中学出身なんです。』って伝えればいいのか?
いや、それなら年のつじつまが合わない。
だってそうでしょう、私はおじちゃんと同じ19歳、そして彼は二つ上の21歳。当時私たちが付き合っていた(?)時私は中学1年生で彼は3年生でいた。でも私は今ハーレムメンバーや連次おじちゃんの金づる達に“連の妹”として認識されている。
そう、要するに私は19歳の連次おじちゃんより若くてならない、そうじゃないと妹としてのつじつまが合わない。
仕方ない、今は、
「ああ、実は私も**中学卒で、その頃五十嵐先輩をよく知る先輩に五十嵐先輩このをよく聞いていました。ほんと、私もまさかここで五十嵐先輩に会えると思いませんでした、本当に奇遇ですね!」
嘘はついてない、だって彼にアタックし始めた頃本当に当時の友達と知り合いの先輩から彼のことを聞いていた。
ちなみにその情報の料金はガチで高かった、ってかもう二度とそんな“もの”を買うつもりはない、お金の無駄だ。
「そうなんですか、ごめんなさい、ちょっと気になってて......」
ん、気のせいかな、なんか言いたい顔だぞ?
「あの、どうされましたか?」
まったく見た目以外当時となんも変わらないなコイツ、
そう言えばあの頃私何度も『言いたいことは言って』って偉そうなこと言っていたな......あれ?
でも彼は私が二次元ファンだって知ってるの?
いや、確かにこのことで頭悩ませた事は覚えているけど、でも......
“ピンポーン”
突然に響いたドアベルの音は鋭利な刃物如く彼この気まずい空気を切り、さっきまで思想の渦に巻きに閉じ込められた私は一瞬で現実に戻された。
「ああったく誰だよこんな時間に!」
“ピンポーンピンポーン”
「はいはい今行きますよ!ったく大人しく待ってろっての。」
そう言っておじちゃんは玄関に行き、私と五十嵐健人はリビングの中にふたりっきりになった。
「あの、確かなるみさん?でしたよね。」
「え、ええ」
何、突然?
「あの、あなたが言っていたその先輩は俺をなんて言ってましたか?」
「え?」
ええっと、どうしよう、あの先輩はただ家や友達、それに体のあらゆるところの大きさしか教えてくれなかったしな。
まあ、あの先輩がどうしてそんなの教えてくれたのかってかどうやってそんな情報を得たのか知らないが今そんな情報を彼に伝えたらきっと連次おじちゃんやおじいちゃんの耳にも届いて、もしかしたらあの先輩とつるんでいた私の品行性を疑うかも......
......ダメだ、先輩の情報は絶対に言っちゃダメだ。
“バタン!”
「ったくどうしてお前まで終電逃すんだ?」
「あれ?僕以外に誰か来たの??」
この声は確か......
「あ、連の妹さんこんばんは!それに健人まで、わあビックリ!!」
あれ?気のせいかな、話してトーンがなんか硬いぞ。
「はあ、白々しい......」
いやあんたも心の声ちゃんとしまったほうがいいと思うよ、でもそういえば当時もそうだったような。
でもよかったこれで話を逸らす事が出来る。よし、そのまま帰ってもらうまで持ちこたえよう。大丈夫、リア充どもは空気を読む天才だからこの話はきっと流される。
「で、健人と妹さんは何話してたの?」
「。。。。。。。。。」
あれ?おかしいな、誰がリア充は空気を読む天才って言ったのかな?あれ?
「ああ、なるみさんの先輩が中学時代俺の知り合いだったらしくてな。」
「へ~~そうなんだ、世界って案外ちっちゃいんだね!」
いや、確かに先輩から聞いたって言ったけど知り合いなんて一言も言ってない!!
「ええっと、確かに先輩から五十嵐さんの事を聞いていますが知り合いなど......」
もし誤解されてんなら早く解かないと。
「ええ、そうですがお恥ずかしながら俺は中学の頃あまり目立たない方で、多分知り合いじゃないとこのことを知らないのではと......」
いや、当時スクールカーストで一軍はなくてもせめて二軍って感じだったよね!
ほんと、謙遜っていうか、鈍感っていうか。
「ああ~でもあの頃確か彼女いたよね!ほら、あのグループの隅っこでいつもニコッてしてる2年も下の後輩。」
“ギクッ”
「え?」
うそ、やめて、まさか、
「ああそうだったな、お前ら確か幼稚園からの幼馴染だったよな。」
え、どうして?私の記憶の中ではそんな人いなかったのに!
でも、もしあの時彼がいたら......
「うんそうだよ、僕達はず~っと一緒にいてお互いの全てを知ってるんだ、そう、全てを。」
最後の三文字がワントーン低くなり、そしたら目の前にいる人畜無害な顔をしたあの人はこの状況を楽しんでるようニタっとこっちを見ながら不気味に笑った.
“ゾクッ”と
私は本能で恐怖を感じる同時にまるで細胞のひとつひとつが彼の微笑みで冷たくなったように体は震えている。
“カタカタカタカタ”
「なるみ、どうかしたのか?」
「い、いえ、」
気づかれている、このカワイイ系なリア充に、何もかも。
「連の妹さん本当に大丈夫なの?病院行かなくていい??」
「。。。。。。。。。。。」
まあ、自分でも言ってもなんだけどよく考えたら今の私はあの頃と比べたらまるで別人みたいだったはず、だから五十嵐健人が私を“元カノ”だと認識しなくても理解できる。
でもどうして?
どうして中学の頃論理上何の接点も持たなかった彼が?
「ったくどうしたんだよなるみ。」
「い、いいえ、少しだけ疲れてしまったみたいです、おやすみなさい。」
そうして私は着替えるためリビングを後にして、自分のベットへ向かった。
だが普段は暖かい布団は今では冷たく感じ、頭がごちゃごちゃして眠れない。
何か、何か思い出せない。
いや、私は確かにあのキラキラリア充を知らない、それに付き合ってた(?)頃も接点がないはずだ。
でもどうしてか引っかかる、それがめんどくさいことだと知ってるのに、いずれ付く場所が地獄かも知れないのに、引っかかる。
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