10. 周りが楽しくても自分がそうとは限らない
よろしくお願いします
闇色に染まった夜空の上にまあるい月が星たちと共に踊っている。
“チクタクチクタク”
そんな楽しげな雰囲気の中私は連次おじちゃんの前で正座し、もう何回目か知らない結果発表を冷え汗をかきながら待っている。
「やり直せ。」
「ええ!またですか!!」
「ああ、何か言いたことでもあるのか?」
「い、いいえ、ですが今回はどこが間違っているのでしょうか??」
そう、先程私は見事夜遅帰りを経験し、それに怒ったおじちゃんは私に反省文を何度も書かせているのだ。
「反省の深さが足りない。」
はあ!?ふざけんなこれで何回目だよ!!
ってか仕事大丈夫なの?なんかスマホ鳴りっぱなしだけど!
「う、うう、」
「第一お前は門限を破ったことを反省文に書いてない、それに俺と一緒に晩御飯食べてないこともな。」
え、
「も、門限、ですか?」
初めて聞いたな、それにもう大学生になって門限って......
「は?うちの門限は俺が晩ご飯作り終えるまでの間だろう。」
「。。。。。。。。。。。」
知らねーよ、ってかお前毎日晩御飯作る時間違うだろ!
「何か言いたいことでもあるのか?い・そ・う・ろ・う・さん。」
「い、いいえ、そんな事ありませんわ。」
出て行く、いつか絶対に出て行く!!
でもどうしてだろう、毎回バイトの面接まではいけたんだけど最終的に受からないんだよな。
私ってそんなにダメダメだっけ??
そして私は毎日晩御飯を食べるテーブルにつき、今日の晩御飯の前でお腹を空かせながら反省文をもう一度書き始めた。
ちなみに今夜のはお野菜たっぷりの熱帯ピラフとシーザーサラダに手作り果肉ゼリーというヘルシー系なメニューだ。
「なあなるみ、お前今週末空いてるか?」
「え、ええっとすみません、その日はお友達とショッピングに......」
今週末はみなみと久々にアニメイベントに参加するなんて言えない......
「ほう、前回の会った明彦ってやつか?」
「え、いいえ、ほかのお友達と一緒に行くつもりですが。」
「女か?」
「......ええ、どうかされましたか?」
いきなり何、ってか明彦に態度悪すぎない?
「......そうか、じゃあ次の水曜日は?」
え、何?リア充どもは水曜日に予定を組むの?
「す、すみません、その日も友達とのお約束が。」
まあ、みーくんが来るかどうかは置いといて約束してしまったものはしょうがない。
「ち、」
え、舌打ち?
「そのどっちかをキャンセルしろ。」
は?ふざけんな、
「どっちも大切なお約束なのですみません。」
「。。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。。」
“チクタクチクタク”
「。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。」
き、気まずい、ってか、どうしてこんなに空気悪くなったの?
「......そうか、じゃあいい、あと今週末と水曜日には遅く帰ってくるからその日の朝にあげるおこずかいでなんとかしろ。」
え、大学生になってまでおこずかい制度って......
「はい、ありがとうございます。」
そんで素直にお礼を言ってる私もどうかしていると思う。
まあ、でも今バイト見つけられていないしいいっか。
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一方、とあるテレビ局の中にある控え室にてキラキラと輝くステージ衣装を着た瀬名光とハードボイルドな私服を着た五十嵐健人は目の前にいる自分のマネージャーが外では絶対に見せない黒い表情で電話してるのを黙って見守っている。
“プルル、ぷルルルルルル、プルル、かちゃ”
『お掛けになった電話番号は......』
「ああもう!!連ったらどうしてでないの!!」
“バン!!”
そしてとうとう堪忍袋が切れてしまった白い愛されワンピを着た女はスマホを捨て、地面と激しく接触したそのスマホの画面はバキッっと割れてしまった。
「まあまあ麻美ちゃんいいじゃん、きょうは連のオフの日でしょう。」
「瀬名くんは黙ってて、それに今日は月に一度グリタリングレトラスのメンバーで晩御飯を食べに行く日よ!
それなのに、それなのに!!」
「ええ~~でも毎回みんなのスケジュールのせいで誰か欠席してるでしょう。」
「でも今日はそうじゃないでしょう、今日は連に色々聞かなくてはいけないのに......」
そんな泣きそうなマネージャーに五十嵐健人はティッシュを渡し、心配そうに彼女を見ている。
「中村さんそれって、」
「ええ、黒川なるみ、連の妹の事よ!
だっておかしくない?連は一度も私達に妹がいるなんて言った事ないし今みたいに晩御飯は自分の家で食べようなんてしなかったのよ!
それってまるで突然妹ができたようじゃない!」
「うん、それは僕もちょっとおかしいと思う、でも、」
「でもじゃないわよ!それに連の高校時代の友達やアメリカにいた時お友達にも聞いてみたんだけどその人たちも連に妹がいたなんて知らなかったのよ!」
「うあ、」
「ま、麻美ちゃん......」
「なによ、それぐらい普通でしょ!
忘れないで、あなた達はグリタリングレトラスなの、アイドルなの!
確かにこの事務所はアイドルでさえ恋愛はOKなんだけど連は未成年なのよ、まだ保護段階なのよ!
だから私は全部洗い出して黒川なるみと連の間柄をキッチリ調べてみせる。」
「はあ、頑張るのはいいですけどあまり無理しないでくださいね。」
「そうだよ、それにもし黒川なるみと連が本当に兄妹じゃなかったらどうするつもり?」
「いや、俺はそんなこと言って「もちろん証拠を掴んで引き離すわよ!!」」
「だから俺の話......」
「うんわかった、じゃあ僕も手伝う!!」
「いや、光も、」
「光、健人、ありがとう!!」
「どうして俺まで、」
「じゃあ早速だけど健人、あんた今週末連と新しいドラマの完成披露会見があるでしょう、その夜なんとしても連の家に行きなさい。」
「いや、だから、」
「お願い健人、勇太が北海道で映画撮影に行っている今あなたしか頼れないの!」
「僕からもお願い、健人、いつも頼ってることはわかってるけど......」
「いや、その、ううう......」
「「お願い......」」
「わ、わかった、わかりましたからそんな泣きそうな顔やめてください!」
「うんありがとう健人、本当にありがとう、いつかご飯奢るね。」
「ああ、麻美ちゃん健人だけずるい!僕も行きたい!」
「はあ......」
闇色に染まった夜空の中でキラキラと輝く星たちが優しく人々を照らす月と共に踊っている。
そんな楽しげな雰囲気の中地上の人の誰もが笑ってることはなく、その中ではおじさんの家で反省文を書いている彼女やこのハードボイルドの服を着た彼みたいに自分の未来をひどく不安に思える彼みたいな人もいるでしょう。
でもこの二人は知らなかった、いいえ、正確に言えば気づいていたけど無意識にそのことを無視していた。
そう、もし早くその事と向き合っていたらあんな事にならなかったのに......
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