9. 顔も身分も分からないお友達さん
よろしくお願いします
そう、その時「おじちゃんが大学に来てしまった!」と信じ込んでいた私は数時間大学のキャンパス内を駆け回り、気づいたら空は暖かい茜色と少し神秘的な闇の色で染まっていた。
“はあ、はあ、はあ、はあ”
もう、ダメ、疲れた、
やっぱここ数年声優さんのライブに参加すること以外あまり運動してない私にはここが限界らしい。
そう思い私は人気が少ない所にある半個室風なベンチに座った。
「。。。。。。。。。。」
でも今更思うけど泉さんは「ホストみたい」って言ったけど「あの人ホストだよ」とは言ってない。
それにもしその人が本当にホストでもおじちゃんだとは限らない、ってかどうして連次おじちゃんがこの大学に来ると思えるの?
連次おじちゃんの家に帰ったらいやでも会えるでしょう!
ああああああああああああ恥ずかしい!!!!
ってかよくこの数時間何も考えず走れたね!
「あああああああああああああもう!!!
どうして俺はチャラ男キャラじゃなきゃいけないんだ!!!」
あれ?お隣さんもなにかの悩み事でしょうか?
それにしてもよくある悩みだな、ってか私もたまに二次元ファンという事を隠していいかかなり悩んでるから。
「ってかさ、どうして俺がデビュー直前に髪染めたからチャラ男だと売り込むの?おかしくない!?」
デビュー?
なんかの芸能人さん?
それとも劇団人かな?
「それにデビュー後ファンからくれた初めてのファンレターも「2番目でも3番目でもいいですから、遊びでもいいですから付き合ってください!」ってさ!
なんじゃそれ、俺は一人しかいらねーしもし結婚できるなら好きな人と結婚したい!!
ってか見た目で物事を判断するなっての!!」
「わかる。」
「は、誰だ!!」
「わかります、痛い程分かります!!
どうして人々は見た目で判断するのでしょうか?」
「だからお前は、」
「そんなのどうでもいいでしょ、どうせどこかの劇団の人か読者モデルの人でしょ、わかってるよ、そっち見ないから!」
だってこの世のリア充どもは私達二次元ファンをオタクだと言い、「キモ~い」とかなんとかの言葉で私たちにネガティブなラベルを張る。
いや、確かにごく一部の二次元ファン達は自分の欲望に従順すぎると思うけど、でもそのごく一部の二次元ファンを見てから二次元ファン全員を軽蔑するのやめてくれる?
この世にはいっぱいマナーを守っりながら自分の萌を支える二次元ファンだっているんだから!!
「ま、まあそうだな。
俺はこの自分でもない自分を演じるのにマジで疲れてる、だが俺はこのキャラで売れたのも確かだ。
でも時に思う、「俺はファンのみんなに偽りの自分を見せ続けていいのか」っと。」
“偽りの自分”か、
「。。。。。。。。」
私も偉そうに言える立場じゃないな。
「。。。。。。。。」
でも、
「ねえ、ペルソナリティーって何か知ってる?」
「え、ああ、性格のことだよな。」
「うん正解、でもペルソナリティーのペルソナは何の意味か知ってる?」
「は?いいや、全然。」
「仮面、ペルソナは仮面をあらわすの。
だから私にとって人の性格はただの仮面、偽りに過ぎないと思うの。」
「な、何言って......」
「はあ、実は以前私もあんたのと似た悩みを抱えてたの、」
そう、それは私が半強制的に趣味を隠し始めた頃、私は周りの“普通で可愛い”女の子と同じメイクをして、お金の無駄だと分かってながらもファッション誌を買い、“お友達”が“私の彼氏が一番”アピールをグループの隅っこでニッコリしながら聞いていた。
その時私はみなみと明彦に出会ってなかったからグループ内の女の子達の秘めた争いに気き、呆れながらもそのグループから外れようとはできなかった。
でも家に帰って私が大好きなアニメを見てふっと思う、「私はこのままで本当にいいのか?」っと。
「え、それはどういう?」
おおっと、少しボーとしてしまった。
でも、どうせ知らない人だし、これっきりだし、
「はあ、実は私も人には知られてはいない事がある。
でも私は自分の都合でそれを隠し、気づいたら周りの人を騙してる。」
「。。。。。。。」
「私はその知られたくないことを隠すためにいろんな仮面を小賢しく分け、心の中では不安と懺悔の気持ちでいっぱいなのに外では何も無いようにニコッと笑っている。」
まあ、あのグループのメンバーは進学するたびに離れていって、今では連絡もとっていないしとりたくもない。
でも時々あの頃の私が頭に蘇り、まるでもうひとりの私が「どうしてあの時友達を騙していたの?」「あの時本当にそうして良かったの?」と問い詰めているみたいだ。
「だがそれって辛くないか?」
辛い、まあ今もそうだけど、でも
「ある日気づいてしまったんだ、実は私だけじゃなくこの世のみんなもいくつかの仮面を持ってることを。
だってそうじゃん、同じ人生先輩なのに人は目上の人に敬語を使い、親の前ではフランクに喋る。それだけじゃない、女も男も好きな人の前では自分の一番輝いてる仮面を被り、好きではない人にもうひとつの仮面をかぶる。」
「まあ、そう言われてみればそうだな。」
「でしょ!人は自分の都合に合わせていろんな仮面をかぶってる。でもある日思ったの、『私がかぶってる仮面は誰でもなく私じゃん、それじゃあどうしてその仮面を拒む必要なあるの?』ってね。」
まあ、このことに気づくことにいったい何年かかったか。
「だが周りはお前が仮面を被った姿しか知らない、」
「それが?」
「え、」
「ねえ、あなたは何のために生まれたの?周りから、なんの関係もない人様からの賛同を得るために生まれてきたの?」
「いや、あの、」
「私は私の人生を楽しむ為に生まれている。」
「は?」
「そう、私は自分の趣味を楽しんで、大好きな家族と一緒にいて友達と(萌を)語り合い、笑い合うために生きているんです。
まあ、その仮面の下に隠されてる顔を誰かにさらけ出すのも結構勇気いるけど。」
「話したことがあるのか?」
「そうだね、私は家族に秘密を話そうとした事がある。その中で話せた人もいれば話す前に勇気を振り絞れず話せなかった人もいる。」
もしあの時おじいちゃんに私が二次元ファンだと言ってたら今頃私はどうなっていたか。
パパ上みたいに笑ってくれる?
いや、おじいちゃんはママみたいに世間体を重く見てるから多分ママと一緒に距離を置かれるかも。
「後悔している?」
「まあ、伝えた人の中では距離が離れてしまった人がいて、だからたまに思うんだ、『本当に伝えて良かったのか?』っと。」
「は?何それ矛盾してるじゃないか!」
「私も今ではわからないの、自分の理想みたいに生きようとする自分がいるし、その反面大切な人と離れたくなくて本当の自分を隠そうとする自分もいる!
だから、だから私も偉そうなことを言えない。」
「。。。。。。。。。」
「でも他の人に自分の秘密を暴露することはギャンブルみたいにハイリスクでハイリターンな事、だってその中で失うものもあればたまに宝石みたいな絆を得ることができる、
それだけは忘れないで。」
「。。。。。。。。。」
気づいたら空は闇色に塗られ、私の隣に立ってる人工的な明かりが私を包み込む。
「ああ、もうこんな時間だ、
あんたも色々頑張って、私は先にかえ「ま、待って!」」
いや、帰らないとガチでおじさんに叱られるから。
「あ、あの、またここで話を聞いてもらってもいい?」
「は?あ、ああ、いいよ、」
まあ、気が向けばここに来るけど......
「よかった、じゃあまた来週水曜日15時でな!」
「いや、それは、」
「何、授業とかあるの?」
「いや、ないけど、」
「じゃあ決まりだな、あと俺は南、お前は?」
みなみ......
「......え、ああ、なるみ、です。」
「なんでいきなり敬語なんだよ、ちゃんと南と呼べよ!」
「いや、友達にみなみという子がいるから。」
「しょうがないな、俺達友達だから一歩引いて俺の事みーくんと呼ばせるよ。」
うあ、何そのリア充的な命令かた......いや、リア充さんみたいだけど。
それにしてもここが半個室風で良かった、じゃなければ絶対に笑われる......
「なあ聞いてる?みーくん、早くみーくんって。」
はあ、なつっこいなコイツ、しょうがない、
「みーくん。」
「うん、じゃあまた来週な、絶対に来いよ!」
はいはい、
「わかった、また来週ね。」
「うん、またな!」
そして隣からはどんどん小さくなっていく足音がして、私はようやく身を動かし駅へと向かった。
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