8.99%の庶民は権力には逆らえない。
よろしくお願いします
『グリードゲレンデ芸能事務所』
それは女優や俳優、アイドルはもうちろん、声優やスポーツマン、作家まで扱うこの国で一番規模が大きく人気もある芸能事務所だ。
そしてその大手芸能事務所は都内で有名なラグジュアリーな物を扱うショップが並ぶ街のすぐ隣に本部を立ち、毎年数万人、いいえ、数千万人の希望者がそのドアを叩きに行く。
そんなゴージャスでエレガントな建物の一室で水色のフリフリワンピを着た中村麻美と白いタイツを着たクール系な女性はスーツでビシッと決めた外国人の前でとある書類を見て難しい顔をしてる。
「連の妹、か、それに彼女はローペズの友達だと......」
沈黙を切り出したのは外国人の男性、でも彼の顔は消して明るいものではなかった。
「ええ、ですが何故か彼は黒川なるみはローペズを明彦と呼び、そしてローペズも自分を桐谷明彦と......」
「桐谷明彦、そうだったな、桐谷は確か彼の母親の苗字だったな。」
“パッ”とタイツを着た女性は手にある書類を机に置き、“私に何の関係があるの?”っていう顔をしている。
「そう言えばそうだったな、だが中村さんはそんな些細なことの為にここに来る人じゃないですよね。」
「うう、はい、
実は私はローペズだけじゃなく黒川なるみもちょっと怪しいと思うのです。」
「ほう、それは?」
「なんて言いますか、まるで自分の兄がグリタリングレトラスの一員、いいえ、アイドルだとすら知らないみたいで。
それに口では「お兄ちゃん大好き!」とかなんとか言ってますが傍から見たらローペズが彼女のお兄さんみたいでした。」
「君は、黒川なるみは妹ではなく連の彼女ではないかと言いたいんだな。」
「いいえ、それはただ私の憶測です、ですがなにか引っかかります。
それに、ローペズも黒川なるみのことを随分と気に入ってるらしいですし。」
「何ですって!何も興味がないあのローペズが??」
「ええ、それに彼は公な場所で黒川なるみに「自立するまで僕が面倒見る」とか言ってました。」
「な、」
「先輩落ち着いてください、気持ちは分かります。
こっちの連も黒川なるみにあってから何か変ですし、チーム内もなんかこれでギスギスしてますし。」
「中村、新田、」
「「はい、」」
「確かにうちは恋愛を禁止していない。だがうちは未成年のスキャンダルを出してはいけない。それに、今は大事な時期だと分かってるよな。」
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都内でまあまあ有名な大学にある噴水の前で多くのリア充カップルがイチャイチャしてる中、私とみなみは端っこのベンチでお弁当を食べている。
「はあああああああああ、」
「だからあの時明彦の言う通りにすればいいじゃん。」
「うううう、」
「でもよかったじゃん、おじさんと仲直りできたみたいで。」
「いや、全然良くない。」
ああ、でも私が連次おじちゃんの家に(強制的に)居候させてもらってから数日、例の彼女さんの姿はともかくハーレムメンバーのことすら見かけてない。
多分私を気遣ってくれてるのでしょう、でも、
「アメリカまで留学したことがある連次おじちゃんがホストなんて、それに、あんな爛れた生活を送ってたなんて......」
だって浮気しなくてもいいじゃん、ホストじゃなくてもいいじゃん、頭いいし成績優秀だったのに、
「そう?私には羨ましい事だよ、
それに今なるみが食べているその美味しそうな弁当もおじさんが早起きして作ってくれたものでしょう。」
まあ、確かにカラフルで美味しいお弁当だけど。
ちなみに今日のお弁当は手作りハンバーグにサラダ、そしてデザートに果物と自家製杏仁豆腐で、確か昨日の晩御飯は魚介がたっぷり入った手作りパエリアとトマトピザだったような。
でも連次おじちゃんはホストだからな毎晩一緒に食べ終わったら絶対に仕事に行き、私が皿洗いをしてる。
「まあ、そうだけど、おじちゃんも多分好きだと思うけど、でも......」
「そうね、ここ最近アニメショップやイベントはもちろん、二次元に関するモノ一切触れてないから禁断症状が出始めたのね。」
「うん......やっぱりみなみにはかなわないね。」
そう、それが今の私が抱えてる一番の悩み。
いや、おじちゃんが作ってくれるご飯やデザートは美味しいけど、
でもやっぱり私は二次元がくれた萌えと癒しを忘れられない。
「はあ、それじゃあ私の家に泊まる?」
「それはそれで誘惑的なんだけど......」
でも連次おじちゃんがいちいちうるさいし、
「まあ、辛くなったらいつでもおいで、たまにはおじさんに内緒でアニメイベントとか行こう。
なるみは行きたいイベントとかある?」
み、みなみ~~
「うん、本当は今週末にあるゲレンドラ様のファンミーティングで限定フィギュアやスクラップとか買いたかったんだけど......」
「じゃあ決まりね、
あ、授業に行かなくちゃ、また詳細はメールで送るからその時決めよう。
じゃ、また後でね。」
「うん、バイバイ。」
どうしよう、泣きそう、私ったらどんだけ幸せなの?
ほんと、今時のご時世でこんなにいい友達が二人もいるなんて......
太陽が少し地面に近づき、街にいる子供は母親におやつをねだる頃、
私は一日の授業が終わり連次おじちゃんの家に向かっている。
「あれ、黒川さん?」
「ああ、どうも。」
たしかこの人は同じクラスの......泉さん?だったっけ?
それに何故か知らない人達もいるし。
「ほんと、お久しぶりですわね、そしてその何年前にか流行った事があったようななかったようなお姿もお似合いですわ。」
彼女の後ろからクスクスと笑い声が聞こえる。
「オホホ、そうでしょうか?」
あなたも相変わらず服装が大胆ですね、痴漢とか大丈夫なんですか?
それにどこかの財閥のお嬢様だからって庶民見下すのがお好きなんですね、オホホホホ。
「泉様、こんな下品な庶民とはお近づきにならない方が言いかと。」
おい、あんただって庶民だろうが!
「まあかれんさん!
ごめんなさいね黒川さん、この子も悪気はないんです」
は!?悪気がない?あれが?
言いたい、一発ガツンと言ってやりたいが、
「い、いいのですよ、一緒のご学友なのですし......」
うう、やっぱ権力にな逆らえない......
「ああ、そうそう黒川さん、先程背が高くて全身がキラキラした殿方をお見えになられて?」
「え、いや、ないですけど。」
全身キラキラ......
まさかね。
「そうですか、それなそれでお気の毒ですわ。」
何を言いたんだあんたは!
そうして泉さんは彼女の“高貴なお友達さん”とほかのところへ行こうとした、けれど、
「先程泉様をお助けになられた殿方はどんな方なのですか?」
「そ、そうですわね、確かオシャレな人で、雰囲気がホストみたいでしたわ。」
ほ、ホスト!!!
今でも後悔している、
あの時私はどうしてすぐ帰らなかったのか、どうして泉さんと確認しなかったのか、
そしたら私はこうならなかったのに......
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